9月8日(米国時間)、グーグルはレストランガイドで有名なザガット(Zagat)を買収した。買収額など詳しい情報は、公開されていない。ニューヨークに本社を持つザガットは、32年の歴史を誇るレストラン情報の老舗で、各都市別に発行しているガイドブックは100種類を超える。
買収の目的は、グーグルが提供している地域情報サービス"Google Place"などの充実と、モバイル戦略の強化だ。しかし、それは表面的な理由に過ぎない。ザガット買収の背景には、グーグルの悩みが見え隠れする。
グーグルもザガットも有名なため、米国のメディアは同買収を大きく報じた。しかし、ニュースそのものは単純だ。買収理由もローカル向け情報サービスの充実と明言している。そのため、つい見過ごしてしまいそうだ。
だが、その意味するところを、もう一歩深く掘り下げて考えてみる価値がある。
グーグルは収益のほとんどを検索広告サービスでまかなっている。俗に「グーグルになければ、世の中に存在しない」と言われるように、同社の検索技術はそのスケールにおいても品質においても世界トップを誇っている。
それほど高度な検索サービスを持っている同社が、なぜレストランなどの地域情報を求めてザガットを買収しなければならないのだろうか。たぶん、ザガットに乗っているレストランやホテルは、すべてグーグルで検索すれば出てくるはずだ。
数年前であれば、人々はグーグルを使ってレストランを探して満足していただろう。しかし、現在はグーグルよりもソーシャル・ツールを利用する。
たとえば、フェースブックやツイッターで「昼食にお薦めのお店はない?」とつぶやく人は多いはずだ。逆に、美味しい食事をSNSにアップする人も数え切れない。こうした知人や友人から送られてくるレストラン情報から選んだ方が「検索エンジンより確実」なことは間違いない。
ここにグーグル型ビジネス・モデルの弱点が潜んでいる。
グーグルの検索サービスは、検索ロボットが様々なサイトを巡って情報を集めてくる。それをリンク比重法という基準に従ってリストにする。「リンクされている数が多いほど、そのサイトやページは重要度が高い」というルールに従ってリストの順番が決まる。しかし、それはあくまで公約数的な評価にすぎない。
つまり、住所や会社案内、論文など"個人の好み"に関係ない情報を探すには便利だが、食事や宿泊、イベント、趣味や日常の出来事など、ユーザーの生活や好みが反映される情報には、グーグルの検索は効果がない。