完全保存版 知っておきたい
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 西原氏によると、手術が非常に困難なのは、脳幹にできた腫瘍だという。なぜなら、下手に手術をすれば即、命に関わるからだ。したがって脳幹にできた腫瘍は、良性であっても、切除できないのだから悪性と変わらない。

 消化器系では、食道が最も治りにくい。男性で8位(31~33%程度)、女性で7位(33~36%程度)にランクインしている。

 食道がんは、脳・中枢神経系とまた別の意味で、部位そのものに難しさがあるようだ。神保消化器

内科医院院長の神保勝一氏は言う。

「食道がんは、まず胸の肋骨を外さなければ手術はできません。肋骨を外すと、食道の両側に肺があり、中央に気道もある。さらに大動脈が走り、すぐ後ろには心臓も脈打っている。そういうきわめて重要な臓器が密集している中での外科手術になるため、慎重の上にも慎重に行わないと、命に関わります。手術自体が非常に困難な作業なのです」

 術後に合併症を起こして亡くなるケースもあれば、放射線を当てているうちに大動脈も破れやすくなって、大出血する場合もある。神保氏によると、食道がんの手術は外科医の間で『左開胸、冬景色』と呼ばれてきた。心臓のある左側の胸を開くと、目の前で心臓がドクドクと脈打っている。それを見ると、緊張でぞっとするというのだ。

 同じ消化器でも、食道がんと比べると、胃がん(男性11位、女性13位)の5年生存率は高い。男性が62~65%程度、女性は59~62%程度である。この数字は、全部位の男女合計の平均値である53%より高い。つまり、がんの中では比較的治りやすいがんなのだ。

 ただし、難治性の胃がんもある。先日、女優・萬田久子と事実婚状態にあった佐々木力氏の命を、発覚後わずか4ヵ月で奪ったスキルス性胃がんがそれだ。

 がん細胞には、最初にがんが発生した部位(原発部位)に留まってそのまま大きくなる「高分化がん」と、進行も転移も非常に早い「未分化がん・低分化がん」がある。悪性度が高いのは、もちろん後者だ。そしてスキルス性胃がんは、未分化がんの一種なのである。

 普通の胃がんは、粘膜の表面から広がっていく。しかしスキルス性胃がんは、最初は5mmくらいの小さな腫瘍が表面にできるものの、すぐ粘膜の下に潜りこみ、筋肉に沿って猛スピードで横に広がっていく。

「そのためレントゲンでも内視鏡でも見つからず、発見されたときは手遅れになっていることが多い。その時点で、胃壁はギュッと絞り上げられた雑巾のような状態になっています。急に食べ物が胃を通らなくなり、異変に気づくのです。

 そうなったら胃を摘出せざるを得ませんが、ただしそれは延命のための処置で、治癒のためではない。すでに他の臓器や腹膜に転移していることも多く、治癒は困難です」(神保氏)