受験直前!カリスマ教師が明かす麻布中学「国語」を解く技(スキル)

「神技」田代敬貴が指南する国語攻略法 第3弾
田代敬貴

 まず一つ目は、オオカミが原因で起きているトラブルを、ブライトンは「どのようにして解決しましたか」という問いである。解答には「オオカミに新しい生き方を教えて解決した」という方向性が必要だが、多くの生徒は「舞台芸術学校で躍らせて」、もっとひどい場合は「くたくたにつかれさせて」という表現までそえて、羊をとりに行けないようにしたという答えを書いてしまう。

 二つ目は、舞台芸術学校が交わす「オオカミたちとの契約書には、いちばん上等のソーセージを食べさせるだけでなく、劇場のてっぺんにネオンで彼らの名前を出す」と書くよう、ブライトンが要求した部分をとりあげて、そんな要求をブライトンがした理由を答えさせる問題である。この問いは、小六の生徒にとっては超難問といわざるをえない。

 麻布の先生がどんな正解を用意していたのか知りたいところだが、読者のみなさんが受験生の立場ならどんな答案をお書きになるだろうか。

映像化して読むスキル

 私はまず、ブライトンが「契約書」を書かせたということに何かひっかかりをおぼえた。日本人にはあまりなじみのない発想ではないかと。そして、考えをめぐらすうちに、「人はパンのみにて生くるにあらず」という聖書の言葉にたどり着いた。キリスト教では、神と人間の関係は契約によって成り立つと教えられたことがあるからだ。

 「上等のソーセージ」とは「パン」であり、空腹を満たすもの、すなわち肉体的満足が得られるものである。だとすれば、「ネオンで彼らの名前を出す」こととは「パン」以上の何かであり、心の糧となるもの、すなわち精神的満足が得られるものとなる。

 つまり、小学生向けの言い方をすれば、オオカミたちが選んだ新しい生き方がお腹(なか)も心も満たしてくれるものだということを、ブライトンは彼らに知らせたかったのではないか。これが私の答えであるが、麻布の先生にマルをもらえるかどうかは保証のかぎりではない。

 三つ目は、「この物語はどのようなことをあらわしていますか。一〇〇字以内で書きなさい」という、最終設問である。作品紹介の内容と重複するので詳述はさけるが、要するに、アントワーヌの生き方をせずにブライトンの生き方を選抜すべきだ、という主旨の答案が書かれていればよい。

 このように、一九九九年度の麻布の問題は、< 人間・人生に結びつけて読む> <人物の二面性を読む>という二つの<技(スキル)>が勝敗を分ける問題であり、その他にも、<大切なことはくり返される><映像化して(絵に描いて)読む>などの「『読む』ための<技(スキル)>」を学ぶことのできる良問なのである。

(<技(スキル)>についての詳細は、拙著『田代式中学受験 国語の「神技」』(講談社刊)をご覧いただきたい。)
 

田代敬貴(たしろ・よしたか)
1953年福岡県生まれ。国語教師歴32年。 学習塾「エッセンシャル・アカデミー」国語部長を経て、進学塾「山田義塾」入社。国語主任、取締役教務部長、常務取締役を歴任し1997年退社。2000年よりフリー講師として活躍する。 現在は小学5・6年生を対象に、少人数の難関中学記述対策授業(スクールFC「スーパー国語」)を開講する傍ら、講演活動(森上教育研究所「わが子が伸びる親の『技』研究会、花まる学習会「父母学校」など)や私立中学への入試アドバイス、塾講師への研修、教材・テキストの監修・校閲も手がける。 2009年度入試では、男子13名・女子3名の受け持ち生徒(計2クラス)のうち、筑波大附属駒場中5名、開成中7名、駒場東邦中3名、栄光学園中5名、桜蔭中1名、慶應中等部1名など、圧倒的な実績を上げている、中学受験界の伝説的講師。

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