田原総一朗×孫正義「コンピュータが人間の脳を超えたとき、社会はどう変わる?」
白熱激論! 電子教科書は日本を救うか 第4回
vol.1 はこちらをご覧ください。
vol.2 はこちらをご覧ください。
vol.3 はこちらをご覧ください。
田原: ずっと以前に孫さんにお会いしたときに、あなたが非常に重大なことをおっしゃった。私はそれが焼き付いているんです。
孫: 何ですか?
田原: 2018年頃にはコンピュータ・チップの容量が人間の脳細胞の容量を超える、とおっしゃってました。
孫: さすが! まさに2018年、そう言っています。よく覚えておられましたね。
田原: 今までは人間が問題を出してコンピュータに解かせてきた。ところが将来はコンピュータが自ら問題を出せるようになる。そうなると世の中は根底から変わるとおっしゃた。
孫: ええ。変わるんです。
田原: 具体的にはどう変わるのですか。
孫: 人間の脳は、脳細胞の中にあるシナプスが「くっついた」「離れた」の二進法で動いている。みなさんが今この話を聞いて、「すごいな」とか「バカ言ってるな」とかいろいろ思っておられるのも、すべて二進法で考えているわけですね。つまり脳細胞のくっついた、離れたの組み合わせで、すべてを記憶したり考えたりしている。この数が300億個あるわけです、人間の頭の中に。
コンピュータのチップに入るトランジスタ、これも二進法です。人間の頭の二進法と同じトランジスタ、これが300億個を超えるのはいつか、ということを20年前に僕が推論で計算した。そうしたら2018年だという答えが出たんです。
で2年前にもう1回検算した。やっぱり2018年だった。つまりその後の20年間の進化はやっぱり予想した通りだったということですね。
2018年に人間の脳細胞に追いつき、じゃあ、そのあとどうなるか。そこから30年間で人間の脳細胞の100万倍になるんです。
田原: じゃあ人間、いらなくなるじゃないですか。

孫: いらなくはならないんだけれど、いわゆる丸暗記というのになんの意味があるんだということになる。検索するよりも答えが早く出てくる。
田原: 検索するよりも早いんだ。
孫: つまり検索は指でやるでしょう。
田原: 人間が入力したするする必要がないんだ。
孫: ええ。要するに頭の中で、「あれはなんだろう」と思った瞬間に答えが頭に浮かぶ、目に浮かぶ、あるいはディスプレイに出る。
つまり人間の細胞っていうのは頭と、たとえば指が神経細胞で繋がっていて、微弱な電流が流れているわけです。電流でその神経に命令をしている。つまり「人体内ローカルエリアネットワーク」です。脳と通信をしている。しかも通信の媒介は電流です。
コンピュータのチップも通信をします。記憶は全部電流でやっている。同じ電流で、しかも二進法です。人間の脳細胞とまったく同じ役割です。
ということはこのチップをですね、ペタッと額に貼る。そうすると、ペタッと貼ったチップと脳が通信をして、思い浮かべたこと、あるいは自分の記憶の延長として、「外脳」がチップに入る。人間の左脳、右脳に対して、外脳のチップ、これが人間の脳の100万倍の容量を持つようになる。
「ソフトバンクはテレパシー・カンパニーになる」
田原: そうするとたとえば僕がペタッと貼っておき、孫さんがペタッと貼っておくと、僕が思ったことを、僕がしゃべらなくても孫さんは分かってしまう?
孫: そうです。
田原: 「田原はこんなことを今思っている」と。
孫: そうです。
田原: 「こいつ俺を殺そうと思っている」な、なんてわかる。
孫: そう(笑)。チップを貼って、これ"チップ・エレキバン"。
会場 (笑)。
孫 僕のチップ・エレキバンと先生のチップ・エレキバンが無線で通信する。これをテレパシーと呼ぶ。
田原: 本当のテレパシーだ。
孫: 本当のテレパシーです。だから「今から30年後のソフトバンク、何をやっているの? 300年後のソフトバンク、何をやっているの?」というなら、「ソフトバンクというのはテレパシーカンパニーだ」と言えるかもしれない。

田原: テレパシーって言うと今は超能力だけど、そうじゃない。コンピュータが実際にやっちゃうわけだ。
孫: 科学的にやる。だからそういう時代がくるんです。
田原: ちょっと待って。今、体を使う機会が減って筋肉をがだんだんいらなくなっているでしょう。そういう時代だと、脳もいらなくなるんじゃないですか?
孫: いるんです。ますますいります。
田原: そこを聞きたい。
孫: 何でいるか。単純な記憶は外脳のチップ・エレキバンに入れておく。単純な記憶はそこから検索する。それをベースに、それを材料としてどう使うか、それをイマジネーションする、想像する、クリエイティブする、それが人間の脳の役割です。
だから人間の脳というのは、よりアートだとか、哲学だとか、愛だとか、その問題解決、提案能力、企画能力として必要なんです。
いまのアップル社に例えていうと、組立業ではなくイノベーション、デザインを行う企業になっているでしょう。そういうことですね。