限界説に反論!松坂大輔「僕は変化している」

9勝6敗、防御率4点台でも「手応えあり」の根拠

 もがき苦しむ中で、松坂はレベルアップへの手応えを摑んだ。それは面白いが、大変な作業だったのだ。トンネルを抜けるとそこには---?

「心の中で思い描く、投球フォームがあります。今年は足、今年は腕、今年は背中と、僕はプロ入り後、12年くらいかけてフォームをステップアップさせています。他の人は分からないぐらいの小さな違いなんですけど、僕にとっては一つひとつが大きく違っている。 '10 年のシーズン中にその答えというか、理想の形が見えてきたんです」

 自身の野球人生を3段階に分けるとすると、現在、松坂自身はレベル2と3の境目にあるのだという。

「高校の時点で1段階目は終わっています。2段階目が長いですよね。人は何か引き出しが増えることでレベルアップすると思うんですが、自分で言うのも何ですが、僕は引き出しが多すぎて、一つに絞れない(笑)。出しては『これは違う』、『これは今じゃない』って、僕はずっとそういう作業を繰り返しています」

 松坂のフォームについて、MLBの先輩・長谷川滋利氏が著書で分析しているので、紹介しておこう。氏曰く、

〈一度も止まらないで流れたまま投げるのでコントロールしづらい〉〈僕はあの投げ方だったらストライクを取れる自信はありません〉〈野茂(英雄)君よりも特殊な投げ方といえるかもしれません〉

 松坂の笑顔が弾けた。

「コントロールが安定する投げ方はいくらでもあるんです。こいつバカかと思われるかもしれませんけど、コーチに『制球が良くなるフォームがある』と提案された時も断りました。僕には若い時から貫いてきたこだわりがある。それは曲げられないですね。曲げてしまったら、気持ちがダメになってしまう気がします」

 理想のフォームを追求するのも、トレーニングを積むのも、すべてはメジャーで長くプレーするため。松坂の視線の先にいるのはあの男だ。

「37歳の今でも打つし、走るし、投げる。いつがイチローさんのピークなのか、誰も分からない。それが理想の状態です」

 目指すは、高いパフォーマンスを維持し続ける、メジャーでも頭抜けた存在。高い目標があるから、松坂はバッシングにも苦悩の日々にも耐えられるのだ。"最終段階"へ進化するため、今年も怪物は正月返上で牙を研ぐ。

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