熟考熟慮と杞憂の違い!うつ状態の脳の働き

 誰しも解決策がすぐには見つからない複雑な問題に直面したときには、あれこれ考えを巡らすものです。何度も繰り返してある問題について考えることが、良い結果を生む熟考熟慮ではなく、いわゆる「下手の考え休むに似たり」で結論のでない考えを行きつ戻りつするばかりで、単なる時間と思考力の浪費という非生産的な状況に陥ってしまうこともあります。

 こうした非生産的な思考の反すうが、うつ病患者にみられることが知られていますが、米国・スタンフォード大学のJ. Paul Hamilton博士らが、Biological Psychiatry 2011年8月15日号に発表した研究で、こうした非生産的なマイナス思考の反すうが、うつ病患者の脳でどのようにして働いているのか明らかにされました。

 博士によれば、人間の脳は初期設定回路と任務遂行回路という2つの違った神経回路パターンを持ち、この2つの競合し相互交流する神経回路が、上記のような無意味な思考の反すうと課題解決につながる熟考との違いを生むのだそうです。初期設定回路は受動的で自己に関係する思考を担い、任務遂行回路は問題解決に必要な思考を担っていると、博士は説明します。

 そして博士らが脳画像処理法を使用して、うつ病患者の脳を調べたところ、うつ病患者では、任務遂行回路よりも初期設定回路の活動が活発であり、これが高水準の不適応な抑うつ的思考の反すうと、低水準の適応的な思慮深い思考の繰り返しと、相関関係があることが明らかになりました。

 これはうつ病や抑うつ状態にあるとき、初期設定回路が強く働き、心配ばかりし、効果的な対処が減り、よりひどいうつ状態に落ち込んでいくという悪循環を引き起こしていくことを示していることになると博士らはしています。

医療ジャーナリスト 宇山恵子
Biological Psychiatry 2011年8月15日号