吉原 清児:著 『医師がすすめる「最高の名医」+治る病院』 不妊症 人工授精・体外受精・卵管鏡下卵管形成術

福田愛作 IVF大阪クリニック院長

 一方、体外受精以前と以後を、「人類が神に忠実だった時代」と「人類が神にとって代わろうとした時代」という見方がある。神ならぬ人の手で受胎という自然の摂理にどこまで関与すべきなのかという問いに対し、福田はこう答えた。

「はじめに自然妊娠ありき、神を演じる気持ちはありません。いつも患者目線です。うまく妊娠させたい、治したい、患者さんの心を癒して元気にしたい。それが僕の原点です」

 特に力を入れるのが、自然妊娠への道を開く日帰り手術だ。これを、「卵管鏡下卵管形成術(FT)」(保険適用)と呼ぶ。福田がいう。

「卵管鏡下卵管形成術は、卵管が閉塞あるいは狭窄している場合に適応となる治療法です。方法は、心臓のカテーテル治療と同じです。直径1mmの卵管鏡を用いて観察しながら、狭い卵管を小さなバルーンで広げることで卵管を再開通させ、その後タイミング法や人工授精による自然妊娠が可能になります。うまく妊娠したら一件落着です。これを日帰り手術でやり始めたのは、私のアイデアでした」

---日帰り手術で自然妊娠の夢を叶えられるのはトピックスか。

「まだトピックスとはいえません。なぜなら、日本中で一年間に2000しか行われていないのです。そのうちの350を私が手がけています。ほかに、神戸市の英ウィメンズクリニックが年間150、慶應義塾大学病院が100程度。あとはどこも年間20~30ですから、北は北海道、南は沖縄、スイスやオーストラリアから来られる患者さんもいます」

「精子の肩たたき」で受精率・妊娠率向上

 もう一つ、いま注目されるのが、極細のガラス製の針(直径1000分の7mm)を用いて卵子の中に精子を尻尾の側から吸い込むという顕微授精「ICSI(卵実質内精子注入法)」だ。

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 福田医師によると、精子は頭と尻尾と首をもち、頭が大きく尻尾はやや曲がっている。一匹の精子を針で吸い込もうとすると頭のほうが近寄ってきてしまい、尻尾の部分を針の先にもってくることは至難の技らしい。そこで、元気のある精子をおとなしくさせる方法が考案された。

「それが『精子の肩たたき』、精子の尻尾の首に近い部分を針の先で少しこするのです。しかも、こうすると精子は卵子の中に注入された後、受精に必要なカルシウムを卵子の細胞質から放出する刺激を与えること(卵子活性化)ができます。その結果、受精率・妊娠率ともめざましく進化し、今や顕微授精ICSI法は男性不妊治療の主流になっています」

 別の大学病院で"精子死滅症"と診断された30代男性は関西在住。精子死滅症とは、精液中に死滅した精子しかいない症状を指す。