早稲田大学野球部監督 應武篤良「私のピッチャー論」

3人のドラフト1位投手を送り出した伯楽が、
6年間の監督生活を振り返った

早大監督として最後の試合に勝利し、記念撮影では一番上によじ登る。茶目っ気いっぱいに歓喜を表現した

「斎藤はずっと『150km/h右腕』と呼ばれたかったんです。わずか1km/hですが、その1km/hにこの4年間苦しんでいた。彼が理想としていた高校時代のフォームに戻らないもどかしさを抱えていた。戻らないのは当たり前なのです」

今秋の明治神宮大会を制し斎籐と喜びを分かち合う。監督、主将として、これ以上はない有終の美を飾った

 大学に入れば、食生活や生活のリズムが変わる。それによって筋肉の強さ、硬さも変化する。

「子供から大人の身体になったんですから。斎藤も、私の意見に納得できないことがあったかもしれない。でも斎藤は思っていても言わない。皆さんが抱く印象のとおり素直な男なんです」

 最後のリーグ戦となった今年秋の初戦、法大戦で、斎藤はついに150km/hを達成。斎藤は高校日本一の投手として入学し、大学日本一の投手として卒業していく。果たして日ハムでも、輝きを放つことができるのだろうか。

「彼の持ち味は多彩な変化球であり、変化球で抑えるためのストレート。それは神宮大会の決勝で完成を見た気がします。彼の中にまた原点のフォームができた。プロ入り後のことで心配しているのは、メンタル面だけです。プロのピッチャーは打たれるのが商売で、それを少なくしようと努力するのが仕事。今の斎藤には、分かっていると思います」

 早大野球部の監督を退任する應武は、来年4月1日から古巣の新日本製鐵に戻ることが決まっている。

「毎日グラウンドには斎藤や大石、福井がいて、彼らと接する時間が僕の唯一の楽しみだった。今は息子たちを送り出す親父のような心境なんです」

 早大監督としての6年間、とりわけハンカチ王子らと過ごした4年の日々をこう振り返り、應武は目を細めた。

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