鍵山秀三郎イエローハット創業者
心が澄んでくる「そうじ」のやりかた

セオリー

「日本人は戦後、豊かさを手に入れる一方で、人への思いやりや公徳心といったものを失ったとつくづく思います。豊かさと温かな心を両方もてば人は本当の幸せを手に入れられるはずで、これこそ私どもの会の目的なのです」

最も汚い便器を、素手で磨く"勇気"

2007年、会社周辺のそうじをする鍵山さん。徹底的にそうじする。排水溝にたまった枯葉を手でかき集めた

「私は最初から素手でトイレそうじをしていますが、いちばん合理的に便器を磨きあげられるからなんです。小便器の水漉しなど持ちあげると茶色いどろどろの汚水がたれるほど汚れていますが、一度さわってしまえばウソのように躊躇は消えてしまう、本当ですよ」

 汚さ臭さに躊躇すると臆病になると言う鍵山氏は、トイレそうじを通じて広島の暴走族を更正させた経験がある。嫌悪感むき出しの彼らを参加させたひと言が、

「なんだ、勇気ないな」

 だったと鍵山氏。冗談じゃないと俄然ワルたちは素手で便器をつかみ、いつのまにか真っ茶色の便器をぴかぴかに磨く行為に夢中になっていた。最も汚い仕事に真剣になる大人を目の当たりにし彼らの心が動いた、浄化されたのだ。

「私は少年たちと同じ目線で話しましたが、誰にも同じ態度で接するのと同様に見えない人にも気をつかうことで世の中わずかでもよくなると考えているんです」

 と言う鍵山氏は日ごろの心がけについて、

「たとえばホテルへ泊まるとき、洗面用具など自前でもっていきホテルの備品はほとんど使わないし、使用したベッドもきちんと整えます。というのも、客室そうじの人に気持ちよく働いてほしいからなんです。石けんなどは、もったいないという理由もあります。アメニティは99%ゴミ扱いで、一度でも使えば捨てられるんですから」

 私生活でもゴミは極力出さず、人に譲れる物は譲るようにしているそうだ。

1滴もなくなるまで使ったボールペンの替え芯の束。これで5万枚以上の葉書を書いた

「いただき物の絵や飾り物はこれまで何度も運送屋さんに来てもらってバザーに出し、物置の大そうじをしました。

 机の引き出しを一度整理してみるといいですよ、使わない文房具がどれほどあるかわかります。私の葉書用ボールペンはたった1本です」

と、氏は何十本もの空になった替え芯の束を見せ、換算すると葉書5万1700枚にもなるという。