がんになって考えたこと、思うこと

 もっとがんと対峙して、考える時間を持たないといけないのではと立ち止まって考えたのです」

 手術となれば、胃の3分の2は摘出される。問題はその後に「正常な生活」に戻れるかどうかだ。

 医師は、家庭で元気に過ごせるようになれば、それで正常な生活が回復されたとみなす。しかし、関口氏にとっての正常な生活とは、「カメラを持って海外に行けること」。手術の結果、それができなくなるのでは、医学的には成功でも、関口氏個人にとっては成功と言えない。

「仕事のできない状態になってしまうことは、絶対に避けたかった。手術の結果、常に家で安静にしていなければならなくなるなら、寿命が短くなってもいいから手術をしない選択肢もあるのではないか。がんと共存しながら生きて、仕事を続けるほうがいいのではと立ち止まってみたのです」

 関口氏はとりあえず手術はとりやめ、がんについての勉強を始め、いろいろな医者に話を聞いた。ほとんどの医師が「共存など無謀」「すぐに手術すべきだ」と言い、「共存したいのならケアしてあげます」と申し出た医師は、二人だけだった。

「手術を受けようと決めたのは、告知されてから1年3ヵ月後です。その間は外国にも取材に行っていました。ただ、夜中に目が覚めたりすることも多かった。今振り返ると、やせ我慢をしていたんです」(関口氏)

 最終的に、関口氏は執刀してくれる医師と2ヵ月ほどじっくり話し合い、自分が納得した方法での手術に臨んだ。結果は成功。以前と変わらぬ仕事に戻り、現在に至る。

 医師から提案された治療法に迷いが生じたとき、「自分がどう生きたいのか」を考え、それを医師に伝えて話し合うことで、納得した治療法を受けることができたのだ。

家族の優しさに気づく

 患者自身も家族も、がんと正面から向き合えるようになるまでには時間がかかる。前出のがん哲学外来理事長・樋野医師によると、最近増えているのが、家族との関係についての悩みだという。

「日本人は、がんの患者など自分より困った状況にある人にどう接すればいいのか、あまり訓練されていません。それゆえ、家族ががんになったときに自分の視点で考えて行動して、患者にとっておせっかいばかりしてしまい、逆に患者を傷つけることが多いのです」

 例えば、がんで食が細くなっている人に、「元気をつけるためにもっと食べたほうがいいよ」と勧めたり、本などで調べた治療法を教えてあげたりすることは、最初はよくても、徐々にプレッシャーを感じさせることになってくるという。