「東大までの人」と「東大からの人」

〔受験生必読〕入ってみるとよくわかる
週刊現代 プロフィール

半年で新書1冊の読書量

 「小泉純一郎元総理大臣の前の総理は誰か」を問う問題では、ほとんどの学生が正解の「森喜朗」と回答。ただし喜朗を「嘉郎」とか「善朗」と誤表記する学生も多く、「麻生太郎」と回答した学生も一人いた。

 また、「3.12×0.101」の計算をしてもらったところ、「3.1512」と回答する学生も。この計算式を見て、小数点以下になることは、東大生でなくてもすぐに分かる。正解は「0.31512」である。

 成績の平均点は10点満点中の7点。東大生であることを考えると、やや残念な結果である。

「18歳人口が減り、東大の学生数が以前よりも増えている中で、団塊の世代や第2次ベビーブーマーの受験熱が過熱したころよりも、レベルが下がるのは当然です。当時なら東大生になれなかった人が、今、東大に入るようになっていることもあるでしょう。

 学力低下は大学院でも顕著。かつて大学院は定員に満たなくても、学力のある学生しか入れなかった。今は学生を確保するため定員数を合格させる。つまり、学力がない人でも入れるようになったのです。私が知る東大の大学院生で、半年で岩波新書を1冊しか読んでいないという学生もいました」(前出・竹内教授)

 東大教養学部で18年間、「法と社会と人権ゼミ」を受け持つ川人博弁護士は、こう指摘する。

「中学・高校で、社会問題を友達と議論した経験のある学生はほとんどいないし、1年生の学生の多くは愛読書を持っていません。高校生までの間に感銘を受ける本に出会い、将来の展望を抱いて、そのために東大に入学した、という学生はほとんどいない。

 法律家を目指す学生に、死刑について議論させても、一般市民レベルの考え方しか持っていないのが現状です。受験勉強をいくらやっても、教養を積み重ねることはできません」

 東京大学駒場キャンパスにひっそりと建つ真新しい建物がある。'08年10月に開設された「初年次活動センター」。教養学部前期課程に通う1~2年生を対象に社会的・学問的経験を充実させるという“名目”で、大学当局が作ったものである。

「いま東大では、カリキュラムを消化できず、大学に来なくなったり留年を繰り返す学生や、『勉強の仕方がわからない』と悩む学生が急増しています。そこで、初年次活動センターを作り、効率の良い勉強の仕方やレポート作成法を指導しているのです」(前出・東大職員)

合格時には希望に溢れていた生徒も、入学後は「心の相談」が必要に・・・・・・

 勉強の手助けに、大学が取り組み始めているというのだ。対人関係に悩む学生も急増しているということで、去年の12月には「心を豊かに鍛える対人関係」という講演会を開いた。

 東大が実施する「学生生活実態調査」では、ここ2年間、「東大生の不安・悩み」という特別分析が行われた。その分析でも、東大に入ってから「東大ブランド」と「勉強」に悩む学生が増加していると指摘。

 カリキュラムは消化できるかという問いに対して、「できる」と答えた学生は31.5%。逆にカリキュラムの消化が「多少困難」「できない」と答えた学生は21.8%。4~5人に1人が授業についていけないと感じている。その理由を問うと48.6%の学生が「講義の内容が高度過ぎて理解できない科目がある」と答えているのだ。

 さらに、最近の6カ月で「強い不安に襲われた」学生は52.3%、「気分が落ち込んだり、何にも興味を持てなくなった」学生は41.1%にのぼる。希望に満ちて東大に入学したものの、学業の難しさ・高度な授業に直面し、不安や抑うつ感を抱いている―――それが、いま、少なからぬ東大生の姿なのである。

 そしていま、「負け組」に落ち込む東大生が増えてきている。

「僕は、“負け組”東大生の代名詞です」

 こう言うのは、東大文学部を卒業後、現在はテレフォンアポイントメントなどのアルバイトでフリーター生活を送るT氏(28歳)だ。現在の月収は20万円弱。外資や商社に行った友人から「飲もう」と誘われても、「忙しい」と嘯(うそぶ)いて断っている。バイトのない日は、カネも行く当てもないから、家にひきこもるという。