ガイナーレ鳥取 「田んぼの中の敗者復活戦」

念願のJ昇格! 月給20万円弱の若手、
戦力外通告を突きつけられた元日本代表の男たち

 〔PHOTO〕安田健示

「俺は、サッカーは気持ちでカネじゃないと思っているから。塚野(真樹)さん(ガイナーレ社長)の『全国で一番小さな県から世界を目指そう』という言葉に熱くなった。練習場などハード面は香港のクラブよりも恵まれている印象だったし、自分が行く以上は成功させないと引き返せないと重圧も感じたけど、それでこそプロ。何かを成し遂げる達成感を味わいたかった。それがきっと自分の勲章になる」

 鳥取にはプロスポーツチームが一つもなかった。野球は巨人に肩入れしても、当然ながら地元感も薄い。バレーやバスケットも同じ、おらが町のチームが待たれていた。そんな中、'07年にガイナーレは誕生した。本拠地は田んぼに囲まれた市営のスタジアム。一昨年、昨年とあと一歩でJリーグに届かなかったが、今年はJFLで危なげなく優勝し、昇格条件を満たした。地元の盛り上がりを感じていた岡野も肩の荷を下ろす。

「鳥取に来た時、若手選手には熱い気持ちが見えなかった。最初はうるさいことを言わないようにしていた」

 昇格を決め切れない中、HONDA FC(静岡)戦にホームで惨敗すると野人は吠えた。

「『お前らなんなの? 思い上がったゲームをして勝てるはずがねぇぞ。代表選手にでもなったつもりか』と怒りました。チームにはJをクビになって落ちてきた若い選手が多かった。鳥取ではちやほやされるんです」

 岡野には彼らが人気者を気取っているように見えた。"野人"がもたらした乱暴な刺激を、塚野社長は「鳥取に爆弾が落ちた」と言う。

 何より、その営業効果は計り知れない。例えばファンとの懇親会、車椅子の老女は拝むように彼の手を握って離さないほどの人気ぶり。クラブは「野人続々! プロジェクト」を立ち上げて普及と育成を強化しつつある。まずは、米子市のゴルフ場跡地に「YAJINスタジアム」を建設する予定('11年3月着工)で、1口1万円でクラブ公式ホームページなどを通じて協賛金を呼びかけ、現在まで2000万円近くが集まっている。

「米子はサッカー熱が高いので、意気に感じた人たちが利益を度外視して協力していて、俺も熱くなりました。周りからどう思われているのか知りませんが、自分のニックネームは出ていても、おカネはもらっていませんよ(笑)。自分もサッカーを好きな気持ちを忘れたくないから」