「わかっちゃいるけどやめられない」を脱することができるのか

 現代ビジネス編集長体験記  「デジタルは人を健康にするのか」 Vol.1
瀬尾傑(現代ビジネス編集長)

 そして血液検査の結果を含めた判定コメントには、「肥満を認めます。食生活・運動量などに注意して標準体重に近づける努力をしてください。」と印字されている。

 さらに丁寧なことに、厚生部の担当者が手書きでその横に、「これ以上の体重増加には気をつけましょう」などと書いて、わざわざ「麻生」という印鑑まで押してくれている。

 仕事とはいえ、私の健康をこれほど気遣ってくれるとは、ありがたい話だ。厚生部の麻生さん、どうもありがとう。

 しかし、おっしゃることはごもっともだが、だからといって「じゃあ今日からダイエット」という気にはなかなかなれない。

 テレビを見てるときに「早く勉強しなさい」と親に注意されて、二つ返事ですぐ机に向かう子供が世の中にいるだろうか。むしろ勉強なんかするもんか、そう意地になるのではないか。必ずしも正論が人を動かすとは限らないのである。

 そもそも「肥満を認めます」などと医者に認定してもらわなくても、自分だってわかっている。「標準体重に近づける努力をしてください」なんて書かれても、標準体重っていくらなのかを知らない。え、63.9キロ!?それは無理だろう。22キロ減はなんてありえない。こちらは力石徹じゃないのだから、と言い訳したくなる。

 わかっちゃいるけどやめられない、と青島幸男が書き、植木等が唄っていたではないか。その悲しい性(さが)こそが、物語をつくり、文学を生むのである。編集者の端くれとして、その業を背負っていても仕方があるまい。

 さらに開き直っていえば、私自身はたとえ太っていようと、外見上はあまり気にしない。人間は中身で勝負だ!と(自分に都合よく)思っているからである。いまさら女性にもてたいわけではないし、いや、ホンネをいえばちょっとはもてたいが、まあそのために苦労してダイエットしたいとまでは考えない。

イラクで死ぬならいいけれど

 とはいえ冷静になれば、45歳になってこの体重では健康にいいことは何もない。いくら(仮に)仕事ができようが、底なしで酒が飲めようが、カラオケで劇団四季のオペラ座の怪人が歌えようが、体を壊しては元も子もない。

 突然だが、私は以前、イラクで死にかけたことがある。イラク戦争の直後、コラムニストの勝谷誠彦さんとヨルダンのアンマンから車でバクダッドに向かう途中、自動小銃を持った複数のイラク人に襲われたのである。