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「環境問題のウソ」2011年版 PART1

週刊現代 プロフィール

「EV導入によって新たに必要になる電力を、原子力発電などCO2の排出が少ない方法ではなく、石炭を使った火力発電でまかなうという前提で算出した数字です」

 ドイツでは現在、発電のおよそ半分を石炭火力に依存している。EVはたいてい夜間に充電されるために、その時間帯に電力使用量が増加。そこで使われるのは、石炭火力による電気がほとんどなのだという。ちなみに火力発電には石炭のほかに石油、ガスなどがあるが、CO2の排出量が一番多いのは石炭によるものだ。WWFジャパンの広報担当者が続ける。

「加えて、いま売られているEVは走行可能距離がそれほど長くないため、ガソリン自動車からの乗り換えが急速に進むわけではないでしょう。WWFジャパンとしても、EVによってCO2削減という課題が抜本的に解決されるとは考えていません」

 EV導入によるCO2削減効果は国ごとに違う。発電方式や自動車の台数などが異なるからだ。そのため、「場合によってはCO2が増えてしまう国もある」と言うのは東海大学工学部教授の内田裕久氏である。

「国内の自動車メーカーの試算があります。現在のガソリン自動車をEVにそっくり入れ替えたとしたら、CO2の削減量は国によってどれほどになるかというものです。それを見ると、一番多く削減できるのは原子力発電が国の電力の約80%をまかなっているフランス。原発はCO2の排出量が少ないので、全車のEV化でCO2も80%ほど減らせます。日本も原子力発電、水力発電などの比率が高いため、30~40%ほど減らせる見込みです。

 一方、約50%を石炭火力に頼っているアメリカでは、排出されるCO2の量がプラスマイナスゼロだと試算されています。意外なところでは、風力発電で有名なデンマーク。実は石炭火力も盛んなため、試算では20%ほどCO2が増えるとされているのです。これから自動車需要が急増する中国やインドでも、石炭火力への依存度が70~80%ほどと高い。電気自動車が急速に普及すれば、大量のCO2が排出されてしまうでしょう」

 いまはまだ街中でEVを目にすることは少ないが、昨年7月に発売された三菱自動車『i-MiEV』に続き、来月には日産のEV『リーフ』が市販を始める予定。来年にかけて、「EV熱」は盛り上がりを見せることになりそうだ。

 EVが量産されることになれば、車を製造する過程で使用されるエネルギーや、排出されるCO2は大きな量になる。それがガソリン車にくらべて多いとなれば、エコではなくなってしまう。そんな点に着目したのは、日本工学アカデミーの人類未来戦略フォーラム委員である山本達也氏だ。

「車を一台作る時に使用されるエネルギー量は、概ね販売価格に比例すると言われています。EVではありませんが、エコカーのプリウスの場合、同クラスの他車種にくらべて値段が1.5倍。ハイブリッドなのでエコと思われていますが、製造過程で発生するCO2の量はガソリン車より多いと推測できるのです。

 ただ、エコカーは走れば走るほどガソリン車にくらべ、トータルのCO2排出量は減っていく。トヨタの発表では、プリウスは5万km走ると、トータルでCO2の削減が見込まれるようです」

 ではEVについては、どう考えればいいのか。東京大学名誉教授の安井至氏が言う。