瀬戸内寂聴vs塩野七生「どうやって死にましょうか」

「現代ビジネス」創刊記念対談〔後編〕
現代ビジネス

瀬戸内 でも、「あなたは非常にたくましいし、いい男です。あなたは豪快に笑ったら親しみが出ます。いつも怖い顔して睨んでると票が集まりませんよ。和顔施でいきましょう」っていってあげたんです。そしたらその翌日のテレビに出てにこにこ笑ってるの。それがまだ慣れてないから硬い笑顔でした。でもこのごろは随分笑うようになったわね。

塩野 日本の政治家は肉体的にも精神的にも背筋をもうちょっと伸ばして、笑顔を忘れないでいただきたいですね。民衆は必ずリーダーを見ていますから、その姿勢がいいと自分たちもだんだんそうなるものです。

瀬戸内 なりますね。

塩野 わが日本にいちばん求められているのは、背筋をピシッとすることじゃないでしょうか。

瀬戸内 とても重要なことですね。じっさいわたしの歳になると、油断するとすぐ猫背になってしまう。

塩野 いや、わたしだってそうですよ。

瀬戸内 だからいつも意識しているんです。

わたしたちの死に方は

塩野 着物のときは、わたしみたいな着慣れてない人は帯揚げをのせる台を帯に通すの。あれやるとどんな人でも背筋はピシッとします。ローマでの外国人が集まるパーティのときは、母親のお下がりの着物を着て行きます。

瀬戸内 昔のものはいいからね。

塩野 なぜそれがいいかというと、わたしたち日本の女って洋服よりも着物のほうが背筋がしゃきんとするんです。

瀬戸内 着物は美しい。洋服だと宝石がいるでしょう。着物はそれがいらない。

塩野 わたしたちだけでも死ぬまで背筋をピシッとしていきませんか。

瀬戸内 あなたとわたしはすでに自然にそうしてますよ。

塩野 2000年前のローマの賢人たちは、年老いてちょっと危ないなって感じたときには、ひたすら水ばかり1~2ヵ月呑んで眠るがごとく死んでいったそうです。先生もわたしも最後は、これでいくしかないですかね。

瀬戸内 天台宗の行に9日間、食事も水もとらないのがある。人間は水だけでも1月や2月生きられます。でも9日間、水も飲まないと死ぬんです。あなたのいう最後の水に葡萄酒をちょっと入れてはダメなの。

塩野 先生の大好きなどぶろくなんて入れたら、また元気になっちゃうじゃないですか(笑)。

瀬戸内 はっはっは。

静かで美しい「寂庵」の庭に立つ瀬戸内氏(左)と塩野氏

                                            (構成・島地勝彦)

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