気をつけろ!もうカネは借りられない

この6月、500万人が首を吊る
週刊現代 プロフィール

 だが、一度過払い請求をしてしまうと、信用情報に載ってしまうため、借金をしていた人は新たな借り入れがほぼ不可能になる。それなのに債務整理をしないで放置されてしまうと、借金苦からも取り立てからも解放されないのだ。

 これは一部の不心得な弁護士・司法書士に限られた問題なのだろうか。

 過払い請求を集中的に行っている弁護士・司法書士のシェアを筆者らが調べたところ、上位10法人のシェアを合計しても、わずか13%強に過ぎなかった。

 これほど上位の業者のシェアが低いという事実。それは、一部の弁護士・司法書士だけが集中的に過払い請求を行っているのではなく、日本中の弁護士や司法書士たちが、ここぞとばかりに一斉に「過払い利権」に群がっているという構図であろう。

弁護士はカネを返せ!

 その一端が現れたのが、昨年10月21日に明らかになった弁護士・司法書士の大量脱税事件である。過払い金問題を主に扱う697人もの法曹人が、脱税で摘発されたのだ。

 最高裁で勝訴し、貸金業者から過払い金を取り返す道筋を作った新里宏二弁護士は憤慨する。

「取り返したお金は困っている人に返してほしい。簡単な仕事で暴利を貪ってほしくないんです」

 法曹界には、自浄能力はないのだろうか。

 宇都宮弁護士は言う。

「犯罪に近い荒稼ぎをする者が現れるようになり、弁護士への苦情がこの4年間で倍増しています。日弁連はガイドラインを出しましたが、これは規則ではないので、違反しても懲戒処分にできません。そこで規則に格上げして強制するかどうかを、今、検討しているところです」

 規制は、いつか作られるのかも知れない。だがそれは「過払い利権」があらかた食い散らかされた「後の祭り」となるだろう。

 他人に厳しく、自分たちには大甘の弁護士たち。弁護士に自治権が与えられているのは、何のためだったのだろう。

 自らを迅速に律することもできないのなら、むしろ弁護士規制法こそが必要ではないのだろうか。

 金融庁は、貸金業法を完全施行する前に、自治体などが低所得者に融資するセーフティネットを完備する、と言っている。

 そのセーフティネットとやらが、笑うこともできないシロモノなのだ。

 試しに役所に行き「生活福祉資金貸付」を申し込みたいと言ってみればいい。

 3カ所も4カ所も窓口をタライ回しにされ、毎回お説教を並べられ、失業者でないとダメですとか、親や親戚から借りなさいと諭(さと)される。それでも必要なんですと頼むと、

「自己破産か債務整理の費用なら貸します」

 と言われるのだ。

 これまた法曹界が潤う仕組みだったのである。

 プライドをズタズタにされた上、債務整理を強要される。こんなシロモノひとつで「セーフティネットは完備された」と役人や日弁連は胸を張るのだ。

 だが崖の底に張った網のことをセーフティネットとは普通は呼ばない。筆者には、法曹界のための底引き網に見えるのだ。

 こんな不愉快な目に遭わされるぐらいなら、首でもくくったほうがまだマシだと思う人もいるだろう。

 シティグループ証券で貸金業界を調査する津田武寛ディレクターが指摘する。

「6月に完全施行された瞬間、総量規制をオーバーしている500万人は、自殺するか、破産して生活保護を受けるか、犯罪に走るか、とにかく悲惨なことになるでしょう。累々と犠牲者が出たあとでないと、おかしな制度を変えることもできないのだとしたら、日本っていったい何なんだろうと思いますね」

〔取材・文:水澤 潤(生活経済アナリスト)〕