気をつけろ!もうカネは借りられない

この6月、500万人が首を吊る
週刊現代 プロフィール

 実に懇談会の主要メンバー自身のことではないか。

 つまり大森参事官らは、鏡に映った自分たちの姿を見ながら、それを無関係な他人の姿だと思い込み、他人の生活態度を非難するつもりで自分自身を非難していたのだ。

 事実の代わりに偏見に基づき、合理性の代わりに思い込みによって誘導され、日本の一つの巨大産業に対する「死刑判決」が下されたのである。

 物であれサービスであれ何であれ、政府が値段を強制的に引き下げれば、瞬時に市場からは商品が消えてしまう。これは高校の教科書にも載っている経済学の基礎の基礎だ。

 ところで、「お金」の値段とは「金利」のことである。

 したがって、貸金業の上限金利を引き下げた結果、貸金業者の9割近くが廃業し、貸出額が壊滅的に収縮してしまったのも当たり前なのだ。

 政府が強制的に金利を引き下げた瞬間から、貸金業者の貸し出しは収縮した。これこそが私たち日本人が直面している不況のなかの現実なのだ。

「過払い利権」に群がる弁護士

 実に驚くべきことに、懇談会では「多重債務者とは何か」という定義すら行われないまま、ムードに流されて議論が進み、法律の骨子が作られていた。

 多重債務者の定義は何なのか。筆者が宇都宮弁護士に質問したところ、虚を衝かれたように一瞬黙り込んだあと、

「たとえ1社からしか借りていなくても、過剰融資を受けていれば、それは多重債務者なんです」

 と答えた。だがこれは宇都宮弁護士独自の定義にすぎない。ある消費者金融関係者が言う。

「多重債務と過重債務は違います。きちんと借金を返せるアテがあるのなら、数社から借りていても問題ではありません。しかし借金を返すために別の業者から借金しなければならなくなった時、それが過重債務なんです。もしも規制するのなら、過重債務こそ規制すべきだと思います」

 総量規制を導入し、年収の3分の1以上の貸し出し禁止を杓子定規に決めた時、懇談会の委員の頭の中には、貸金業をぜひとも必要としていた造園業の三浦さんのような存在は浮かびもしなかったに違いない。

 多重債務者の発生を防止するために、上限金利を引き下げ、年収の3分の1以内に借金総額を制限するという貸金業法は、目的と手段とが、まったくミスマッチだったと言わざるをえないのだ。

 ところで今、多重債務者が弁護士や司法書士によって逆に食い物にされるケースが多発している。

 東京情報大学の堂下浩・准教授によると、弁護士等に債務整理を依頼した人は、平均して依頼時にまず15万円を払い、さらに過払い金「請求額」の18%を取られていたことが分かったという。

「弁護士らは貸金業者となるべく早く和解に持ち込もうとします。このため実際の支払額は業者に値切られる場合も多く、その結果、取り戻した金額の3分の1が弁護士らの報酬として取られているのです」

 さらには、過払い請求をして報酬を受け取りながら、債務整理をせずに放置するケースも多発しているのだ。

 過払い請求だけなら、パソコンでアルバイト事務員が片手間でもできる作業である。ある弁護士事務所では「CMを見て電話を掛けてきた客の相手をする事務員」を、時給1500円で今でも公然と募集しているほどだ。