気をつけろ!もうカネは借りられない

この6月、500万人が首を吊る
週刊現代 プロフィール

 ただし造園業は現金仕入れが原則だ。仕事が決まると植木や資材を数日で用意し、工事に取りかかる必要がある。そんな時、三浦さんは貸金業者を活用してきたのだ。

「即日でも1000万円ぐらいは貸してくれるマチ金がいたんです。当時は年利40%でしたが、1カ月もすれば返済できるので、利子は約40万円で済む。これで売上高2000万円の仕事を取れるのですから、とても助かっていたんです」

 このマチ金は従業員が二人だけ。長い付き合いを経て三浦さんの人柄も仕事の内容も知り尽くした、零細な貸金業者の典型だった。だが平成18年に貸金業法が部分施行され、貸出金利を15%以下にせよ、資本金5000万円を用意せよ、信用情報機関とオンライン接続せよなどと言われてしまった時、零細マチ金には廃業以外に選択肢はなかったのである。

 前出の英氏は言う。

「平成11年に3万社を超えていた貸金業者も、今や4752社(平成21年10月時点)しかありません。廃業は今でも毎月200社のペースで続いています」

 頼みの綱を失った三浦さんは、ほかの業者を探そうと努力した。だが広告では法定金利を謳う業者でも、書類を揃えて持って行くと、

「30万円貸すから10日後に40万円を持って来い」

 などと平然と言うのだ。正規の看板を掲げる貸金業者が、ヤミ金に転身していたのである。

「もう大きな仕事があっても引き受けることはできません。昔は十数人いた職人にも辞めてもらいました。今は昔なじみのお客さんの庭の手入れだけをしています」(三浦さん)

 大企業であれ零細企業であれ、金融の道を閉ざされてしまえば、もはや仕事をすることもできなくなる。

 こうして不況に苦しむ日本の片隅で、また十数人分の雇用が失われたのだ。

「これまでサラ金の世話になったことはない」と話していた亀井氏

 金融担当大臣の亀井静香氏は話す。

「(貸金業者には)あれだけの需要があるのだから、それなりの社会的な責任の一端を果たしているのも事実です。銀行や政府系金融機関等が責任を果たしていないことの裏返しでもある」

 貸金業法の改正を決めた金融庁の貸金業制度等に関する懇談会(平成17年)の議論を見ると啞然とする。

「専業主婦は夫に黙ってパチンコやホストにはまってしまうのが問題。配偶者とセットで貸すべきだ」

 こう公言するのが懇談会の事務局長を務めた大森泰人参事官(当時)だ。

 貸金業の長所は「お金が急に必要になった時、その日その場で借りられる」という点である。その代わり金利は高い。

 利用者の圧倒的多数は長所と短所とを踏まえて使う健全な利用者なのだが、懇談会は19回も開催されたのに、健全な利用者の声は、一度も聴取して来なかったのである。

 一方、多重債務者問題を長年扱ってきた宇都宮健児弁護士ら日弁連は、多重債務に関するさまざまな資料を提出。懇談会では「多重債務の被害者の意見」ばかりが繰り返し聴取された。こうして上限金利を15~18%(10万円以下なら20%)へ引き下げ、これを超えれば懲役10年を科すことや、専業主婦の借金にはダンナの同意を義務付けることが決められたのだ。

 要するに、「多重債務の被害者を減らす」という一点に目を奪われ、多数の健全な利用者を置き去りにしたまま作られた欠陥法と言えるのではないだろうか。

 大森参事官や懇談会のメンバーの大半は中年男性だ。その彼らが頭の中で勝手に作り上げた債務者像とは異なり、関西学院大学の甲斐良隆教授の研究によると、低所得の女性層が初めて消費者金融からお金を借りた理由は、4人のうち3人までが、生活費・医療費・教育費のためだった。

 ところが、大森参事官らが主張するような、ギャンブルや酒や異性のために借金を始める層も、たしかに存在する。3人に2人が交際費や遊興費のために借り始める層。それが「高収入の男性」なのだ。