医者の非常識、患者の非常識
あなたが知らない病院の「真実」

これでは治るものも治りません
週刊現代 プロフィール

 このような事例は、総合病院や大学病院で多い。東京大学医学部附属病院の医師が、その内情を明かす。

「東大病院をはじめとして、大学病院などの大きな病院には、腕のいい医師はたくさんいます。ですが、東大だから何でも治せるというのは誤解。

 大学病院の医師たちは、『専門性を極めたい』『難病を治したい』という意欲のある医師が多く、自身の専門以外のことはわからないという人も多いんです。『東大は、難しい病気は治せても、盲腸の手術は下手』なんて冷やかしで言われることもありますが、意外と当たっている部分もあるんですよね」

 これについて医学博士の左門新氏も、次のように指摘する。

「大学病院や総合病院は、高度な治療を必要とする患者を受け入れ、治療する場でなくてはならず、町のクリニックとは役割が違うのです。どこでも処置できる風邪の患者を診ているくらいなら、その時間を重症患者のために使いたい。大病院の融通の利かなさに不満を抱く前に、患者もこのような病院とクリニックの機能の違いを認識する必要もあるのです」

 つい医師の非常識な面ばかりが気になるが、非常識な患者も少なくない。たとえばこんなケースがあったという。

「以前、50代の夫婦がED治療の相談に来られたんです。でも、質問をしても答えるのは患者である旦那さんではなく、奥さんばかり。『とにかく勃起をしないし、したと思えば中折れする』などと不満をぶちまけ、話がどんどんエスカレートしてきたんです。黙ったままのご主人の横で、性生活の不満から亭主の金遣いから休日の過ごし方まで、さんざんわめかれました」

 と、ため息をつくのは、ある私立病院の泌尿器科医師である。

「私は泌尿器科の医師であって、セックスカウンセラーじゃないんです。夫婦関係の修復役まではできませんよ」

 患者にとって医師は唯一の存在でも、医師にとってみたら数百人の患者の中の一人に過ぎない。そのことを患者が認識しておく必要がありそうだ。

 心臓外科の名医と称される都内の総合病院の医師のもとには、北海道から沖縄まで、全国から患者が治療に訪れるが、手術を終えて地方へ戻った患者の家族から「最近、主人の状態が良くないので、先生が学会で北海道へいらっしゃる際についでに診てもらえませんか?」などと言われて困ったことがあるという。

「心臓病の場合、長距離の移動などが負担となるため、具合が悪くなるたびに東京へ来るとなると、患者さんの容態が心配なのは事実。でも、僕の出張の予定などを調べて、ことあるごとに連絡されても、そこまでは対応しきれない、というのが正直なところですね」

 特に、心臓病やがんなど、命に関わる病気を患った人は、一度経験した病気の痛みがトラウマとなって、別の原因で体に痛みが出ても不安に感じることが多い。

「3年前に大腸がんの手術をしたある患者さんは、少し食べ過ぎておなかが痛くなる度に、私のところへ来て『先生、本当はがんが取りきれていないんじゃないですか?』と問い詰めてくる。手術がうまくいったことを何度説明しても、納得してくれないんです」(都内の公立病院外科医)

いきなり札束を見せて

 病気のために正常な判断ができなくなる人もいる。

 都内に住む48歳の男性は、3年前に人間ドックを受けた際に末期の肺がんが見つかった。もうすでに手遅れの状態だった。だが、「残念ながら、もう手術はできないので、抗がん剤で治療をしていきましょう」という医師の言葉に、まったく耳を傾けなかったという。治療を担当した医師が当時を振り返る。