医者の非常識、患者の非常識
あなたが知らない病院の「真実」

これでは治るものも治りません
週刊現代 プロフィール

 気が動転していたこともあり、医師の説明はまったく頭に入ってこなかった。

「申し訳ありませんが、先生のご説明がよくわかりません」

 と正直に言うと、

「は? あんたが聞いてきたんだろ。本当に何にもわからないんだな。馬鹿じゃないか」

 と怒鳴られた。そんな会話が20分ほど続いたが、兄の病状は少しも把握できず、胸が苦しくなって電話を切った。兄は2週間ほどこの病院へ入院していたが、内海さんの意向で転院。だが、その2週間後に息を引き取ったという。

「あれが、患者の命を預かる医師の態度なのでしょうか。今思い返しても、悔しくて・・・」

 内海さんは言葉を詰まらせる。

 もちろん多くの医師がこのような非常識な態度を取るわけではない。だが、命に関わる病気に罹ったとき、患者もその家族も「なんとかして助けて欲しい」という思いが募るあまり、担当医が絶対的な逆らえない存在になってしまうことがある。その一方、医師からすると、患者は「自分が病気を治してあげる」対象の一人に過ぎない。結果的に「医者は患者より立場が上」という力関係ができがちで、このようなトラブルが生じてしまうのだろう。

 佐賀県在住の大宮保男さん(仮名・47歳)は外科医に、必要な検査をせずに手術をされそうになった。

 大宮さんはあるとき車の運転中に、痙攣の予兆を感じ、受診歴のある最寄りの病院に駆け込んだ。そして容態を診断した医師から、

「危険な状態ですから至急手術をします」

 と告げられた。慌てたのは大宮さんである。彼は持病の多発性血管腫によって、これまで同様の痙攣を何度も経験しており、こういう場合、緊急手術の必要はなく、手術する場合には事前に検査をしなければならないことを知っていた。さらに家では身重の妻が数日中に出産を控えていたので「手術をするにしても一度帰宅したい」と申し出た。すると医師は、不機嫌そうにこう言った。

「あなたね、素人さんでしょう」

 とにかく「手術をする」の一点張りで、取り合わない。疑問に思った大宮さんは、職場の部下に頼んで転院手続きをしてもらい、なんとか病院を出た。その後、転院した先の医師から「緊急な手術の必要はない」と言われ、子どもが誕生した2ヵ月後に手術を受けた。術前の検査では危険な部位が新たに見つかり、あのまま緊急手術をされていたら命が危なかったという。

何でも治せるわけではない

 近年、医師と患者の距離は縮まりつつある。自分が納得のできる治療や医師を選んで意見をハッキリ言う患者が増え、これまでの力関係が崩れたことで、日常的な衝突も頻発している。

 高血圧に悩む都内在住の伊東晃さん(仮名・65歳)は、ある有名大学病院の内分泌内科に5年前から毎月通っている。ちょうど診察で病院を訪れたとき、喉が痛くて微熱があっため、いつもの担当医に「風邪薬も一緒に処方してください」と頼んだところ、断られてしまった。

「『自分の専門外なので、呼吸器内科に予約を入れて診てもらってください』と言うんです。しかも、予約は早くて1週間後にしか取れないという。ばかばかしくなって、近所の町医者へ行ったら、すぐに風邪薬を出してもらえました。5年も同じ医師にかかっているのに、なんで診てくれないんだと腹が立ちました」(伊東さん)