菅直人首相はまことに友人が少ない。盟友だった仙谷由人官房副長官とは完全に修復不可能状態となっている。そんな中でも菅総理が話し相手となる国会議員は江田五月は別格として寺田学、加藤公一、阿久津幸彦の若手と斉藤勁国会対策委員長代理だ。
斉藤国対委員長代理は菅首相とは十数年来の友人であり、ことあるごとに官邸や公邸を訪れている。休日に公邸へ呼ばれ話し合うこともしばしばだ。
首相の側近中の側近である斉藤国対委員長代理に、菅総理の本音を聞いた。 聞き手:辻野匠師(ジャーナリスト)
齋藤: 民主党は6月2日の菅内閣不信任案提出から大分おかしくなってきた。それまで小さな事はあったが、そんなに大きな流れではなかったのです。
普通なら圧倒的数を持つ与党が堂々と内閣不信任案を否決すればいい。だが、前日から鳩山派、小沢派を中心に野党の不信任案に同調しようとする不審な動きが出てきました。小沢派は80人を集めたというし鳩山派は30人近くを集めた。非常に緊張した夜を迎えまた、午前中にも官邸で鳩山、菅総理の会談が行われました。
菅総理の同伴者は北沢俊美防衛大臣と岡田克也幹事長。鳩山由起夫前総理の同伴者は平野博文前官房長官です。菅総理・鳩山前総理の間に覚え書きが交わされた。ここでの覚え書きの件はほとんど聞いていません。
その日のお昼に始まった民主党代議士会で冒頭、菅総理が「一定のメドが付けば若い人にその責任を譲りたい」といった。その直後、鳩山さんは「菅総理は復興基本法と第二次補正予算案が成立すれば辞任する」と内容をばらしてしまう。個人的にいえばあそこまで言わなければいけないのかなと思いました。
これによって菅内閣不信任案は否決された。
しかし、この後がいけない。菅総理は
「復興、原発事故に一定のめどがついたら若手に責任を譲るといっただけで、辞任すると言ってない」と宣言。
岡田克也幹事長も「菅総理は辞任するとはいってない」と喋ったことで、鳩山さんが激怒。
「菅さんは詐欺師だ。ペテン師だ。人間のくずだ」と大声を張り上げて菅総理を批判してしまう。
後で鳩山さんは「言葉として言い過ぎた」と謝りましたが、民主党を作った人の発言としては党内に動揺を起こしました。これ以後、党内がギクシャクしていく原因の一つになりました。
ちょうど1年前の6月2日、鳩山さん自身が「政治と金、普天間基地移転問題」を抱え小沢一郎幹事長を道ずれに総理を辞任した。「自分は潔く辞任したのに、菅さんは何だ」ということが頭に浮かんだということなんでしょう。
鳩山さんも小沢さんも政権交代の牽引車です。もう少し結束の仕方があったのではないか、昨年9月の代表選挙でも話し合いで一本化すべきではなかったかと思います。菅さんの代表戦当選を受け、「小沢つぶし」というか「小沢外し」という形になっていった。小沢さんはやはり政権交代の大功労者ですよ。
民主党は何ら結束しないまま、東日本大震災が起こり福島第一原発水素爆発事故が起こった。
官邸は大震災処理問題に忙殺され対応も後手後手に回ってしまう。国民から「復旧・復興が遅すぎる」との批判は甘んじて受けなければなりません。小沢さんは岩手出身で超ベテラン政治家。こんな時こそ小沢さんを大切にし、党の結束を図るべきでしょう。
民主党は若手も多く党の気風から「オープン」なんです。一方、小沢さんは「親分型」と気風がまた違う。特に民主党は09年の総選挙で1年生が多い。こうした相反する議員達の寄せ集めのような状況では徹底した「議論」するしかない。
自民党は長期政権の中でいろいろな議論を戦わせながら最終的に「総務会」で結論を出していった。ガス抜きといわれようが何と言われようが「総務会の決定」という文化を創ってきました。
それを習って民主党も「社会保障と税の一体改革」や「復興財源」の問題で議論を重ねています。 小沢さんと仙谷さんとかの問題でなく党の執行部が「小沢さんにも会議に来てもらい、意見を言ってもらう」とか小沢さんが会議に来られない場合でも執行部が「会議ではこういう風になりました」と説明しに行けばいい。党の執行部は小沢さんらを巻き込んでいくことを怠ってきた事で党内もギクシャクして来たことは間違いありません。
衆参ねじれた国会運営は前からも後ろからも弾が飛んできて大変ですよ。