京都人の本音と外面
夏のメインイベント「祇園祭」はだれのもん?

山鉾が一番集中する、新町通りの宵山。17日鉾巡行では御池通りから細い小路地へと辻回しされる様はあっぱれ!

 名物“油照り"で気が遠くなるほど暑い京都の夏は祇園さん〔祇園祭〕一色。またの名を「はも祭」というこの祇園祭、7月17日の「山鉾巡行」と「宵山」だけと勘違いする人が多いけど、実際は1日の「吉符入り」に始まり、2日「くじ取り式」そして10日からの「鉾建て」etc.と本番17日を経て31日の「疫神社夏越祭」まで、さまざまな祭事が1ヵ月も続く長いお祭りだ。

 これは京のメインストリート四条通りのどんつき「八坂神社」の祭礼で、中京区、下京区、東山区にすむ町衆自慢のお祭り。氏子は期間中、夏に旨い“胡瓜を食べない"と力が入る。祇園さんの神紋が輪切りした胡瓜と似ているからだというが、氏子ではない京の“田舎もん"にはよそ事、いまいちテンション上がらへん。

「祇園祭なんか人を見に行くようなもんや」という皮肉はさておき、「いまだに生で見たことおへん」とそっけない京都人もけっこう多い。が、愛着はないくせに、「いうまでもなく日本一のお祭やね。鉾の“辻回し"も迫力あるえ」とか「鉾は動く美術館や」と、まるで毎年見ているかのような自慢話をしたくなる、ユネスコ無形文化遺産にも登録された由緒あるお祭なのだ。

おすすめは神幸祭のお神輿

 去年の宵山、祇園祭は5度目だという夫妻が東京から上洛、有名な老舗喫茶イノダコーヒで待ち合わせした。数十年ぶりの宵山、小雨降る中、新町通りをゆっくり東京人に案内され南へ下ると!コンコンチキチンコンチキチンのお囃子とともに焼き鳥やたこ焼きの芳ばしい香りが。

「お祭り気分も最高潮ね」とたこ焼きを頬張りながら、大はしゃぎする東京夫人だが“なんだか屋台村みたい"と京都人の私はひとり白け気味。こんな宵山の屋台化現象を「重要文化財に匂いが染み込んでしまう」と懸念する氏子も多く、宵山の屋台を拒み続けている山鉾町もある。そのひとつが油小路通仏光寺の「太子山」。

「街中をちょっと外せば、昔ながらの静かな宵山をゆっくり堪能できまっせ」と太子山保存会運営委員の松浦さん。たしかに観光客はもっぱら新町通りを中心とした山鉾エリアに集中。本家「八坂神社」での神事には余り関心が無いと松浦さんは嘆く。

 東京在住ながら京都で「女神輿やまぶき会」を立ち上げたお祭り好きの萌菜さんは「祇園祭は『神幸祭』が本番」という。17日夕方6時、祇園石段下で3基の大神輿が1000人もの勇猛な男達に担がれ、暴れ狂う「神幸祭」の様は萌菜さんも「しびれる! 一度は見る価値あり」と迫力満点らしい。

「昔は巡行の折に鉾から投げられた粽(注1)を厄除けに軒下に1年間吊るしておいたもんどす」と氏子長谷川さん。粽の奪い合いが危険だと廃止になったが山鉾町の会所にいけば購入可能だ。粽のご利益は山鉾によって異なる。

「“船鉾"は“安産祈願"。若い頃、晒の腹帯と粽をいただきにお使いに行きました」と長谷川さん。ちなみに“鯉山"は“出生開運"、“放下鉾"は“厄病除け"、“保昌山"は“縁結び"など、山鉾32基分のご利益が各500円ぐらいから。

 このありがたい「粽」だが、早とちりの非京都人が笹を剥いたら空っぽ。「これが粽?」とキレテ、ゴミ箱へ。こんな罰当たりな非京都人のためか、数年前、食べられる粽も登場したらしい。「『黒主山』では黒糖風味の生麩仕込みの粽を限定販売しているよ」とすかさずあの常連東京夫妻から教えられ、ナメクジに塩の私。

 ところで、粽を購入すると山鉾に上げてもらえるチャンスがある。しかし氏子長谷川さんに言わせると「女は上げてもらえまへん。それに長刀鉾の粽は1000円と一番高おす。それでもすぐ完売するので、毎年手に入れるまで気が抜けまへん」と苦笑。人気の長刀鉾は“くじ取らずの第一番"。昔も今も巡行の先頭を行くので有名だ。

「長刀鉾に乗るお稚児さんは生き神さん、毎年京の由緒あるお金持ちのぼんが選ばれはる。男の子がいる家に突然連絡がいくらしいえ」と京都人の間ではまことしやかに噂されている。ただし女人禁制ゆえ、母親たりとも手伝えないから、選ばれると父親が祭前後の2ヵ月は仕事休んでつきっきり。「2000万円はかかるらしい」とも聞こえてくるが、それでも稚児さんを出すことは京都人のステイタスなのだ。

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