「末期がん」からの生還 後編

8人の体験記
患者・家族・医師「奇跡の物語」

「食欲がなく、ご飯のにおいを嗅ぐだけで気持ち悪くなって、睡眠欲も性欲もなくなった。そしてその年の冬、出張先で血尿が出たんです。数日後、東京に帰ってエコー検査を受けました」

 だが検査の詳細は告げられず、紹介状を書いてもらって東京慈恵会医科大学附属病院(東京都港区)泌尿器科教授の頴川晋医師のもとへ送られた。そこで精密検査を受け、腎臓がんであることが判明。がんは縦13cm、横20cmもある大きなものだった。頴川医師が言う。

「腹部が腫れていて、触っただけで痛みを感じるような状態でした。あれほど大きくなってしまった状態はきわめて珍しいですね」

 小西さんがそれまで病状に気づかなかったのには理由があった。42歳のときにたばこをやめたら太りだし、ダイエットを始めた。20kg体重が落ちても減量の成果だと思っていた。その上、禁煙と同時に健康診断を受けることもやめていたのだ。

「諸悪の根源のたばこをやめたのだから、すべて大丈夫だろうと決め付けていたのです。今考えると、少しは自分の体を心配しろ、と思いますが(笑)」(小西さん)

 だが、がんを告知されても決して落ち込まなかった。

「日本人の3人に1人はがんになるといわれています。僕はその確率で選ばれた。こんなラッキーなことはない。がんを克服して仕事に復帰したらかっこいいな、と(笑)。病気を治すことを目的とせず、その後の楽しいことだけを考えました。それに、がんのことをいろいろ調べて落ち込むより、先生を信じすべてお任せしようと思ったんです」

 小西さんはこう笑い飛ばす。しかし、大きながんを取り除くのは容易ではない。開胸手術を行い、肋骨をはずさなくてはならなかった。

「この大きさだとリンパ節への転移の可能性が非常に高い。その場合、ちょっと大変な状況になるかもしれないと、手術前にご家族にお話ししました」(頴川医師)

 それを聞いた小西さんの両親は、お百度参りをするために実家の和歌山へ戻っていったという。

「1週間後、先生が『リンパ節へのがんの転移はなかった』と報告してくれました。僕はそうか、と思っただけですが、見舞いに来ていたスタッフは皆、泣き崩れていました」(小西さん)

頴川医師は、前立腺がん腹腔鏡手術の名 医としても名高い

 手術はうまくいき、奇跡的にリンパ節への転移も見られなかった。だが、まだ安心はできない状況だったという。頴川医師が話す。

「恐らく微小転移があり、2年以内に再発するだろうと考えていました。腎臓がんは抗がん剤も放射線も効かないので、手術後の免疫療法を強くお勧めしました」

 小西さんはそれを断った。「薬に頼らず自分の体の免疫を高めたかった」からだという。そして、驚くべき回復力で術後3ヵ月で仕事に復帰。心配された再発もなく、6年が経過した。

「再発しないのは大変珍しい。小西さんの前向きな姿勢も、免疫活性に役立っているのだと思います。彼のように振る舞えたらすごいと思いますよ」(頴川医師)