相も変わらぬ「初めにストーリーありき」の強引な捜査と「リーク頼み」の報道、反省も自戒もなし!
今回、検察は簡単に3人を逮捕した。いかにも早すぎる。何かを隠そうとしているのだろう。そしてお次は正義のヒロイン登場。できすぎだ。検察の意図を知ってか知らずか、新聞がそのお先棒を担ぐ。
10月6日早朝、大阪・都島にある大阪拘置所の待合室には、13人の新聞・テレビの記者たちが集まっていた。いずれも大坪弘道・大阪地検前特捜部長との接見を申請していたが、
「今日は別に面会予定が入っていますので、面会はできません、と本人が言っています」
と係員に告げられ、空しく待合室を後にした。なかには、「なんだよ、受けたのは時事通信(の取材)だけかよ」と毒づく記者もいた。
前特捜部長が、拘置所内で取材を受けるという異常事態。
大阪地検特捜部を舞台にした証拠捏造事件は、大坪前特捜部長、佐賀元明前特捜部副部長という二人の幹部検事にまで捜査の手が及び、「最高検」vs.「大坪、佐賀」の情報戦の様相を呈してきた。
「これまで、検察幹部は夜回りしても口が固く、なかなか情報が取れないというのが常識でした。今回は最高検の伊藤鉄男・次長検事が記者クラブだけに限定しないオープンな記者会見を連日開いている。また、これは以前からですが、次長室で若い現場記者と直接、3分とか、5分程度一対一で会っている。
司法記者OBは、『最高検も、随分サービスをするもんだな』とビックリしていますよ」(全国紙司法担当ベテラン記者)
各社の司法担当記者は、「タイミングを見計らって、他社がいないときに行けば次長室で直接話が聞ける」という。入手した情報をこうした取材機会に最高検幹部にぶつけて確認し、記事にしている。
その結果、大坪、佐賀両検事が10月1日に逮捕される前後から、「捜査情報」が大量に新聞紙面に垂れ流されることになった。
〈虚偽の弁解 指示か 前特捜副部長 告白され「すべて任せろ」〉(朝日新聞10月3日)
〈前特捜部長「ミスでいく」〉(読売新聞9月28日夕刊)
〈前特捜部長 公表制止 隠ぺい 前副部長も了承 「おまえらは危機管理 分かっていない」最高検に部下供述〉(毎日新聞10月4日)
いずれも、前田恒彦検事の「故意による証拠改竄」を知った大坪前部長が、それを隠蔽するために意図的に策を弄していた、という記事である。つづけて、押収された前田検事のPCから、前田検事の書いた上申書のデータが復元され、何度も書き直された形跡があったという情報も、ほぼ一斉に流れた。
これらの情報が確かであれば、証拠改竄を見逃したばかりか、その事実を隠蔽しようとした大坪前部長、佐賀前副部長の逮捕は「やむを得ない」ということになる。
通常の地検特捜部事件であれば、こうした情報が一方的に垂れ流されることで「世論」が決定され、「悪玉」を見事立件した検察が喝采を浴びる。
しかし今回の場合は、捜査される「悪玉」の側も、黙ってはいなかった。ターゲットにされた大坪前部長、佐賀前副部長が猛反撃を始めたのである。
「佐賀前副部長は、逮捕前から自宅前で積極的にメディアの取材に応じ、『全面戦争だ。(最高検は)現場の責任という形で幕引きを図ろうとしている』と声を荒らげていた。
自分のつけていた『業務日誌』を担当の弁護士と、MBS(毎日放送)の担当記者に渡し、『オレが逮捕されたらこれを公開してくれ。これを見れば、オレが無罪ということがわかる』と伝えていた」(在阪司法担当記者)
この業務日誌は、実際に10月2日のTBS系『報道特集』でスクープ公開された。