藤田康人(株式会社インテグレート社長)「ソーシャルメディア時代にマーケティングの必勝法はあるのか」

話題の本『どう伝わったら、買いたくなるか』著者に聞く

 かつてはマスメディアでの広告という、エースで4番に任せておけば良かったのが、メディアとデバイスが多様化したことで、全員野球を強いられるようになったわけですから。さらに、この全員野球はID野球でなくてもいけません。思いつきや思い込みでなく、さまざまな事実・データに基づいて戦う必要があります。

---統合的であることのほかに、注意すべき点はどこにありますか。

藤田: 誰がそれを伝えるか、です。毎日、たくさんのメルマガが届きますが、そのうちどれだけを開封するでしょうか。ほとんど読まずにゴミ箱行きになっているのが実情でしょう。開封しなければ、そこに書かれている情報は、受け手には届きません。

 しかし、もしそのメルマガと同じ内容が、信頼できる友人からのメールに書かれていたらどうでしょう。必ず読みますよね。そして「この商品がいい」とあったら、それまでは興味がなかった物でも、買うかもしれない。

---すると、伝えたい側が意識すべきはどういうことになるでしょうか。

藤田: 受け手の側が聞きたい情報と、伝える側が伝えたい情報とは、往々にして違うということです。そして、聞きたいと思われている情報を重視すること。この本にもそのことを書いています。「当たり前のことじゃないか」とも言われるのですが、本当にそれを実践されているケースは多くありません。

TwitterとFacebookはどう違うのか

---昨年の民主党代表選で印象に残っていることがあります。それは、ネット上では小沢一郎元幹事長への支持が多く見られたことです。しかし、実際に選挙をしてみると、菅直人現代表が勝ちました。どうもネット上の世論と、それ以外の世論に、温度差があるような気がします。

藤田: ネット上で物を言う人は、ごく一部だからです。彼らのことをRAM(Radical Access Member)と言いますが、シニカルで、批判的な発言を多くします。私もいろいろなネットメディアで物を言ったり書いたりしていますが、そこにつくコメントは大抵、ネガティブです。ということは、エキセントリックな意見が顕在化しやすいということです。しかしそれは全体の1割程度なんです。9割はROM(Read Only Member)です。見ているだけの人が圧倒的に多い。

 だから、ネット上で炎上しても、世の中への影響はそれほど大きくない事もあります。そこははき違えない方がいいと思います。むしろネットの特異なところは、いいことも悪いことも、猛スピードで広がることと、そうやって伝えることはできても、受け入れてもらえるかどうかは別の話だということです。

---エキセントリックな批判は得てして匿名の場合が多いですね。

藤田: その点で、ソーシャルメディアが成熟しつつある中での、実名主義のFacebookの登場には期待しています。日本のマーケティングを変えるインフラになる可能性は大きいと言えます。実名ですから、発言の信頼性は上がります。リアルに近い、穏やかな社会が形成されることが望ましいですね。