藤田康人(株式会社インテグレート社長)「ソーシャルメディア時代にマーケティングの必勝法はあるのか」

話題の本『どう伝わったら、買いたくなるか』著者に聞く

 しかし、これでは漏れてしまう人たちがいます。そもそも自動車に興味がない人です。そういう人に、興味を持ってもらい、ほしがってもらうのが、デジタルメディアは苦手です。マスメディアのように、半ば強制的に広告を見せるのには適していないのです。

 瀬尾さんは今日、Webにつないだでしょう。そのとき、どんなバナー広告を見ましたか?

---いや、ちょっと覚えていません。

『どう伝わったら、買いたくなるか』
著者:藤田 康人
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藤田: そうですよね。だからこそ統合マーケティングが必要なのです。メディアとデバイスに応じて、コンテンツの仕立て方を変えて、すべてのメディアを使って、伝えたいことを伝わらせる必要があります。どんな人でも、バランスに差こそあれ、多くのメディアにマルチに接触しています。

 こう言うと、マスでの戦略をそのままデジタルとかソーシャルで展開すればいいという誤解をされることもあるのですが、それではうまくいきません。マスメディアでのマーケティングは、情報を浴びせ倒すようなやり方でした。しかし、デジタルやソーシャルでは、受け取る側が、情報選択の幅を持っています。伝えるだけでなく、伝わるようにする工夫が必要です。

『面倒くさい』というのが答えです

---「伝えたいことを伝わらせる」ということですが、今回の本のタイトルも、『どう伝わったら、買いたくなるか』で、『どう伝えたら~』ではありませんね。

藤田: 『伝える』と『伝わる』は全く違います。伝えるとは、コミュニケーションです。コミュニケーションというと、双方向というイメージがありますが、実は一方的。この商品を買ってくれ、この会社を好きになってくれという、伝えたい側の論理です。では、伝わるとは何かというと、パーセプションを重視したコミュニケーション。受け取る側の知覚、認知、理解を得ようという、情報を受け取る側に立ったものです。

---買ってほしい、好きになってほしい側、つまり企業が、受け取る側すなわち消費者のパーセプションを得るには、何が必要でしょうか。

藤田: コンテクスト(文脈)と、ストーリーです。人が、買いたくなったり好きになったりするのは、心が動くからです。そのメカニズムに沿ったコンテクストとストーリーを見い出す必要があります。男女の関係と同じです。好意を持ってもらおうと思ったら、気の利いた関係性を築くところから始めるでしょう。

---本ではさまざまな事例を挙げて方法論が語られています。それぞれを見ていくと大変おもしろいのですが、簡単な「勝利の方程式」はないようですね。

藤田: 残念ながら「面倒くさいですよ」というのが答えです(笑)。