犯人はなぜ与党を標的にしたのか
「ノルウエー連続テロ」の影に浮かぶ「ヨーロッパの人種主義」

佐藤 優 プロフィール
オスロでの爆弾テロ〔PHOTO〕gettyimages

 ブレイビクがイスラムを忌避するのならば、なぜモスクではなく、政府庁舎や与党・労働党を標的をしたのであろうかについて、合理的な説明ができなくてはならない。ブレイビクは、「国民に強烈なシグナルを送るためだった」と主張するが、どのようなシグナルを送ろうとしているのだろうか。さらにノルウエー国家が移民を受け入れるとどのような不都合があるのか。

歴史に学ぶ姿勢がないメディア

 この問題に関する日本や欧米の報道を読んでも、なぜこのような事件が起きたか解らない。キリスト教原理主義や移民排斥が理由と言われても、何故にこのような無差別テロが発生したかについての合理的説明にはならない。

 こういうときは、歴史に学ぶことが必要だ。ところがその視点がマスメディアには決定的に けている。本件に関する7月24日朝日新聞朝刊の社説を検討してみよう。冒頭、次の指摘をする。

〈 若者の自由な討論を流血によって砕き、政府の中枢機能を暴力で壊そうとした。許し難い暴挙である。

 北欧ノルウェーの小さな島で与党労働党の青年集会が開かれていた。警官姿の男が銃を乱射し、80人以上の若者らが犠牲になった。その2時間前には、首都オスロの官庁街で大きな爆発が起き、7人が死亡した。

 島で銃を乱射した32歳のノルウェー人男性が逮捕された。極右のキリスト教原理主義の信奉者だったとの見方もある。

 なぜこの豊かで平穏なイメージの国で悲劇が起きたのか。多くの日本人が驚きと戸惑いを覚えたことだろう。 〉

 今回の連続テロが政治的目的を持っていることは間違いない。キリスト教原理主義とか反イスラムという抽象的な言葉でこのテロの動機を説明することには無理がある。なぜならブレイビクは宗教的な釈明をまったくしていないからだ。

 朝日の社説は、〈 途上国からの難民や移民受け入れはその一例だ。寛容な政策を長年続けてきたが、受け入れに反発する声が次第に強まり、2年前の総選挙では移民の受け入れ規制を訴える右翼政党が大きく支持を伸ばした。 〉ことに原因を求めている。朝日新聞以外のマスメディアも移民排斥の右翼的傾向を原因にあげる。