患者にはとても言えない「病院の真実」前編

医者・看護師・事務員が明かす
週刊現代 プロフィール

 今回の取材でも、手術前にもらうほうがいいという医師もいたし、事前に受けとると手術がうまくいかなかった場合に負い目を感じるので、手術後のほうがいいという医師もいた。ただ、渡すのは医師が一人のときがいいというのは共通している。

 手術前に包むのは、いつにもまして「頑張って手術をしてほしい」という患者やその家族の切なる願いの表れだろうが、礼金にそうした効果はあるのだろうか。

「一切ありません。礼金を包んだとしても、何か特別なことはない。はっきりいって、医師は手術室に入ると礼金のことなど忘れています。頭にあるのは成功率を上げること。学内の評価も学会の評価もこれで決まるからです」(都内の総合病院外科医)

 では、礼金には何のメリットもないのか。

「医療行為そのものには影響はないといっていい。ただ、術後の回診で丁寧に声をかけるなどということはあります。お礼を渡した患者さんからすれば、医者と親近感ができ、安心できるという気持ちがあると思います」(前出・千葉県内の私立病院外科医)

 礼金を出さないと、手術で手抜きされるなどという心配はなさそうだ。

 ただ、複数の外科医からは、こんな本音も聞こえてきた。

「病院によっても違うかもしれませんが、外科医が手術をしても、その難しさや回数に応じたインセンティブというのがまったくありません。手術をしていない医師も、日に2~3件の手術をこなす私のような医師も、給料が同じというのはやりきれない気持ちになる。だから本音をいうと、患者さんから謝礼をもらったときには、救われたような気持ちになりますね」
(前出・都内の総合病院外科医)

ヘタな医者も若い医者もいる担当医・執刀医はどうやって決めてるの?

 手術の場合、患者の命を左右するといっても過言ではない執刀医。また、手術でなくとも、長いつきあいになる担当医が、どのような手順で決められているかは、気になるところ。

 だが、担当医や執刀医の決め方は、病院ごと、診療科ごとで大きく異なってくるというのが現状のようだ。都内の総合病院の医師は、次のように説明する。

「うちの病院の場合、まずは医師が外来で診察します。つまり、どの曜日に外来に来たかで担当医が決まるということです。特別な紹介がない限りは、機械的に担当医が割り振られていくシステムになっています」

 一方、慈恵医大病院の場合は、次のような流れになる。

「主治医は外来の段階で決まりますが、執刀医の決め方は、病院によって、あるいは同じ病院でも科によってだいぶ違う。

 うちの泌尿器科では、外来に来た患者さんがたまたま僕に当たったら、自分が手術まですべてやります。僕が忙しくて手術できない場合は、責任をもって別の医師を紹介する。ただ、外来で来た患者さんの病状によっては、希望を聞いている時間もなく手術日を決めなければいけない場合もある。ケースバイケースで執刀医が選ばれることになります」
(泌尿器科の三木健太医師)

 また、最近では、一人の医師が手術のすべての工程を行うということは少ない。チーム医療が主流になってきており、手術においても役割分担が決まっているというのだ。

「がんでも心臓でも脳でも、最初から終わりまで医師一人がすべて執刀するということはありません。胃がんや大腸がんでお腹を開けたり、心臓手術で胸部を開けたり閉じたりするのは、若手医師であることが多い。

 ただ、すべての工程において、真打ちの熟練医師が手術全体を指揮しているので、若手がメスを入れたからといって失敗することはまずない。腕の立つ医師は、最も難しい勝負どころでメスをふるうのです。また、治りやすく、簡単で基本的な手術は、研修医の練習用になったりすることも珍しくありません」(医療ジャーナリスト・吉原清児氏)

患者はこう値踏みされる危ない患者・難しい手術の考え方

「一日に複数の手術がある場合、その順番を決めるのは執刀医である医師の裁量に任されていますが、通常、大変な手術は朝イチでやることが多い。集中力が高いですから。大変な手術を後回しにするということは、まずないですね」