「単品食い」は、朝食とは呼べない!

【HBR会員誌2011年6月号「"食べ方"の新常識」より】

 みなさんの朝食の「内容」は、どのようなものだろうか。

 おにぎりやトーストを慌ただしく口に押し込むだけ、という単品のみの食事は、身体の末梢時計遺伝子に働きかける「朝食」としての意味をなさない、というのは女子栄養大学副学長・栄養学部教授香川靖雄先生。

「表3の通り、朝食の欠食率は、20代以降か和食であれば、ごはんに味噌汁、焼き魚に卵焼き、そして漬物などの副菜という和定食メニューが、末梢時計遺伝子を リセットするには最適の食事なのです。 こう言うと決まって『忙しい朝に、そんなに料理は作れない』とか『朝からそんなに食べてしまったら、太るのでは』 という反論がありますが、夕食のボリュームを減らし、準備の時間を短縮した分、早めに食べて早く寝て、その分早起きすれば、問題はありません。

 それどころか、夜遅くの食事は血糖値が高くなりやすく、余剰エネルギーが脂肪に変わりやすいのに対し、朝食は日中の活動量をアップさせるほか、身体にいい影響をたくさん及ぼすわけですから、一日のメインの(ボリューム・栄養バランスに優れている)食事を夕食から朝食へシフトするだけで、同じ摂取カロリーでも、太りにくく健康的な生活が送れるのです。ぜひ大胆な意識改革をお勧めします」(香川先生)

(中略)

「平成20年には年齢にかかわらず、女性の朝食欠食率が増加。これらは、単に忙しく働いているから朝食を食べる時間が取れないというだけでなく、美容(ダイエット)に関連して、総摂取カロリーを 減らそうと、あえて朝食を抜く女性が増えていることによるのではないかと考えられます。しかし朝食抜きは、ダイエットとは真逆の効果しかない「単品食い」は、朝食とは呼べないとは前述しました。

 でも、たとえ朝食を摂っているからといって、まだ安心することはできません。朝食を摂っている人を詳しく調べると、主食(白米やパンなど)・主菜(肉や魚)・副菜(野菜・果物・海藻類など)・汁ものが揃った朝食を摂る人は、わずか9%。多くは、トーストとコーヒー、おにぎりひとつかご飯に味噌汁程度の簡便なものです。 

 しかし、たんぱく質が不足した朝食では、内臓の時計遺伝子(末梢時計遺伝子)をリセットする ことはできません。せっかく朝食を摂っても、体内リズムが乱れたままで一日をスタートさせるわけですから、太りやすい体質からの脱却ができていないということになってしまいます。 

 アメリカ式のブレックファーストを思い浮かべてみてください。トーストやパンケーキに、卵料理、ハムやソーセージの肉料理、 オレンジジュースと牛乳。これは各種の栄養素をまんべんなく摂ることができる理想的な朝食です」

【取材協力者プロフィール】
女子栄養大学副学長・栄養学部教授
香川靖雄先生
東京大学医学部医学科卒業。聖路加国際病院、東大医学部助手、信州大学医学部教授、米国コーネル大学客員教授、自治医科大学教授などを経て現在に至る。自治 医科大学名誉教授。専門は生化学、分子生物学、人体栄養学。女子栄養大学教授として教鞭を執る他、テレビや新聞・雑誌、講演等でも活躍。著書に『老化と生活習慣』(岩波書店)、『香川靖雄教授のやさしい栄養学』(女子栄養大学出版部)など多数。『時間栄養学〜時計遺伝子と食事のリズム』(女子栄養大学出版部)の編著、および監修も。

取材・文/若尾淳子
引用:HBR会員誌2011年6月号 p34-35