京都吉兆三代目、徳岡邦夫さん [前編]

国内・海外のVIPから愛される"究極のサービス哲学"とは?

 今回は、京都吉兆の総料理長であり、世界的な料理人として大活躍をされている徳岡邦夫さんです。今年5月、シンガポールのセントーサ島に、徳岡さんがプロデュースされた 「kunio tokuoka」がオープン、また、徳岡邦夫さんの現時点までの集大成『 (英文版) 京都吉兆 - Kitcho: Japan's Ultimate Dining Experience』(講談社インターナショナル)も7月に発売されました。

 この本は、吉兆創業者の湯木貞一氏の世界観を、徳岡さん流にアレンジした、とても美しい一冊です。日本の食文化を世界に発信する料理人として活躍する様子は、NHKの「プロフェッショナル」でも紹介されました。

嵐山にマハラジャ

内藤:徳岡さんは東京サミットなど国際的な場で、日本を代表する料理人として抜擢されたり、京都吉兆の経営改革に独自のビジネスセンスで手腕を発揮していますね。長い間、京都吉兆は、世界のVIPをはじめ、多くの人に愛され続けています。しかし一方で、長く続く景気低迷の中、消えていった高級料亭は少なくありません。老舗料亭が生き残る条件とはなんでしょうか?

とくおか・くにお京都吉兆嵐山本店。総料理長 1960年生まれ。「吉兆」の創業者・湯木貞一氏の孫にあたる。
15歳のときに京都吉兆嵐山本店で修行を始める。
1995年から、京都嵐山吉兆の料理長として現場を指揮している。

徳岡:時代に応じて状況に適応していくことが大事です。その結果、変わるべきところは、変わらなければいけないと思っています。

内藤:変わることが目的ではなく、時代を見て「変わるべきときは変わる」ということですね。

徳岡:そうですね。店では、お客様の反応によって、どんどん内容を変えています。

内藤:完全なオーダーメイドのようなものですね。私はまだ、嵐山店さんへうかがったことがないのですが、ちなみに、客単価はおいくらでしょうか?

徳岡:飲み物込みで、平均単価53,000円くらいです。

内藤:京都吉兆さんは嵐山以外にもいくつもお店をお持ちです。店によって値段が違うのでしょうか?

徳岡:そうですね、お昼は5,000円からとかいろいろです。同じ吉兆でも、ロケーションが違うと、また内容も値段も違ってきます。

内藤:嵐山の吉兆さんには過去、たくさんの文化人やVIPが訪れていますよね。なかなか僕には想像もつかない部分があるのですが(笑)、印象的なエピソードはありますか?

徳岡:嵐山のお店が、各国の首脳クラスが集まる世界的に有名な国際会議の場として選ばれたときは、さすがにものすごく緊張しました。

 なぜ選ばれたかというと、間に入った方が、「今、日本が海外のVIPに伝えなくてはならないのは、日本の食文化なんだ。だから、会場は京都吉兆にしたいんだよ」と周囲を熱く説得してくれたそうです。これは大変だと思いましたが、もちろんお引き受けしました。

内藤:警備がたいへんそうですね。

徳岡:嵐山店の前方には山があります。警備の人から言わせると、ライフルで狙いやすいロケーションなんですって(苦笑)。一ヵ月以上前から、いたる所を警備員さんが泊り込みで警備してくれたんです。

 「もし店の中に見慣れない箱があったら絶対さわらないで通報するように! 爆発するかもしれないので」と言われたときは、さすがに緊張がピークになりましたよ(笑)。

内藤:徳岡さんがいままでお迎えしたお客様の中には、驚くようなVIPの方もいらっしゃたんでしょうね。

徳岡:インドのマハラジャが大勢いらしたときは圧巻でした。目の前の川で舟に乗るから、そこに料理やらシャンパンをケータリングしてくれといわれました。

 何隻もの小舟の上で、民族衣装をまとったマハラジャたちが、銀色のワインクーラーにシャンパン入れて飲んでる図は不思議な光景でした。

 たまたま取材に来ていた「NewYorkTimes」の記者がそれを見て、「ここはどこなんだ!」と驚きの声を上げてました(笑)。

内藤:まさか嵐山で、そんな光景が見られるなんて思わなかったのでしょうね。

徳岡:出張料理をした際のエピソードでは、ウクライナの大富豪が、6ヘクタールの日本庭園をつくり、そのお披露目で世界中から友達が集まるから、料理しに来てくれと頼まれたこともありました。テーブル、座布団からスタッフまで、ぜんぶ京都から持っていきましたよ(笑)。空港でのお出迎えも予想外のVIP待遇で、世界のお金持ちはすごい! と思いましたね。

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