ヨーロッパ各国のサッカー中継を見ていると、ここ数年でずいぶんと変わってきたなあと感じます。サッカーのスタイルが変わってきた、と言いたいわけではありません。ユニホームの胸や背中にプリントされたスポンサーや、ピッチを取り囲む広告に、中国や韓国をはじめとするアジア企業の出資が増えているのです。
BRICsという造語が浸透して久しいですが、この4月からは「BRICS」となりました。ブラジル、ロシア、インド、中国に、南アフリカが加わったのです。
経済成長の著しいこうした国は、スポーツ界においても存在感を発揮しています。
2010年のサッカーワールドカップは、ご存じのように南アフリカがホストカントリーを務めました。アフリカ大陸初の大会は治安や国内情勢、さらにはインフラなどへの不安が囁かれていましたが、大きな混乱もなくフィナーレを迎えました。私も現地で取材をしましたが、耳障りに感じられたブブゼラの音色も、いまとなっては懐かしさを呼び起こします。
2014年に行なわれる次回大会は、ブラジルが開催国に選ばれました。同年の冬季オリンピックは、ロシアのソチが舞台となります。また、2年後の夏季オリンピックは、リオ・デ・ジャネイロ(ブラジル)が選ばれました。
オリンピックとワールドカップだけではありません。2013年の世界陸上はモスクワ、15年の同大会は北京での開催が決まっています。"学生スポーツのオリンピック"と呼ばれるユニバーシアード大会も、2011年は中国の深センで、2013年はカザン(ロシア)が開催権を勝ち取りました。
韓国も勢いがあります。2018年の冬季オリンピックで平昌(ピョンチャン)が開催地に選ばれただけでなく、様々な国際大会の招致に成功しています。今夏に行なわれる世界陸上がテグで行なわれることは、皆さんもご存じのことでしょう。
国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)の視線が、BRICSや韓国に向いているのは明らかです。いまはまだ国際大会の開催にこぎつけていないインドも、遠からず脚光を浴びてくるでしょう。何しろ、インドの人口は中国に次いで世界第2位です。国家としてのポテンシャルは相当に大きなものがあり、市場価値はきわめて高い。
FCバルセロナやレアル・マドリード(ともにスペイン)、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)といったヨーロッパのビッグクラブも、中国やインド、タイなどの東南アジアへ熱い視線を注いでいます。
これらのチームは数年前までは、プレシーズンにあたる7月に続々と来日したものです。ところが、今年は1チームも来日しません。マーケットとしての魅力が、薄れてきているからだと言わざるを得ません。