3月11日14時46分、マグニチュード9.0の大地震が発生。夕方には自衛隊が被災地に入り、救援活動を始めた。その中に女性の姿があるのをご存じだろうか。今も、彼女たちは被災者一人一人に声をかけ続けている。震災から1ヵ月が過ぎた4月13日、私たちは被災地に入り、女性自衛官の救援活動に密着した。
撮影/嘉納愛夏 取材・文/川﨑利江子 構成/菅野知子
「コーンポタージュをどうぞ」「化粧水、自由に使ってくださいね」「彼氏って漁師なんだ、もう漁に出てるの? すごいね」
宮城県・石巻湾に停泊する輸送艦「くにさき」。船の中に設置されたお風呂にやって来た女子高生に明るく話しかけるのは、前川味加さんだ。音楽隊から志願して被災地にやって来た。
津波で家が流され、生活基盤のすべてを失った被災者のために、陸海空の自衛隊は給水、食事、入浴など生活支援を行っている。取材で訪れた4月中旬は、飲み水、食料、衣類、タオルなどの供給は安定し始めたが、水道やガスといったライフラインが断たれ、入浴や洗濯は難しい状況が続いていた。
「2週間近くお風呂に入ることができなかったという人も多いので、できるだけゆっくりと、楽しく過ごしていただけるように工夫しています」艦内は男湯と女湯の浴槽、シャワールーム、床には毛布が敷きつめられ、くつろげるスペースになっている。「浴槽は隊員みんなでつくったんですよ。パレットで組み立て、ビニールシートをかぶせて、お湯をはりました」
洗濯のサービスや携帯電話の充電、毛布や衣類、食料など生活必需品も持ち帰ることができる。「最初の頃、生理用品は自分たちで持ってきました。救援物資が届くのを待っていられないので」と自腹で用意したという。
お風呂上がりには「どんな状況ですか。水や電気はどうなっていますか」とたずねながら、今必要なものを探るのも大事な任務だ。〝話すこと〟は救援活動につながる。しかし、入隊1年目の海上自衛官、五十嵐妹子さん(19歳)は会話の難しさを実感している。
石巻市の石ノ森萬画館の対岸に設置されたお風呂でのことだ。
「被災者の方は明るく笑って話されるんです。どこの家が流されたとか、誰々が死んじゃったとか。思わず一緒に笑ってしまってハッとして、とても後悔しました。今は表情一つにも気をつけています」
4月19日からは岩手県大槌町、釜石市、陸前高田市などの避難所で、女性自衛官による〝お話伺い隊〟の活動が始まった。
陸上自衛隊第9師団に所属する、看護師やカウンセラーの資格をもった隊員が被災者の話を聞き、少しでも元気になってもらおうと、今も続いている。