「全身麻痺」で話すことができない交通事故被害者が夫に送り続ける「愛の言葉」 

感動ノンフィクション『巻子の言霊』主人公と筆者の対談

松尾 あれは、巻子から私に対する、事故以来、初めてのメッセ―ジでした。あの言葉を見たとき、私は全身が身震いしたのを今でも覚えています。それは、ただ「嬉しい」という感情ではなく、遠い暗闇の世界から一本の細い糸を通してやっとたどり着いたメッセージであり、彼女の強烈なエネルギーから噴射された、まさに「言霊」でした。

柳原 読者の方から寄せられた感想メッセージの中から、ひとつ選んでご紹介したいと思います。これは、30代・女性の方からいただきました。少し長くなりますが、引用させていただきます。

< 本の表紙を見た時、巻子さんのお顔が、母の顔と重なり涙が溢れ出て来まし
た。それを隠そうと、主人と娘に「ママのママに似ているね」と、おどけて見せたりしました。

 本をリビングに置き、なんだか読むのが怖くて読み出すことが出来ませんでした。今まで封印していた気持ちが溢れ出すのが怖かったのだと思います。

 数ページ読み、涙が溢れ、本を閉じ、数ページ読み、涙が溢れて、また本を閉じ・・・。途中、電話に涙声で出てしまうほど入り込んでしまいました。

 私の母も交通事故被害者です。辛かった過去を封印し、忘れよう忘れようとしていたさまざまな思いが、母のことと重なりました。

 損保会社、そして損保側の弁護士とのやりとりは、本当に、憤りを覚えるほど辛く厳しい日々でした。

 私は現実を受け止めるのに3年はかかったかと思います。交通事故で植物状態になった母でしたが、それでも治ると信じていました。なので、頑張れたと思います。

 会話補助機を用いてご主人の幸郎さんが巻子さんと会話が出来るのは、とっても羨ましく思いました。

 私も未だに、母と話したく、母が何を考えていたのか知りたいです。

 加害者への思いも、苦しいほどよくわかりました。私も、母の姿を見て謝ってもらいたいと思い、一度だけ調書に書かれていた住所をたよりに加害者の自宅へ行った事がありました。

 留守でした・・・。今、振り返れば留守でよかったかなと思います。私が加害者になっていたかも知れません。

 松尾さんご夫妻が、1日でも長く会話が出来ることを願っています。

 とても素敵なご夫婦だからこそ悔しいですね。

 この感想文を打ちながら、涙がボロボロと出てしまい、横にいた娘が「ママ大丈夫?」と、言いながら背中をさすってくれました。

 母も天国から私の姿を見て安心していると思います。

 娘に「もう少しお姉さんになったら、この本を読んでね。ママも同じような経験をしたんだよ」と、言いました。

 著者の柳原さん、交通事故被害者がどれだけ苦しい思いをして生きているのかを活字にして下さったことに感謝します。 >