以前、当連載にてFoursquareという位置情報サービスについてご紹介をしました。位置情報サービスはレストラン、カフェ等の「場所」への「チェックイン」機能を重視してきました。
しかし、チェックインという機能が本質的に伝えようとしていたこと、それは「カフェを訪れた」という「自分が現在取っている行為」なのです。
その発想からヒントを得て、現在米国では新しいマーケットが生まれつつあります。それが、本日ご紹介する「エンターテイメントチェックイン」という新たなサービス領域です。それは自分が楽しむスポーツ、テレビ/映画鑑賞、読書等々、人の趣味の領域と触れ合うコミュニケーションツールなのです。
今まではパーソナルな経験で完結してしまったこうした人の趣味や行動をパブリックに公開することで、その行為自体に付加価値が生まれたのです。
本日は、趣味×チェックイン機能で化学反応を起こす急成長中のTuner Fish, Miso, Philo, Get Glue等のサービスを参考にして、それらが世界に与えるインパクトを探ってみたいと思います。
1. 趣味をきっかけに今まで出会えなかった人々とリアルタイムで繋がれる
あなたは今まで面識のなかった相手でも、趣味を共有していることで話が盛り上がった経験はないでしょうか? そういった刺激的な出会いが日々訪れることは非常に嬉しいことだと思います。しかし、そういった出会いが従来「日常的」には起こらなかった理由、それは「お互いの趣味が可視化されていなかったから」だと思います。
エンターテインメント分野でのチェックイン機能はその壁を壊す可能性を持っています。デジタル上でお互いの趣味をチェックイン機能で気軽に公開し合うことで、出会いはカジュアルに広がっていきます。お互いの趣味が見えることで、コミュニケーションのきっかけが生まれるのです。
今後は同じ本を読んでいる人同士で、集まってカフェで読書会を開く、そんな集まりがどんどん増えていくと思います。
2. ユーザーのコンテンツエクスペリエンスが豊かになる
TV視聴はUSTREAMとTwitterが連動することで劇的に変化しました。同様に、エンターテイメント全体の消費の仕方も大幅に変わりつつあります。
ソーシャルの力、と言ってしまえば在り来たりな議論ですが、ソーシャルメディアの本質的な価値は「同じ時間に同じものを見ている安心感」だと自分は捉えています。
TV番組へのチェックイン(今この番組を見ているよ!という話題からオーディエンス同士で盛り上がる機能)に特化したアプリケーションのPhiloやTunerFishも
あれば、Get Glueという「エンターテインメント領域全体」をチェックインの対象とするサービスも存在します。例えば、読書をする際に同アプリでチェックインを行えば、同じ本を読んでいる世界中の人々とリアルタイムでその本にまつわるコミュニケーションが取れます。
デジタル上のコミュニケーションでも、同じ時間にそれを読んでいる、まさにそのことが人と人が出会う接点となり、コンテンツから得られる楽しみはどんどん豊かになっていると私は考えています。
3. コンテンツ提供側とオーディエンスとの関係性も変わることで、そこにビジネスチャンスが生まれる
ユーザーの間で評判になっている番組や、多くのオーディエンスが集まる時間帯が可視化されること、それはコンテンツ提供側にも恩恵があります。もちろんTwitterやFacebookを通してある程度ユーザーの行動は透明化してきているものの、エンターテイメントチェックインによって情報の豊富さはさらに高まっていきます。
何故ならユーザーの評価を参考に、コンテンツ提供側はユーザーエクスペリエンスが高まるようなコンテンツを常に配信出来るよう具体的に努力が出来るようになるからです。
さらに、ユーザーの評価に時間軸が加わると、特定の時間(ユーザーのチェックイン、コメント量が最大値を到達する時間帯等)を対象にした特典や特別コンテンツも提供出来るかもしれません。今まで見えなかったことが見えるようになる、そこには大きなビジネスチャンスも隠れているのです。
エンターテイメントチェックイン分野は2010年後半、さらにスピードアップしていくはずです。8月20日には*FacebookがHot Potatoを買収したように、もちろん業界の巨人たちも黙ってはいません。今まで当たり前だった行動を可視化することで、人々が楽しみながら、カジュアルに繋がることが可能になってくると私は考えています。
Twitterが人間の多様性や可能性を再定義したように、今後はTwitterを超えるサービスが人間の力をもう一度提示してくれるはずです。ウェブ業界はデバイス、その上で動くサービス共に、大変面白い時代を迎えています。私を含め、日本からもこの流れを掴むスタートアップが生まれることは非常に重要だと真剣に感じています。
2010年9月からもスタートアップの仕掛けは勢いを増しそうです。