【HBR会員誌2011年4.5月合併号「医療・検査・判定の常識・非常識トピックス」より】
加齢とともに血圧やコレステロール値が高くなるのは自然な成り行き。
血糖値、血圧、コレステロール値、中性脂肪など、日本にはたくさんの正常値や標準値があるが、実は、基準値は年齢を考慮していない。だから患者は増え続ける!?
「20歳の若者から80歳の高齢者まで、血圧の正常値は同じ。昔は、年齢プラス90だった。年齢を加味していた分だけ、実は昔のほうが科学的だったかもしれませんね」と語るのは、医師・ジャーナリスト富家 孝先生。
「現在、コレステロールの正常値は150~220mg/dlで、日本には2300万人の高コレステロール血症の患者さんがいると推定されますが、正常値を240未満にすると、患者さんは1300万人減少します。患者が減り、薬をのむ人が減ると困るのは、医者と製薬会社ですね。加齢とともに血圧やコレステロール値も高くなるのが普通です。年齢を考えない正常値は、いたずらに患者を増やし、薬を売るための手段だと言われても仕方がないでしょう」と言うのは新渡戸文化短期大学学長 中原英臣先生。
(中略)
高血圧の治療薬の目的は、「血圧を下げること」で、確かにその効果は証明され、副作用についても重大なものは認められていない。素晴らしい薬だが、それが長寿に結びつくのだろうか?
1985年に英国の医学雑誌に発表された研究によると、長い年月にわたり血圧の薬をのみ続けると、心筋梗塞や自殺、事故などで死亡する割合が高いことが明らかになった。
「もとから検査数値がいい人ほど長生きするのは事実ですが、薬で検査数値を下げれば長生きできる、と勘違いしている人が多いような気がします。私たちの最終ゴールは健康長寿です。生活習慣を改善せずに薬に頼って検査数値を正常にしても、寿命が延びるとは限りません」と言うのは、新潟大学大学院医歯学総合研究科 予防医療学分野教授岡田正彦先生。
取材・文/宇山恵子
引用:HBR会員誌2011年4.5月合併号p21-22