●流山に新たなホットスポットが
●都内の高線量地域
●徹底調査!名古屋、大阪はなぜ高いのか
●原発周辺地域は総じて高い
●東北の現実
「柏市(千葉県)に住む者ですが、本当に避難したほうが良いのでしょうか?」
「文京区(東京都)の幼稚園に子供を通わせる母親です。園長に頼んでも園庭の線量を測ってくれない。調べてくれませんか?」
「軽井沢(長野県)のもっと具体的な測定値が知りたいです」
本誌前号が発売されてからというもの、編集部に読者からの電話が殺到した。ごく一部は「なぜ危険を煽るんだ!」という抗議だったが、ほとんどの電話から「本当のことをもっと知りたい」という切実な思いが伝わってきた。
それらの不安はすべて、政府・行政の無策、無責任が原因である。
政府の掲げる「年間20ミリシーベルト、毎時3・8マイクロシーベルト」という被曝限度量がいかにバカげているか、中部大学の武田邦彦教授が語る。
「ICRP(国際放射線防護委員会)が定めた年間1ミリシーベルトにしても、あまり言われていませんが、外部被曝と内部被曝を合計した数値です。国、各省庁が一致団結して、食物をきっちり検査する態勢を取っていれば、内部被曝はずいぶん減らせる。でも実情は、国はいま国民に積極的に放射性物質を含んだ食物を食べさせようとしているわけです。ですから、ある程度の内部被曝を計算せざるをえない。
そうすると、毎時の限度量は3・8の20分の1、0・19でも、まだ多いということになる。様々な要因を勘案した上で、0・11マイクロシーベルト/時が、我々が浴びても安全だと言える基準だと私は提言しています」
3・8マイクロシーベルト/時という数値の欺瞞については、自治体ですら認め始めている。6月22日、千葉県野田市は被曝限度を「年間1ミリシーベルト、毎時0・19マイクロシーベルト」と定めた。国の基準ではなく、ICRPの基準を独自に採用したのだ。
前出の文京区に住む母親は本誌にこう語った。
「野田市長の判断は素晴らしいと思う。3・8マイクロシーベルト/時の安全基準なんて、自分の子供には絶対に当てはめたくない。母親なら皆、思いは同じではないでしょうか」
そもそも「低線量被曝なら人体に影響はない」という「安全デマ」を最初に流したのは、枝野幸男官房長官だった。福島第一原発から漏れた放射線の量を発表した後に、毎度、「ちなみにCTスキャン1回分の5分の1の量です」などとつけ加えていた。
日本大学専任講師の野口邦和氏(放射線防護学)がこう批判する。
「医療被曝は専門知識を持った医師が、『被曝させて将来ガンになる確率が上がるデメリット』と、『目の前にある病気を治療するメリット』を天秤にかけ、メリットがデメリットを十分に上回ると判断して行われている。医療被曝と原発事故による被曝を比較することが、そもそもおかしいのです。なぜなら、事故による被曝はデメリットしかないからです。
官房長官がああいうことを言ったため、患者が放射線を使用する検査を嫌がるケースも出て、医療現場に混乱が起きている。放射線防護学会のメーリングリストでは、『学会として抗議すべきではないか』という声が飛び交っています」
その場しのぎの安全デマの集積により、もはや国民は政府の言うことを誰も信じなくなった。3・8マイクロシーベルト/時という被曝限度量を安心して受け入れる人はいない。