ヤクルト由規 日本球界最速「162㎞/hは自分にしか投げられない」

"号泣王子" "マメ規"と呼ばれた男が、日本人最速158㎞/hを連発して勝ち星量産
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「自分の持っている力を最大限ボールに伝えることができるようになってきたから158㎞/hという数字も出た。ただ、ブルペンでの投球と比べたら、試合では7割の力しか出せていない」

プロ二年目の苦悩

 由規は仙台育英高校時代に、夏の甲子園史上最速となる155㎞/hを記録。ドラフトでは5球団の競合の末、ヤクルトが獲得した。ルーキーイヤーの '08年はファームで最多勝をあげ、8月に満を持して一軍にあがると、二度目の登板となった巨人戦で初勝利を飾る。

 シーズン最後の登板では完投ペースの快投を見せたが新人王の資格を翌年に残すために、あえて降板。ルーキーながら「完投はいつでもできる」と自信を深めていた。

 順調なプロ野球人生の船出だった。しかし、翌年には挫折が訪れる。

「一年目は何も考えず、失敗も恐れずにがむしゃらにできた。二年目になってローテーションに入ると、妙な責任感みたいなものを抱えて、考えすぎてしまっていたのかもしれない」

 思うようなピッチングができなかった。さらに、シーズン中に四度も選手登録を抹消されてしまう。原因は、右手の人差し指と中指に突然できるようになった"マメ"である。一度マメがつぶれてしまうと数週間は登板ができない。野球人生で初めての経験だった―。

 病院に行って医師に相談しても特効薬はなく、一度つぶれれば完治するまで待つしかない。細心の注意を払ってケアしても、多汗症のため指先の皮膚が弱く、再びマメができてしまう。打たれて二軍に落ちるのなら納得がいく。

 コンディション調整に失敗したのならば、反省材料や改善点を見つけることもできる。だが、これといった予防策がないマメによる登録抹消は単に「恥」でしかなかった。

「自分が不甲斐なくて悔しかった。ファンにも『またか』って思われたでしょうけど、それ以上に自分が『またか』って感じだった」

 たかがマメ、されどマメ―。

 再発を気にするあまり、投球時に集中力が欠けてしまい、制球をも乱してしまう。新人王を狙ったはずの二年目シーズンは5勝10敗に終わった。

「良いピッチングをすることはもちろん大事なんですが、調子が悪くても長いイニングを投げることで勝ちを拾えることもある。そのためにはマメの克服が何より重要で、このまま同じことを繰り返していたら、この世界にはいられなくなる。何かを変えなければいけないと思って臨んだ三年目のシーズンでした」