[取材・文:柳川悠二(ノンフィクションライター)]
杜の都・仙台で芽吹き、東京で養分を蓄えた蕾が、今ようやく花開こうとしているのかもしれない。
東京ヤクルトスワローズの由規(よしのり・20)は、7月29日の広島戦(神宮)で、日本人投手として最速タイとなる158㎞/hを記録、プロ入り初完投も遂げた。続けざまに初完封した8月5日の中日戦(神宮)、同月12日の巨人戦(神宮)と、158㎞/hを連発して3連勝。
一皮むけた由規はここまで8勝6敗(8月17日現在)の活躍で、下位に低迷していたチームを浮上させる起爆剤となっている。
初完投した日は、投じた86球のストレートのうち、実に64球が150㎞/hオーバーだった。一試合でこれほど速球を多投できるスタミナを持った投手は球界全体を見渡してもそうはいない。また、ストレートの球速が増したことで、もう一つの武器であるスライダーがより活きてくる。直球に意識が向いた相手打者を、変化球で仕留める場面も増えてきた。
「ストレートがタレない(ボールがホームベース付近で失速して落ちない)ようになって、理想の形に近づいてきていると思います。これまでは思いっきり腕が振れるようなフォームをずっと探してきました。それに加えて、僕の球速を活かすためには細かなコントロールに気を配るよりも、むしろ"だいたい"な感じで投げ込んでいくほうが大事だと最近ようやく気付いたんです」
ヤクルトの投手コーチ・荒木大輔も由規の成長を認める。