田原 堀江さんこんばんわ。

堀江 よろしくお願いします。
田原 どうぞよろしくお願いします。
堀江 (上着を脱いだ田原氏を見て)あ、Tシャツになっちゃった。
田原 部屋が熱いからね。
堀江 ハハハハ。
田原 堀江さんね、僕もツイッターとかね、あるいはブログとかやっているんです。でもね、ネットに書いてもそれ自体は商売にならないですね。これはほかの人に聞いてもそうですね。でもボランティアじゃプロは育ちません。そんな中、堀江さんは商売になっている。なんでなるんですか。
堀江 それは工夫しているからじゃないですかね。
田原 あんまり聞くと、商売の手の内を明かすのはよくないかもしれないけれど。
堀江 いや全然。どんどん、僕は市場がむしろ広がっていったほうが興味を持つ人たちが増えて・・・。

田原 メールマガジンは有料の会員が何人ぐらい?
堀江 まあ今数千人です。まだ一万人いかないぐらいですけど、まあでも数千人は集まりましたね。
田原 で、月いくらですか。
堀江 月840円のメルマガで。
田原 すごいじゃない!
堀江 まあそうですね。まだ雑誌の規模にはいかないですけど。
田原 だけども、ひとりあたり1年で約1万円だよね。少なくとも年間に数千万ですね。これで十分食えるんだ。
堀江 「食える」という意味では全然食えますけど。
田原 もっとも堀江さん、十分カネがあるからな。
堀江 いやいや、カネはなくなりました。208億円払いましたから。もう本当になくなったんです。
メールマガジンはどうすれば成功するか
田原 堀江さんはかつて5000億円持ってたんだからね。
堀江 だからそれはバーチャルマネーですから。全部なくなりました。ホントひどい話ですから。
田原 それで、今は数千万円入ってくるわけね。
堀江 一応、フローで入るようになりました。それはいくつか工夫をしているからですよ。
最初メールマガジンを始めたときって、当然そんなには(会員は)いないんです。いつも僕の本を買っていただいている方とかそういう方々に最初に会員になっていただいたんですけど、その後はいろいろやり方を変えたんですよ。まず一つはコンテンツをどんどん充実させていくことです。
田原 え?
堀江 コンテンツです。コンテンツを充実させていくっていうと、例えば雑誌の人たちが考えるやり方っていうのは、もともと紙の雑誌の発想があるせいか、フィードバックにやっぱり時間がかかるでしょう。雑誌の場合、どんどん誌面を変えていくにしたって、毎週、読者の希望をいれて誌面を変えるのって難しくないですか?
田原 うん。それとまあ双方向性じゃないね、完全に。一方通行で・・・。
堀江 でも雑誌には双方向性の機能ってあったわけですよ。
例えば新聞だったら投書欄だったり、『週刊少年ジャンプ』だったらジャンプ放送局という投稿コーナーだったり、読者参加ができますよね。常連の投稿者である「葉書職人」みたいな人がいたり・・・。ラジオとかでもそういうのあります。読者の方とかリスナーの人たちが投稿するっていうのがある。そういう人たちって必ず買ってくれて、すごいリピーターになりやすいじゃないですか。
ぼくも、そういうコンテンツを始めてみようかって思っていたら、結構質問がきた。質問に答えるっていうのは、僕からしてみたらコンサルティングなんですね。
田原 なるほど。
堀江 コンサルティングってちょっとやっていたわけですよ、いろんなところで。
田原 かつてはね。
堀江 今もやっているんです。個別で何十万円とか何百万円とかでやるコンサルティングってあるわけです。
それをネットでやったらどうなるだろうってことで、トライアルとして昔、ブログで一回三万円の有料コンサルティングをやってみたら、結構来たわけです。(料金の)決済の仕組みとかはあんまりよくなかったんですけど、かなり来ていた。
そこでちょっと考えたんですよ。「月840円のコンテンツの中で、みんなに見られるという前提でQ&Aをやってみたら面白いんじゃないか」と。そうしたらそれがまず当たったんですね。それが評判になって2000~3000人増えたんですよ。
で、さらに、ツイッターってフォロワーがすごいいるじゃないですか、50万人とかいるわけです。その50万人のフォロワーの人たちにどうやってアプローチするかって考えたんです。50万人の人たちの中に、「メルマガ取りました」とつぶやいてくれたり、メルマガの感想を書いてくれたりする人がいる。僕がそれをそのままリツイートしていたら、それも結構宣伝になった。それでまたさらに増えていった。
コンテンツもどんどんフィードバックもするようにしました。例えば、僕が一週間何をしていたのか知りたいっていう要望があったので、「じゃあそれは日記を書きましょうか」という話になって始めた。要は僕はうまいもんを食べに行ったりもするし、いろんな人たちと会う。日記に、そういう話を入れるようにしたんです。
田原 そんなんで有料の会員できるのかな?
堀江 新聞のコンテンツでも、「首相の一日」とかあるじゃないですか(笑)。結構、日記のコンテンツってないですか? 雑誌を見ていたら、有名人の食事日記みたいなのがあるでしょう。
田原 ありますね。
堀江 「ちょっと脂肪分摂りすぎですね」とか栄養士の人たちが書いているコンテンツって読みません?
田原 いやあるけれど、週刊誌は、結局はヌードで売っているんだから、後の記事は売れ行きにはたいした影響はないんだ。
堀江 そんなことないですよ(笑)。僕だって必ず見たくて買っている雑誌とかありますよ。
例えば『週刊プレイボーイ』を毎週買っていたんですけど、なんで買っていたかっていったら、リリー・フランキーさんのエロ人生相談が面白いんです。それが楽しみで買っていたくらいですから。
そういうQ&Aのコンテンツも僕はすごい好きだし、誰か特定の人、僕に興味がある人だったら、僕が何をしたとか、僕が何を食べたっていうことに結構興味があるらしい。
昔、講談社の『大人の週末』っていう雑誌で毎月、僕は何を食べたかっていう連載をしていたんです。もう打ち切りになったんですけど、それとかも結構一部の人たちに惜しまれていて、その人達のために今はメルマガで連載をしています。
田原 やっているわけですか。
堀江 はい。何を食って、どこのメシがおいしいとかっていうのを、URL付きで入れておく。すると、それを見てお店に「メルマガ見て来ました」みたいにして行く人が、ある程度いる。
小説「拝金」はフィクションか
田原 堀江さんがすごいところはね、堀江さんがやることはみんな商売になっちゃうのね。
それで、堀江さんの小説『拝金』を読ませてもらったんだけど、一番僕が分からなかったのは、あの中で書いているけれど、もともとライブドアのスタートライン、要するにコンピュータのゲームソフトを、それまではみんな有料だったのを、堀江さんのところは無料にした、それはなぜですか?
堀江 ん?
田原 そう書いてある、小説には。
堀江 あれはフィクションなんです。
僕のところの話というよりは、いろんな人たちの話、聞いた話、IT業界の話をすべて凝縮しているんです。あれはライブドアの話じゃないじゃないんですよ。嘘とかじゃなくて、小説なんです。作り話ですから。
田原 ああ、堀江さんのところがゲームソフトを無料にしたわけじゃないわけね。
堀江 僕らも無料でやっていましたけど、あのビジネスモデルで一番最初に成功したのはモバゲータウンっていうところなんです。そのあとグリーっていうところが成功して。で、ミクシィとかもやっている。『拝金』のあの話で一番下敷きにしたのはグリーなんです。
グリーって最初はソーシャル・ネットワーキングの会社だったんですよ。5年ぐらい前に創業しているんですけども、最初の2年ぐらいはなかなか鳴かず飛ばずだったんですよね。後発のミクシィにやられちゃって、ミクシィのほうは稼ぐようになったんですけど最初は伸び悩んでいた。ところが、グリーは途中で、リクルートとKDDIに出資させて、携帯向けの無料ゲームをやったらそれが大当たりした。
田原 なんで当たったんですか。
堀江 それはやっぱりタイミングが良かったんでしょうね。
田原 ゲームが面白いわけじゃないわけ?
堀江 ゲームは結構やってみるとはまるらしいんです。でも、要は昔のゲームの焼き直しみたいなものです。それほど新しくはない。
そうしたゲームも昔は有料で開発費もかけなきゃいけなかったんだけど、今だったら技術も発達してきているから、無料で作れるわけですよ、ああいう簡単なゲームだったら。
で、無料で作れてたくさんの人に配信して、それで途中で有料アイテムで課金していくみたいなやり方を入れたんです。そもそも「無料」って言っているんですけど、あれは嘘なんです。有料なわけです。
田原 どういうこと?
堀江 例えばグリーの釣りゲーならば「無料で遊べる」とか言っているけれど、途中で竿が折れたりするんですよ。折れたら買い直さなきゃいけない。最初は友達を紹介したら500ポイントとかっていうポイントがもらえて、それを自分でかき集めてやろうとする。だけど、だんだん面倒くさくなっちゃって、有料アイテムを500円とか1000円とかで買っちゃうんですね。それではまる人たちが出てきて・・・。
田原 一種のインフラで稼いでいるわけね。
アイデアを出る仕組みを考える
堀江 そうですね。それと、さっきいったみたいにタイミングがよかったんだと思うんです。
例えばIモードができたのって10年くらい前じゃないですか。それまで、おカネを払ってデジタルコンテンツを買う習慣って昔はなかった。本そのものを買ったりCDを買ったりすることはあったけど、デジタルのものを買うって、「そこにおカネを払う? えっ?」ってみんな思っていた。そこにIモードとかアップルのiTunesとかが出てきて、デジタルアイテムにおカネを払うということが抵抗なくなった。そんな下地ができてたんでしょうね。
そこにタイミングよく、最初は無料でエントリーさせてっていうやり方で入ってきて、成功した。
僕の小説にも書きましたけど、最初、主人公が「有料でこのコンテンツを出す」って言ったら、「誰がこんなもの有料で遊ぶか?」って怒られるじゃないですか。
田原 主人公を叱るその「オッサン」というのは堀江さんのことでしょう。
堀江 いや、"堀江さん"の部分も一部あるんですけど・・・。
田原 あんなオッサン、いるわけないからね。
堀江 あんなオッサンはいるわけないというけれど、ちゃんと考えたんですよ。
つまり普通のフリーターの若者が、なんにもバックアップもなく、いきなり思いついて上手くいくわけがないじゃないですか。そこであんなオッサンがいたとしたら、読者も「ああ、このおっさんに全部教わっているから出来るんだな」と納得するでしょう。
田原 だけど、堀江さんはあの「オッサン」がいなくて成功したわけでしょう。
堀江 まあ"オッサン"はいなかったですけどね。
田原 ね。なんでオッサンがいなくてできたの。あの小説を見るとね、堀江さんがバカで、オッサンのいうことを素直に聞いていたら上手くいったって読める。
堀江 そういうふうに誤解して、「(指南役が)本当にいたんじゃないか」っていう人がすごいいますけど、いないですよ。
田原 いるわけないよね。
堀江 「いるわけない」とは言えないけれど、いないです。
田原 すごいところは、オッサンはいないけど、堀江さん自身がオッサンだったんですよね。なんで堀江さんは次から次からアイデアが出てくるの?
堀江 それはアイデアが出る仕組みを作っているからです。自分の中でつねにアイデアが出るようにしている。
近鉄バファローズ買収に乗り出した理由
田原 たとえば具体的に聞くけれど、なんで堀江さんは突然、近鉄バファローズを買おうと思ったの。
堀江 僕はいろいろ考えているんです。
あのとき一番僕が考えていたことっていうのは、どうやって企業ブランドイメージを高めていくか、要はいかに有名になるかということなんです。
なんで有名にならなきゃいけなかったかというと、ちょうどあの時期のライブドアって法人向けの需要が頭打ちになっていた。というのもネットバブルが一回弾けたんです、2000年ぐらいに。その後の3年間ぐらいって、法人需要が低迷していたんです。
でも僕ら、上場して売り上げも増やさなければならないし、利益も増やさなきゃいけない。いろいろ試行錯誤をして法人営業を頑張っていたんですけど、やっぱり頭打ちだったんです、その頃って。
その一方で、孫正義さんがADSLをやってネットをみんな使えるようになっていたから、個人のユーザーがすごく増えてきていた。そこで要は、いかにこういう人たちからおカネを取るかというのを考えていた。法人向けから個人向けにシフトしていた時期なんです。
いかに個人からおカネを集めるかっていう話になると、やっぱり有名じゃないと。そこで、テレビCMとかバンバン打てばいいのかも知れないけれど、僕らおカネないじゃないですか。おカネもそんなにないから、打ったら打った分だけ赤字になっちゃう。だから「おカネを使わずに有名になるにはどうしたらいいか」っていうのをすごい考えていた時期なんです、あのころは。
それで、いろいろやったんです。
例えばライブドアっていう社名に変更したのもその一環です。「CM打つカネがなかったら、CM打った会社を買えばいいじゃねえか」っていう発想です。そうしたらちょうどいい具合にライブドアが売りもので出てきたんです。
売りに出る前のライブドアっていうのは実は70億円をかけてテレビCMをやって、誰だっけなぁ、泉谷しげるさんとか鈴木紗理奈とか、あとは誰だっけ? ちょっと忘れちゃったんですけど、そういういろんな人が出ているCMがあって、すごいプロモーションをしていたんです。無料プロバイダーということで。
そうしたらカネかけすぎちゃって潰れちゃったんですよね。お客さん集まらないで。だけど"ライブドア"っていう名前は少なくともIT業界の人たちはみんな知っていたんです。
潰れた会社ごとブランドを買う
田原 有名だったわけだ。
堀江 ええ。、「潰れた会社のイメージって悪いんじゃないの」ってみんな思うけれど、意外とみんな潰れた会社のことって「潰れた」って思っていないんですよ。
例えばJALって潰れた会社じゃないですか。でも利用者は誰も潰れた会社だからダメだなんて思っていないでしょう。潰れたことだって忘れてるかもしれない。
だから、ブランドってみんな意外と潰れたことってすぐ忘れちゃうんですよ。
田原 僕なんて「JALなんかなんで公的資金を使ってまで生かすんだ」って思うけどね。「一度、ちゃんと清算したほうがいいんじゃないか」と思うけどね。
堀江 でも一回、民事再生法を申請して潰れたわけじゃないですか。あれは世間的に言ったら倒産でしょう。そうなんだけど、いまでもJALはあるから、飛んでいるから、潰れたって思わないんですよ。
昔潰れた会社って結構いっぱいあるんです。「あの会社は2回も潰れたんだよ」っていう会社だってある。でも、そんな会社でもみんな潰れたことを忘れたり、知らなかったりする。だから、「潰れたっていうのは全然マイナスイメージじゃないな」と思った。つまり、みんなに浸透したライブドアっていうブランドだけはある。だからそれを買収した。
その次に、何をやろうかって考えていたら・・・。
田原 ちょっと待って。そこがすごいのは、やっぱり日本人の多くはね、「潰れた会社のブランドイメージってダメだ」と思うんですよ。堀江さんはダメだと思わないっていうのは何でなの?
堀江 それはみんなに聞いたら、潰れた会社だと思っていないだもん。
田原 例はよくないかもしれないけれど、ホテルニュージャパンというホテルがありましたが、これが焼けて、大勢の人がなくなった。
その跡地を、日本の会社はまったくどこも買わなかったんです。で、外資がボーンと買って、堂々たるビルを建てて、現在何も問題ない。だから堀江さんって外資のセンスかなと。
堀江 いやいや。僕は本当に普通にみんなに聞いて回って、ちゃんとしたエビデンスを取ってやっています。感覚じゃないですよ。ちゃんと統計を調べたりヒアリングをしたりして実行に移しているんです。なにか感覚的にやっているわけじゃないですよ。
みんなバカだなあと思った
田原 そこを僕は誤解していた。堀江さんってすごい感覚が冴えていて、感覚人間で上手くいっているって思っていた。
堀江 いえ。情報を収集して、どうしたらいいかって、いろんなところにアンテナを立てているわけです。
野球だって最初に話が入ってきたのは、実はダイエーなんですよ。福岡ダイエーホークスが、親会社のダイエーが調子が悪いからって話が来たんです。
僕、福岡出身なんで、たまたま福岡に講演にいったんですよ。そうしたら、ダイエーの人も来ていて、「堀江さん、うちの球団買ってほしいんですよ」みたいな話をしてきた。そのときは、「いや、とてもじゃないけど買えないよ。そんなカネはないよ」っていう話をしていたんです。
そうしたら、その後、2004年2月に近鉄が売りに出ることになったんです。身売りみたいな話が出て、問い合わせたんです。そうして銀行経由とかでいろいろ話をしていたら、4月に「オリックスと合併する」っていう話になった。「この話は終わったんだ」と、そう思っていたら、急転直下、このままでは球団数を減らされては、困る人たちがいるっていう話になってきた。
そもそも球団が減って誰が困るっていえば、オーナーは困らない。なぜなら球団数が経れば減るほど希少価値が出るから、むしろ球団価値が上がると思っている。ナベツネとかは10球団とか8球団にしたかったわけじゃないですか。あれは希少価値なんです。
困るのは選手ですよ。選手は働き口が確実に減るから。だから選手会が動いて、「あの球団合併は許さん」みたいな話になった。
それで僕のところにまた話が来たんです。「堀江さん、買う気ある?」って。楽天にいた人が僕に電話してきたんです。要は、最初に楽天に行っているんです、あの話は。で、楽天のボスは「買わない」って言ったんです。
田原 ああ、三木谷(浩史)氏はね。
堀江 「うちのボスは買わないって言っているから、堀江さん、どう?」って言われて、「ああ、やるやる!」っていう話になった。
というのは、僕らずっと検討していたわけです。で、近鉄だったらダイエーより人気がないから安く買えるだろう。安く買えて、それを人気球団にしちゃって黒字化すれば、これはタダで宣伝できるようなものだ。そう考えて乗り出したんです。
そのころは意外なことに、プロ野球がいかにすごい媒体かっていうことに誰も気づいていなかった。
僕らの前にそれに気づいてやったのは、オリックスの宮内さんだったわけですよ。それ以来、誰も気づいていなかった。これはすごい、みんなバカだなあと思ったんです。
なんでかっていうと、テレビでスポーツニュースをやらない日ってないでしょう。そこに全球団が出るでしょう。新聞だって、日経新聞にだって野球の記事は載っているんだから。スポーツ新聞なんていったら絶対に一面じゃないですか。シーズンオフだって一面じゃないですか。しかもサッカーと違って、企業名が載るわけです。こんなおいしい媒体ない。
オリックスなんてね、オリエントリースだった頃は誰も知らなかったでしょう。でも今は日本人で知らない人いないでしょう。こんな媒体がタダで買えるようなもんじゃないですか。
しかもずっとおカネを注入しなくていいわけです。球団が黒字だったら、タダでずっと何十億という広告費換算のおカネを、いや何十億じゃきかないな、何百億っていう広告費換算のおカネを毎年たたき出せるわけじゃないですか。
ダイエーの成功を徹底的に研究した
田原 だけど、セ・リーグは黒字球団が結構あるんだけれど、パ・リーグはないんじゃない?
堀江 パ・リーグは、結局、楽天が参入して初年度黒字を出したんです。
田原 いやだけど・・・。
堀江 僕は福岡出身だったんで、ダイエーのビジネスモデルをつぶさに観察していたんです。ダイエーが「買わないか」と言ってきたときから、いろいろ見たんです。そうしたら九州ではすごいんですよ、ダイエーは! 毎日超満員なんです。
なんでそうなったかといったら、高塚(猛)さんっていたでしょう? あの人にも僕は話を聞いていたんですよ。
そうしたらダイエーっていうのはこうしてこうやったんだと教えてくれた。
例えば今までは球団ロゴを商店街とかが貼ったりするときに、いちいち球団がライセンス料を要求していたんです。でもダイエーっていうのはそれを一切要求せずに、地元の企業に対して無料で開放したんです。そういうお客さんを集めるために地元密着型球団って、ダイエーが初めて成功していたんです。
田原 福岡で成功した。
堀江 そう。それを真似て、日ハムもフランチャイズを北海道に移したんです。
田原 札幌に持っていって。
堀江 それで、うまくいきつつあった。
そういうの見ていたから、これからは地域密着で地元球団なんだと。
なんでそうなったかというと、それはテレビの世界の巨人一極支配みたいなものが終わりつつあったんですね。昔は巨人戦が視聴率がよかったから・・・。
田原 今はよくない。
堀江 でもそれはね、いろいろ調べたんですけど、それって結局、巨人っていうのは長島だったんです。
田原 ONね。長島、王。
堀江 いや、長島ですよ。
僕、実はプロ野球の歴史ってすごく詳しくて、歴史オタク的なところがある。例えば松竹ロビンズなんて知らないでしょう、みんな。その頃の球界再編とかいろいろ見ていくと、戦前、まあ戦後すぐくらいまで、プロ野球って人気なかったんです。その頃人気があったのは大学野球、高校野球なんです。特に高校野球です。
高校野球ってものすごいドル箱だったんです。で、毎日新聞と朝日新聞が分けていたわけじゃないですか。
田原 センバツと夏の甲子園ね。

堀江 そう。読売だけがその利権を持っていなかったんです。で、プロ野球を何とかしたいと思って、そうしたらスターが現れたわけですよ、長島が。
長島が大学野球にいるときはプロ野球は人気がなかった。けれど、巨人入りした途端、プロ野球人気に火が付くわけですよね。
つまり、あれはあの時代の正力(松太郎)さんとかあの人たちが作り上げた一大ビジネスモデルなわけです。だから「巨人の俺が知らねえヤツは入れない」って言うわけですよ、ナベツネが。
別にナベツネが作ったわけじゃないんだけれど、彼は今は自分が巨人の盟主、読売の盟主だって思っている。だから「知らねえヤツは入れねえ」っていう話になった。それはそれで、彼らの理屈としては納得いくわけです。つまりプロ野球といったら巨人なんだから。
「なぜ孫さんや三木谷さんが成功して、堀江さんが失敗したのか」
田原 ねえ、なんで三木谷氏や孫さんは成功して、堀江さんは失敗したんですか。
堀江 それは僕がプロ野球界にとってのヒール役になったからじゃないですか。
田原 なんでヒール役になっちゃったんですか。
堀江 先に買いに行ったからでしょう。
田原 だけど、三木谷氏や孫さんは成功するわけね。
堀江 そう、だから後から行ったから。
田原 何で彼らは成功しているの。
堀江 いや、三木谷さんは少なくとも後から来たからでしょう。「堀江の対抗馬が必要だ」っていう話になったんじゃないですか。そこに上手く乗っかったっていうのはあるでしょうね。
田原 僕はね、彼はじじいキラーだからとね・・・。
堀江 いやいや(笑)。僕はそうでもないと思うんですけどね。
田原 あのときに(ナベツネと親しい政治評論家の)三宅久之さんが『朝まで生テレビ』で言っていたけれど、三木谷さんや孫さんはちゃんとネクタイ締めて背広姿で挨拶に行くのに、堀江さんはネクタイを締めなかったと。
堀江 あ~。でもネクタイ締めていたいたらどうなったかというのも、分からないような気もする。
田原 大事な問題だからしつこく聞きたいんだけど、なんで堀江さんだけが落とされたんだろう。どこが気に入らなかったんだろう。
堀江 何が気に入らなかったんでしょうね。いや、僕にはよく分からないですね。
日本のローカルのことをやっても仕方がない
田原 ナベツネに会ったことはあるんですか。
堀江 ないです。だって会ってくんないですもん。
田原 始めから?
堀江 まあ、どうやって会ったらいいかわからなかったし。
田原 頭下げていけば、会ったんじゃないかな。
堀江 なんで頭下げるんですか?
田原 だって入りたいから。
堀江 いやいや(笑)。
田原 商売っていうのは手段なんてどうでもいいんですよ。成功するか失敗するかですよ。
堀江 ええ。
田原 変なプライドがあるんですね、堀江さんは。
堀江 変なプライドは・・・。
田原 ナベツネごときになんで頭を下げなきゃいけないのかっていう。
堀江 いや、そういうわけではないですよ。
僕はやることとやらないことって決めているんです。だから、なにかこういうことをやりたいっていうときに、なりふり構わずなんでもやるかというと、そうでもないんです。
田原 そうなんだ、なりふり構わずやらないの? 孫さんとか三木谷さんは、なりふり構わずやるわけだ。
堀江 そうでもないと思いますよ。彼らは彼らなりの、なりふり構っているところと構っていないところがあると思う。
田原 プライドの持ち方が違うわけだ。
堀江 恐らくそうですね。プライドなのか選択肢なのか分からないですけど。
例えば僕らがボーダフォンを買うかっていったら買わないですよ。ボーダフォンの話はうちにも来ていましたからね。
田原 なんで買わなかったの?
堀江 だって、日本ローカルの事業をやったってしょうがないじゃないですか。なんて言うか、夢がないというか。面白くなさそうじゃないですか。
田原 だって近鉄バファローズだって、日本ローカルじゃないですか。
堀江 たしかに日本ローカルなんですけど、僕らはあのとき、有名にならなきゃいけなかった。それはやっぱり、絶対にやらなきゃいけないことだった。
以降 vol.2 へ。
現代ビジネスブック 第1弾
田原 総一朗
『Twitterの神々 新聞・テレビの時代は終わった』
(講談社刊、税込み1,575円)
発売中
amazonはこちらをご覧ください。
楽天ブックスはこちらをご覧ください。




