FRIDAY永田町ディープスロート

2010年07月22日(木) FRIDAY

他党に食指を動かす小沢一郎前幹事長の「大連立構想」
民主惨敗、自民・みんなは大喜び! 
各党の思惑が交錯し始めて

自身の投票を済ませ、ぶら下がり会見をする直前、菅首相が問題のメールを見てしまった瞬間(7月11日)

 結局、この夏の参院選は、何が争点だったのだろう。「消費税10%」も、選挙が終われば現実味を失う。ただ、民主党の大敗で、分裂の可能性は高まった。参院選は、混乱に乗じて誰が得をするかというゲームの幕開けに過ぎなかったのかもしれない―。

 7月11日、参院選投開票日の午前11時頃、菅直人首相(63)は伸子夫人(64)と連れ立って、東京・武蔵野市の井之頭小学校に投票に訪れた。

 首相官邸でのぶら下がり取材さえ嫌い、朝の挨拶をしようとする記者に「声をかけるな」と怒鳴る"イラ菅"だが、さすがの劣勢に愛想のひとつも振りまこうと、投票を済ませた後、記者団の取材に応じることになった。

 投票所を後にしたその時である。携帯を取り出し、メールを覗き込んだ菅首相の表情がサッと変わった。

「投開票日の朝まで、菅首相は目標に設定した54議席には及ばずとも50前後で踏みとどまるだろうと楽観視していました。あの携帯メールは出口調査の経過を伝えており、アンチ民主の動きがあまりに強いことに打ちのめされ、50議席割れを覚悟したのです。状況を察知した秘書が取材を打ち切るようにして、そそくさと帰宅しました」
(全国紙政治部記者)

選挙戦の最終日に谷垣禎一氏はこの笑顔。相当な手応えを感じていたようで、「1番」のポーズを連発した

 振り返るまでもないが、参院選の結果は「自民51・民主44」と、民主党の大惨敗であった。民主党の開票センターに菅首相が到着したのが午後8時52分。メディアの呼び掛けにも応じず、ホテルの控え室にこもり、午後11時半に予定されていた会見も、理由も知らせずに1時間も遅らせた。実に大人げない態度だ。

 一方、自民党本部の開票センターは、フィーバーしていた。谷垣禎一総裁(65)は当選が決まるたび、頼まれてもいないのに、天に指を突き上げ「1番」のポーズ。一時期、辞任の噂も出ていた大島理森(ただもり)幹事長が相好を崩すのを見て、「こうなったら(大島氏が)辞める理由はないわよね」(小池百合子元防衛相)と、軽口が飛び出す。

声をかけるのが憚られるほどピリピリしていた渡辺喜美氏も、思わぬ金星に態度が一変。だから選挙は怖い 

 10議席を獲得したみんなの党・渡辺喜美代表(58)のはしゃぎっぷりは、これに輪を掛けていた。午後11時40分頃、東京選挙区の松田公太氏(タリーズコーヒージャパン創業者)の当確が決まった際などは、突然、拍手したかと思えば、

はしゃぎすぎて、ごめんなさい

「本当か! (スタッフに)お前、間違いねえだろうな。(飛び上がって)バンザーイ! やった、やった、おっほっほ」

 と大騒ぎ。コップが倒れて、テレビ局のマイクが濡れるハプニングまで起きた。

青森に入った小泉進次郎氏。スーツのボタンを掛け違えたのが、必死さの"演出"なら大したタマ(7月7日)

 民主党に話を戻そう。菅首相は党代表選のある9月までの執行部続投を早々と宣言して、自らの責任論を回避している。

 だが、大敗が判明した直後の鳩首会談で、次のようなやり取りがあったことはあまり知られていない。仙谷由人官房長官(64)は、菅首相にこう言った。

「よもや、あの人に頭を下げ、軍門に下り、時計の針を逆戻りさせようなどと考えているわけではないでしょうな」

  "時計の針を戻すな"は、菅首相が自民党時代を当てこするために選挙戦で使ったフレーズだ。皮肉と受け取った菅首相がイラついて口を開きかけるのを、仙谷氏はさえぎって続けた。

参院選当日に「辞意を漏らした」とされる枝野幸男幹事長だが、今は首相とともに責任論回避の一手

「今回の参院選の結果は、政界再編を促されたという意味だと、私は思う」

 このやり取りについて、首相官邸詰めの政治部記者が語る。

「仙谷発言は、民主党分裂の可能性を考えていることを意味します。今後、衆参各院で多数派が異なるねじれ現象が起きますから、次の衆院選までに政界のシャッフルが行われるでしょう。

 いや、そんなに時間はありません。予算関連法案が成立しなければ来春の予算編成ができません。危機感を強めた財務省は、やはり菅の次の人物にシフトし始めました」

小沢氏の姿が最後に確認された石川県内の街頭演説。「大阪にて公明党幹部と接触中」との噂も(7月8日)

 そして、シャッフルのカギを握るのが、仙谷氏が「あの人」と意識し、財務省総括審議官・香川俊介氏が接触を図っていると見られる人物である。渡部恒三元最高顧問は開票センターで、その人物が惨敗を受け采配を振るうであろうことを見越して、早速、メディアにクギを刺した。

「誰彼が悪いと言ったって仕方がない。小沢(一郎前幹事長)くんも菅くんも、心をひとつにして・・・」

 だが、その"小沢くん"は、本格的に行方をくらましている。7月8日、石川県加賀市での街頭演説を終え小松空港に向かったことは確認できたが、それ以降、プツリと音信が途絶えている(7月13日現在)。ただ、小沢氏側近からは、次のとおり、明らかに主の意を汲んだ発言が漏れ伝わる。

「こんなに負けたら、頭を丸めるなり、四国にお遍路に行くなりすべきだ」

 小沢氏は選挙前から自民党に接触を図っているとされ、窓口と目されるのが古賀誠、伊吹文明の両元幹事長らだ。その戦略を、菅首相周辺の議員が解説する。

「谷垣が『民主党が、マニフェストは間違っていたと謝罪すれば話し合いに応じる』という主旨の発言をし、政権を放り出した元首相の安倍晋三まで『俺にも、もう一度、登板が回ってくるかもしれないな』などと言い出しています。

 小沢の頭には、自民党からの離脱グループ、国民新党、たちあがれ日本の4党をまとめた大連立構想があるでしょう。さらに言えば、公明党と話ができるのも、民主党内には小沢しかいない」

「支持率ゼロで構わない」と公言する亀井静香氏。国民新党の議席はゼロ。最後の演説では涙が光っていた

 これに対し、仙谷氏はみんなの党に秋波を送り続け、渡辺氏は「連立に入ることはない」と、再三否定している。

 とはいえ、永田町に蠢く政治家の言葉に賞味期限のあることなど、われわれは先刻承知だ。

 要は、彼らは規模の大小はあれども、ねじれに乗じて党の存在感を示し、連立の際の主導権を握るために牽制し合っているということだ。

 死に体と化しつつある菅首相が采配を振るって注目される瞬間があるとすれば―もはや解散総選挙、「消費税10%解散」で国民の信を問うしかない。だが、その可能性は限りなくゼロに近い。

〔PHOTO:堀田 喬・船元康子〕