FRIDAY永田町ディープスロート

2010年07月02日(金) FRIDAY

小沢前幹事長が"消費税10%の菅首相"に「ありゃ長持ちせんな」
勝負は9月の代表選。独裁者は
「サポーター獲得作戦」で足元を固めていた

「ついに暴走したか・・・」

 仙谷由人官房長官(64)と玄葉光一郎政調会長(46)は、寝耳に水の一報に顔をしかめるしかなかった。

「早期に超党派で議論を始めたい。自民党が提案している10%を一つの参考にしたい」---。

 6月17日、参院選公約の発表会見で、菅直人首相(63)が言い出した「消費税率を10%にアップ」。自民党案を拝借した姿勢に、民主・自民両党から「抱きつき掏摸」との罵声が飛んだ。

川井さん宅に届いたハガキ。名目は事務所開設のお知らせだが、< サポーターに推薦させて頂きました >との一文が

「だいたい、党に一度も諮ってない話だ。それをああいう形で発言するのは、どういうことなんですか」

 玄葉氏に至っては、菅首相に直接そう問い質したという。増税論が鬼門なのは永田町の常識。参院選を控えた今の時期であれば、なおさら"禁句"だ。菅首相の独断に対し、誰よりも怒りに震えたのが、あの"独裁者"であろう。

「結局、あれだ。(首相就任の前に)財務大臣になって、財務官僚にやられちまったんだな。ありゃ、長持ちせんな」

 民主党の幹部たちによれば、小沢一郎前幹事長(68)は、「消費税10%」発言を受け、側近にこう語ったとされる。だが、小沢氏は決して、表立って菅首相に弓を引くマネなどしない。

「『静かにしておれ』と言われているので、参院選では田舎の山奥やさびれた港町、大都会の裏町を回りたい」

 パーティ(6月17日)でこう語った小沢氏は、確かに"蟄居の身"らしく、「小沢グループ」と呼ばれる議員でも連絡を取ることは容易ではない。就任直後、小沢氏について「しばらく静かにしたほうがいい」と諫めた菅首相だが、逆にこの沈黙を不気味に感じているはずだ。

 側近の議員や党職員から、小沢氏の"お言葉"として「9月の代表選が本番だ」との脅し文句が漏れ伝わってくるからだ。

 菅首相は、ついにキレた。

「マスコミとの接触は、できる限り少なくしてくれ!」

 6月16日に国会が閉会を迎える直前、菅氏は首相秘書官をそう怒鳴りつけた。"イラ菅"復活を示すエピソードは、まだある。全国紙政治部キャップが語る。

「6月中旬、菅政権の秘書官クラスと番記者の懇親会があったのですが、『官邸内の話を安易に外部に流していると分かったら、君たちとは二度と付き合わないから覚えておけ』とピリピリして言うんです。秘書官たちは首相の命を受け、メディアに対して宣戦布告したわけです」

菅氏のナルシストぶりが不評のマニフェスト。上は初当選した頃の写真。下は年金未納問題が発覚して党代表を降り、お遍路をした際の一枚

 ANNの調査によれば、内閣支持率は首相就任直後からわずか2週間で13.4ポイント減り、45.3%となった。首相の苛立ちは、小沢氏が仕掛ける"神経戦"によって激化し、己の首を絞めていく。

 顕著な例は、参院選の勝敗ラインだ。"小沢側近"の輿石東参院議員会長は、突如として「単独過半数(60議席以上)が望ましい」と言い出した。

 それまで菅首相は「6年前に獲得した議席(50)、あるいは(改選の)現有議席(54)のクリア」を掲げてきたが、この発言に確実に煽られ、6月22日の党首討論会で「54議席以上」と、ハードルを自らの手で上げてしまった。この数字を達成できなければ、参院選後に責任論が噴出する。

勝手にサポーターにされた! 

 菅首相を巧みに煽る一方、小沢氏サイドは支持者、サポーター獲得にも余念がない。だが、その手法にアンフェアなケースがあった。

 東京・板橋区に住む川井俊夫氏(58)は、届いたハガキが気になった。差出人欄には民主党の衆院議員・渡辺浩一郎氏(66)の名前があり、裏面には< 今年は、党員・サポーターの皆様にご投票いただく、民主党の代表選挙の年でもあります。日本の政治を、より良いものとするために、サポーターに推薦させて頂きました >とある。

 川井氏の住む板橋区は東京11区で、渡辺氏は同区総支部の顧問という党職に就いている。'94年の新進党結党に参加して以来、行動をともにする「小沢グループ」の一員でもある。

 川井氏が経緯を説明する。

周囲の理解を得られずとも、カッコいい自分をアピールできたマニフェストの出来に大満足(6月17日)
〔PHOTO〕鬼怒川 毅

「1年くらい前、私のアパートにチラシを投函する渡辺氏と出会い、『民主党を応援しています』という話はしましたが、金銭面のことも考え、結局、サポーターにはなりませんでした。ハガキが届いて勝手に名前を使われたのかもしれないと思い、6月中旬に渡辺氏の事務所に自分がサポーターとして登録されているか確かめたんです。

 すると、電話口の男性が『登録されています』と答えたばかりか、『(入会金は)うちで負担しています。(入会の)気持ちがあるなら負担してください』と言うではありませんか」

 民主党の代表選において、党員・サポーターの投票は、各小選挙区の総支部ごとに行われ、最も多く得票した代表候補者がその小選挙区総支部でのポイントを獲得する仕組みである。本誌の取材に、渡辺氏の事務所は「確認中」と言うだけで回答しなかった。渡辺氏の行為は、代表選の信憑性を損なう行為だ。

 もし川井氏が声を上げなかったら、知らぬ間に、渡辺氏が、つまり小沢氏が推す候補に、一票が投じられる可能性があった。代表選を控えた今年だからこそ、川井氏のようなケースが浮上したわけで、他にも"被害者"がいる可能性もある。

 一方、小沢氏に包囲されつつある菅首相が6月17日に公表した民主党のマニフェストをめくると、公約と公約の間に< 菅直人HISTORY >なるコラムがあることに気付く。菅氏が首相の座を手にするまでの個人史を、若きイケメン時代の写真とともに紹介したものだ。これには、民主党の議員も職員も、

「"宇宙人"と呼ばれた鳩山さんだって、あんな自己アピールはしなかった。菅首相のナルシストぶりがキモすぎる!」

 とブーイングの声を上げた。だが、小沢氏に踊らされる"裸の王様"に、耳の痛いことを言えば怒鳴られるのがオチ。だから誰も本当のことを言うことはない。王様は、参院選前に、小沢氏の術中にハマったことに気付くのだろうか。