市川 裕康ソーシャルビジネス最前線

2010年07月02日(金) 市川 裕康

「マイクロパトロン」が可能になった
ビジネスの「ソーシャル化」

 Twitter、 Facebookなどに代表される、「ソーシャルメディア」と呼ばれるインターネットサービスによって、私たちは、いろいろな人々の喜び、感動、何気ない呟き、そしてアイデアにアクセスすることが可能になりました。たとえばワールドカップサッカーに関するTwitterの呟きを見ていると、スポーツ観戦をこれまでとは違った次元に引き上げています。これが「共感の可視化」です。

 こうした共感の可視化によって、「クチコミ・マーケティング」、「ソーシャルメディア・マーケティング」と呼ばれる新しいマーケティング手法や、事業を通じて社会的な問題を解決する「ソーシャルビジネス」も注目されてきました。

キックスターター

 ニューヨークに拠点を持つキックスターターというサービスは、何か実現したい創造的なアイディアや企画があった際、そのプロジェクト概要と必要な資金の目標額と募集期限をウェブサイトに公開、PRすることで資金や支援を集める仕組みを提供しています。寄付でもなく、融資でもなく、投資でもない、「投げ銭」のようなお金をひとり1ドルから募ることができるサービスとして、マイクロファイナンスならぬ、「マイクロパトロン」とも呼ばれる所以です。

 一度、出資したお金は返ってこない代わりに、アーティストやクリエイターが作成した商品やサービスなどの形で還元されるのが特徴です。長年の夢である映画を製作したいとか、世界を旅したいといった創造的なチャレンジがすでに数多く登録されており、いまは米国内だけですが、誰でも申請することが可能です。目標金額に達しない場合は一切お金はプロジェクトに渡らない、というのがルールで、目標金額に達した時は、金額がプロジェクトに払われ、キックスターターは5%を手数料として得ます。

キックスターターのサイトより 写真はディアスポラのメンバー

 たとえば、つい最近話題になったプロジェクトは、「プライバシーの保護を大事にするソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を創る!」というものです。

 Facebookのプライバシー・ポリシーに問題意識を持った19歳から22歳の学生4人により始められた「Diaspora」(ディアスポラ)というプロジェクトです。当初目標としていた金額1万ドルはすぐに達成され、結果的には約40日間を経て、目標の20倍、約20万ドル(1800万円)以上の支援が、約6500人(Facebook CEO マーク・ザッカーバーグ氏含む)から提供されたのです。

  ビジネスモデルのみならず、プロジェクト発起人の「想い」や熱意がブログ、動画、ツイッター等で共感を呼び、家族・友人、知人、ウェブ上の全く知らない人までもがコミュニティとして夢の実現を応援する、という素晴らしモデルです。 今回ご紹介した事例は数多くあるソーシャルビジネスのほんの一例です。

 こうした新しい、革新的なサービスが毎日のように世界中で生まれてきていることに、純粋に驚きを隠せません。ソーシャルメディアにより可能となった「共感の可視化」、そしてそこから生まれる「人、モノ、お金のマッチング」が織りなす新しいビジネスの進化を、このコラムでお伝えしながら、みなさんとともに考察していけたら、と思っています。是非どうぞお付き合いください。