天下り100人超、財政支出90億円超の公益法人がゴロゴロ、しかも理事長の年収1000万円超は当たり前。
70法人82事業に対して事業仕分けが始まった。目標は天下りの根絶だ。役人天国の深部をえぐれるのか。
5月20日、「事業仕分け第2弾」後半戦が始まった。「第2弾」では天下りの温床である公益法人(財団法人と社団法人)と独立行政法人(独法)が対象だ。天下った官僚OBの年収は1000万円以上が当たり前、そして天下りを多く受け入れた公益法人や独法には、各省庁の補助金や事業が優先的に回っていく。結局、役人の優雅な第二の人生のために血税が投入されているのだ。
中部建設協会仕分け対象の公益法人で一番多い天下り233人!出社してきた福田晴耕理事長は月額92万円の報酬を受け取っている。本誌記者の問いにも無視を決め込んだが、公益法人として説明責任を果たす気はないのか〔PHOTO〕夏目健司
中部建設協会
国土交通省の出先機関である「地方整備局」は全国で八つあり、地方整備局ごとに「○○建設協会」または「○○弘済会」という天下り先の社団法人がある。
今回の仕分け対象となる公益法人の中で、国家公務員OBの在籍者数が233人と最も多かった社団法人「中部建設協会」もその一つで、地方整備局「中部地方整備局」の天下り先という関係になっているのだ。
中部建設協会設立の目的は、建設行政推進と建設事業進展に寄与すること。
例えば、「地域づくり活動支援」として「東海道さんさくマップ」「学習支援~自然環境学習・親子教室」に取り組み、「広報活動」として「木曽三川交流レガッタ」、「講習会」では「中部ブロック災害復旧講習会」などを開催しているが、いずれも民間企業への業務委託で十分可能な事業ばかりで、天下りOBの知識や経験が活かせる業務とも思えない。
5月17日、出勤してきた福田晴耕理事長(国交省OB)を直撃し、「国家公務員OBの数が最も多いと14日付の朝日新聞で報道されているが」と聞いたが、一瞬、記者のほうを見た以外は目を合わさず、無言のまま立ち去った。
役職員の実に31%を国家公務員OBが占めるこの社団法人への国や独法からの財政支出額は年間約96億円。OBを受け入れるための受け皿にしか見えない。国交省からの優先的な業務発注は即刻廃止し、民間企業と競合させるべきだ。
雇用・能力開発機構雇用振興協会に保険料294億円投入!丸山誠理事長はNEC出身。ほとんど役割が終わった雇用促進住宅に民間企業なら新たな出資をするだろうか。〔PHOTO〕結束武郎
雇用・能力開発機構
厚生労働省所管の「雇用・能力開発機構」といえば、雇用保険料を使って「私のしごと館」(約581億円)や「スパウザ小田原」(約455億円)などのハコモノを建設した悪名高き独法。
理事長は天下りOBが歴任していたが、批判を受けて民間出身の丸山誠氏が抜擢された。また長妻昭厚労相が近日中に提出予定の法案で同機構の「廃止」が決まる見通しだ。
その機構がカネをバラ撒いていた厚労省所管の財団法人がある。「雇用振興協会」である。雇用・能力開発機構から雇用促進住宅の管理業務などを年間約294億円で請け負っていた。使える金額は公益法人の中でも飛び抜けて多い。
その雇用振興協会の天下りのOB数は153人で、全役職員(743人)の21%を占める。利権のカネをバラ撒いて"身内の役人"の再就職先を作っていたのだ。
横浜にある雇用・能力開発機構のビル〔PHOTO〕結束武郎また、機構の廃止と言っても「みんなの党」の渡辺喜美代表は「より小さな独立行政法人『高齢・障害者雇用支援機構』にくっつけて、焼け太りさせるものだ。
看板のかけ替えだ」と批判している。とすれば、癒着の構図もそのまま温存されるのではないか。丸山誠理事長を直撃した。
― (廃止は)看板のかけ替えではないか?
「法案は通っていない。独法(雇用・能力開発機構)には何の主体性もないし、国の方針が決まれば、従ってやる以外にない」
― 雇用振興協会に294億円を出していたことは適切か。
「294億円にはたぶん、全国で14万戸ある雇用促進住宅の補修費が入っている。これ(294億円)が適切かはコメントできません。今は金額も契約方法も民間並みに適正に行っている」
雇用・能力開発機構の廃止内容について、今後、国会で徹底的に議論してもらいたい。
民事法務協会 仕分け対象の中で国費投入額最多。174億円も!小池信行会長は「役員など管理職は天下りと言われても仕方がないが、現場で仕事をしている職員は天下りとは言わないのでは」と答えた〔PHOTO〕片野茂樹
民事法務協会
国費投入額が最も多かった公益法人は法務省所管の財団法人「民事法務協会」で、全国の法務局から登記簿作成の業務委託を受け、計約174億円、法人全体の収入に占める割合は84%だった。
この法人にも144人の国家公務員OBが天下りしている。千代田区にある協会の前で小池信行会長を直撃した。
― 民事法務協会の役職員1283人中、天下りOBが144人で11%に上りますが?
「この場で対応するのはお断りします」
― 天下りについてのお考えは?
「私どもの協会にいるOBのほとんどは、現場の従業員の皆さんと同じように、お客さんを相手に自分の経験を活かして仕事をしておりますので、世に言われる『天下り』というタイプではないと思っていますが」
しかし、天下りの役職員を11%も抱える必然性が本当にあるのか。なお民事法務協会は直前の5月18日になって突如、今回の事業仕分け対象から外れることになった。どんな理由や力学で対象外になったのか、その過程も詳らかにされるべきだ。
PMDA
すでに前半戦で事業仕分けが終わった独立行政法人を見ても、まだまだ問題点が多い。
海外でどんどん使われている薬が日本ではなかなか認可されないのは、医薬品の審査をする独法「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」が大きな障壁となっていると言われている。障壁の主原因は厚労省の現役出向者が全職員の2割、部長以上38名のうち28名と、PMDAを厚労省が植民地化しているからだ。
「製薬会社の新薬申請に携わる人に言わせれば『戦前の内務省を髣髴させる典型的な旧来の役所』。とにかくPMDAは何の結論も出さず機能不全、蘇生不能の組織ということのようです。米国の審査機関である『FDA=アメリカ食品医薬品局』の雄弁さとは雲泥の差があります」(心臓外科医の南淵明宏氏=大和成和病院長)
仕分け人に抜擢された南淵氏は事業仕分け「前半戦」の4月27日、PMDAの仕分けの席上、衝撃的な指摘をした。
「製薬市場はグローバル化しています。例えば、日本の製薬会社の社長が自社で画期的な新薬を売り出そうとする時、アメリカのFDAにまず申請する。次にヨーロッパ。PMDAは一番後回しにされるのではないですか。日本で開発された良い薬を、日本人が使うのが一番後になっている」
これに対してPMDAの近藤達也理事長は「欧米は自由診療で、日本は(国民)皆保険と、医療制度の違いのため」と説明した。しかし南淵氏はこう反論する。
「FDAに申請し認可をもらったほうが圧倒的に製品の信頼が増す。事実、シンガポールのようにFDAの認可があればフリーパスという国もあります。PMDAには国際競争力を持ってほしい。アジアの国々が、自分たちで開発した薬に箔をつけるためにこぞってPMDAで審査を受けるようにならないものでしょうか」
体質を変えるには厚労省からの支配から脱却するしかない。

JICA
外務省所管のJICA(国際協力機構)は、ODAに関する基礎的調査や技術協力など国際協力に関連する事業を行う独法だ。しかし職員約1600名のうち海外に派遣されているのは約400名にすぎない。事業仕分けでも、海外に職員の4分の1しかいないことが問題になったが、JICA側の説明は「在外手当が高いので外に出せない」と本末転倒な呆れたものだった。
在外手当は派遣国や組織内の役職によって差があるが、北京なら月額約22万円から約46万円、テヘランなら約34万円から約59万円である。この手当以外に基本給も貰えるが、それも公務員の給与に比べて1.3倍と高い。
そもそも緒方貞子理事長の年収は約2100万円。福山哲郎外務副大臣は事業仕分けで「緒方さんの名声から考えたら、理事長の給料が高いとか安いとかは言えない」と発言したが、庶民感覚からはかけ離れている。
確かに国連人権委員会日本政府代表や国連難民高等弁務官などを歴任しているが、「すでに十分に稼がれており、年収600万円でも自分の経験を活かしたいと申し出てもおかしくないのでは」(ODA関係者)という声もある。
また東京・麹町にあるJICAの年額家賃は27億円もする。まさにムダである。
JETRO
日本企業、中でも地域の中小企業の国際展開を支援することを主な業務とするジェトロ(国際貿易振興機構)は、海外に70ヵ所以上の事務所を構える。
しかし、先月の事業仕分けで民主党の尾立源幸参院議員らは「現役の官僚が所長に抜擢されており、歴代所長が財務官僚という海外事務所もある」と一覧表をもとに指摘した。「財務官僚が所長を務める理由は何か」「どういう選考基準なのか」と追及したのだ。
ジェトロ側は「財務官僚の方は幅広い知識をお持ちになっている」「選考は面接で決めている」と説明した。しかし面接試験で落ちた財務官僚がゼロであったことから、仕分け人は「それは面接ではなく、顔合わせ。公募をして選ぶべき」と一刀両断にした。
またJICAと同様、ジェトロ職員の給与も国家公務員の給与の1.25倍で、在外手当も高い。美味しい再就職先なのだ。
東京・赤坂の一等地には研修施設「ジェトロ会館」を構えているが、利用回数が半年で10回以下と少ない。また職員宿舎の空室が多いことも明らかになった。仕分け人が「民間の賃貸住宅への家賃補助で十分」「ジェトロ会館や宿舎を売却して国庫納付するべき」と指摘したシーンもあった。
高い人件費や管理費に大ナタを振るい、"本業"の割合を増やして実績を上げない限り、国民は納得しないだろう。
左写真の独立行政法人三つに以上の問題点を指摘し、見解を問うたがいずれも回答を拒否した。日本はどこまでも国民無視の役人天国なのである。
上は仕分け対象の公益法人のHPから、役員名簿、寄付行為などの資料をもとに作成。常勤役員で国家公務員OBと記載され、かつ報酬が判明している人物のリストである。月収は本給で手当は含まれていない。また年収を公表している法人は年収の12分の1を月収とした


