KO負けを繰り返す東野峻に代わり、右のエースの働きが期待されているドラ1ルーキー・澤村拓一(右)危機の時こそ、リーダーには力強いメッセージを発してほしいもの。近年最悪の状態にある巨人ではどうかというと、これが想像以上で・・・。
G滅語録(1) 節電
東日本大震災の影響で開幕こそ延期となったものの、節電対策を取ることで東京ドームの使用は可となった。
4月23日、平常時の75%の照明でフリー打撃を行った後、原辰徳監督(52)は、
「大丈夫でしょう。できると確信しました。プレーには問題ないです」
とコメント。胸を張ってこう続けた。
「これは我々にとってもリスタート。新たなる出発ということです。我々が力いっぱいのプレーを見せれば、それが今まで以上に明るい照明の代わりになると思う。今年の戦いの枠組みの中に『照明』というテーマも入れていきたい」
分かるようでまったく分からない誓いに戸惑う巨人番記者たち。指揮官が込めたメッセージに気づかされたのは翌日のことだった。再び東京ドームで全体練習が行われたのだが、原監督の様子がいつもと違ったのである。
球場入りしてユニホームに着替えた後、ベンチに姿を見せると、報道陣の前で両手をパンと叩いて「リスタート!」と一言。それを境に、あのおしゃべり好きの監督が黙り込んでしまったのだ。打撃ケージ裏で厳しい表情を浮かべ、腕組みしたまま口をつぐむ若大将。
「照明が暗くてプレーに影響が出ることを案じているのでは?」「何か他の不安材料が発生したのでは?」
ざわつく報道陣。だが、真相はまったく違った。練習終了後、当の原監督がこうタネあかしをしたのである。
「節電にならって、コメントを減らしてみようと思ったが--- 。やっぱり無理があったね。しゃべらないというのは、なかなかどうしてしんどい。節電はやっぱり言葉じゃなく、電気だね」
G滅語録(2) 動物園
開幕前、ジャイアンツ球場で行われた練習でのこと。報道陣と雑談していた原監督が物凄いことを言い出した。
「若い選手には休みの時、動物園に行けと言っているんだ。動物の動きは人間離れしているだろう。ジッと見ていると参考になることが多いんだ。ああ、コアラはこんな動きするのか。サルはこういう動きなのか・・・とかね。ジーッと見ていると自分の頭に動物の動きがインプットされる。バッターボックスに立った時、あるいは守備につく時に脳から指令が出て、動物的な動きができるようになるんだ。若い選手には必ずプラスに働くはずだよ」
ポカンとする報道陣。
だが、あまりに若大将が得意げなので、ある記者がこう切り返した。
「監督は現役時代、どこの動物園に行っていたんですか?」
原監督は真顔でこう即答した。
「いや、オレは行ってない」
G滅語録(3) カウボーイ
震災は開幕延期の他にも、思わぬ影響を及ぼした。福島第一原発の事故による放射能漏れを恐れて、帰国する外国人助っ人が続出したのだ。
巨人が先発ローテーションの一角を担う投手として期待していたブライアン・バニスター(30)もその一人。彼が特異だったのは、開幕が迫っても来日しなかったことだ。球団は4月26日、バニスターを任意引退選手として公示。代理人を通じて「日本の他球団はもちろん、アメリカでも野球をやらない」と球団側に通知してきたことで「引退」が決まった。
オープン戦ではいまひとつだったとはいえ、メジャー通算37勝右腕の退団は、チームにとって痛い。
原監督は「残念ですが、やむを得ない」とタメ息をつくと、こう続けるのだった。
「ジャイアンツ愛を見せてほしかった。今後、彼がどういう人生を歩むかは、神のみぞ知るというところだけど、アメリカでもジャイアンツ愛を持って第二の人生を歩んでほしい。ほんの1~2ヵ月ぐらいだったけど、彼はジャイアンツの一員だったわけだから。サラリーマンになっても、カウボーイになってもね、ジャイアンツ愛を持ち続けていけば、人生は切り開ける」
アメリカでは絶対通用しないであろう、ジャイアンツ愛について大マジメに語る原監督を前に、報道陣は笑いをこらえるのに必死だった。
G滅語録(4) ガッツ
5月11日、事件が起きた。横浜に連敗して、入れ替わりで最下位に転落したショックと怒りが重なったからか、試合後、原監督が大爆発したのだ。
「今日はあえて名前を出すけど、相手の術中にはまるというガッツ(小笠原道大の愛称)のバッティングでウチの勢いが遮断されている」
看板選手に対する異例の名指し批判。指揮官の凄まじい迫力に取り囲んだ多くの報道陣が凍りついた。しかし---いや、案の定、そんな緊張感も長くは続かなかった。新聞・テレビがカットした「続き」を聞いていただこう。
「もっとガッツにはガッツを持ってもらいたい。ガッツが足りないね。そのためのガッツなんだから。ガッツがガツガツいってくれれば、チーム全体もガッツを持って試合に臨むようになる。ガッツあってのガッツなんだ。ガッツにはガツガツさを見せてほしいんだ。オレの言っていることが分からんかなあ」
これだけ「ガッツ」と言っても、原監督は収まらない。
「ガッツがガッチリとね、いいプレーを見せてくれれば。これはある意味、ガッツに対する期待の裏返しですよ。ガツガツというか、ガッツというか・・・。ガッツ・・・とにかくガッツということです」
途中、ナゾの活用形も見せながら、ガッツトークはようやく終息していくのだった(笑)。
G滅語録(5) 最下位転落
とはいえ、ガッツをいくら批判したところで、チームが最下位に転落したという事実は変わらない。原監督は「真摯に受け止めるしかない」と神妙な表情を浮かべると、目をカッと見開いてこう続けた。
「最下位ということは、これ以下はないということ。逆説的に言えば、まだ前半戦。のたうち回るようなことはない。逆もまた真なりです」
まったく理解不能だったが、原監督の異様な迫力に圧倒され、記者たちは質問を切り上げたという。
G滅の危機に直面して、炸裂する珍言力。強くても弱くても魅せるのだから、これぞプロフェッショナルである。
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