歳川 隆雄歳川隆雄「ニュースの深層」

2010年05月15日(土) 歳川 隆雄

仙石・前原のベトナム
「官民一体セールス・ツアー」への期待
インフラ輸出を推進

 大型連休期間中の仙谷由人国家戦略担当相と前原誠司国土交通相のベトナム訪問はもっと評価されてしかるべきである。

 仙谷氏は4月30日上海万博開幕式・歓迎晩餐会に公式招待され、翌日の万博開幕日の日本館開館式には鳩山由紀夫首相の名代として出席。

 さらに賈慶林・国家政治協商会議委員会主席(中国共産党序列第4位)と会談した。そして5月2日、上海からベトナムを訪れた。

 仙谷氏はハノイ滞在中、来年秋にはマイン・ベトナム共産党書記長の後任書記長に就任する序列第5位のサン党中央書記局常任委員をはじめ、ヴィエット党中央組織委員長(序列第7位・越日友好議員連盟会長)、ハイ副首相(経済分野担当)、フック計画投資相、ズン交通運輸相らと会談した。

 一方、4月29日にワシントン入りした前原氏は翌日、米国が計画中の高速鉄道網に日本の新幹線とリニアモーターカー売り込みをPRすべく記者会見を開いた。そして前原氏も仙谷氏と同じく5月2日、韓国の仁川空港経由でハノイを訪れ、仙谷氏のハイ副首相、ズン交通運輸相との会談に同席した。

 今回の前原訪米には葛西敬之JR東海会長、清野智JR東日本社長、大橋忠晴川崎重工会長ら経済人が同行。

 さらに仙谷、前原両氏のベトナム訪問については、東京電力など3電力会社と東芝、日立、三菱重工などの原子炉メーカーの担当幹部が現地で合流するなど、官民一体のセールス・ツアーというのが特色であった。

 ベトナム政府はすでに総事業費5兆2000億円かけて2012年に着工するハノイ―ホーチミン高速鉄道について日本の新幹線方式の採用を決定している。

 さらに原子力発電所2号機(原発2基)の受注を同国政府に働きかけるための訪問だった。

 こうしたインフラ(社会基盤)輸出の推進が閉塞感漂う日本経済の回復に光明をもたらすものとして、経済界は挙げて歓迎している。

中東では韓国のトップセールスに遅れ

 とはいえ問題がないわけではない。高成長が見込まれるアジアを中心に世界で旺盛なインフラ需要が存在している。しかし、昨年12月のアラブ首長国連邦(UAE)アブダビの原子力発電所受注で韓国企業グループに、さらに2月のベトナムの原子力発電所1号機商戦ではロシアに敗退したことでも分かるように、インフラ分野における国際競争が極めて激しい。

 アブダビ以外の中東諸国でもサウジアラビアやヨルダンが原発建設を決めているが、ここでもまた李明博大統領率いる韓国のトップセールスが奏功し、日本は出遅れているのが現状である。

 民間企業の取り組みを後押しし、官民を挙げた協力体制で国際インフラ商戦に臨む必要があることは言うまでもない。

 そこで今、仙谷氏が率いる内閣府国家戦略室が極秘裏に進めているのが「国家戦略プロジェクト委員会」(仮称)の設置である。同構想は、国家横断的かつ政治主導で行動的な判断を行うため、首相を委員長、国家戦略相を委員長代理とし、官民合同の委員からなる国家戦略プロジェクト委員会を設置するというものだ。

  同委員会は重点分野の絞り込みや分野別戦略の策定を実施、官民で事業に適切なコンソーシアム(企業連合体)形成支援や、関係省庁・関係機関に対する指揮・総合調整を行う共に、省庁横断的で効果的な交渉カードの指示や、トップセールスの実施について判断・指示するというのだ。そのために、世界各国の情報を収集・集約、インフラ商談の支援を担当する「インフラプロジェクト専門官」(仮称)を、重点国を中心に在外公館に配置する。

 そしてそのインフラプロジェクト専門官は、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易振興機構(JETRO)、国際協力機構(JICA)など関係機関との情報交換を通じて顧客利便性の確保に努める。

 こうした“オールジャパン”構想が遅まきながら浮上したのは、仙谷、前原両大臣のベトナム訪問が引き金となったからだ。だが、トップセールスが期待される鳩山首相には、どうやらその余裕がなさそうだ。