磯山 友幸磯山友幸「経済ニュースの裏側」

2016年01月27日(水) 磯山 友幸

おかしくないか? 国家公務員の給料がコッソリ増額されていた
「財政危機」を叫ぶ一方、自分たちには大盤振る舞い

【PHOTO】iStock

待遇改善は「まず身内から」

国家公務員の給与と賞与を引き上げる改正給与法が1月20日の参院本会議で可決、成立した。一般職の月給を平均0.36%アップし、夏と冬を合わせたボーナス(期末・勤勉手当)は0.1ヵ月分増やして月給4.2ヵ月分となる。

実はこれ、あと2ヵ月余りを残すところとなった2015年度の給与・賞与である。昨年4月に遡って適用されるため、引き上げ分はまとめて追加で支給される。ちょっとしたボーナスをもう1回もらうようなものだ。

給与とボーナスの引き上げは2014年度に続いて2年連続。2年連続の引き上げは24年ぶりだという。1991年度以来なので、まさにバブル期以来である。

これによって一般職の平均年間給与は666万5,000円と、5万9,000円増える。もっともこれは一般職の場合である。本省の課長のモデルケース(配偶者と子ども2人)の場合、年間給与は1,195万7,000円と14万8,000円も増える。事務次官は2,270万円と21万円の増加だ。もちろん安倍晋三首相や大臣など政府の役職に就いている国会議員の給与も増える。

安倍首相は政府の税収が大幅に増えたことなどを挙げ、アベノミクスの成果だと強調している。2015年度の一般会計税収は56兆円台と当初見込んでいた54兆5,250億円から2兆円近く増える見通しだという。1991年度の98兆8,000億円以来24年ぶりの高水準だ。それを広く国民に「均てん」するとしている。均てん(均霑)とは等しく恩恵を及ぼすという意味である。

年明けに成立した補正予算では高齢の低所得者に一律3万円を配る「均てん」策が盛り込まれた。野党からはバラマキだと批判されたが、その陰で、「身内」の給与引き上げを着々と進めたのである。一律3万円は1回限りだが、給与は上がればそれが来年度以降のベースになる。アベノミクスの成果の均てんは「まず身内から」だったわけだ。

そんな甘い政策に、アベノミクスを徹底批判しているはずの民主党も賛成した。公務員の労働組合が有力な支持母体だからだろう。「待遇改善」に異を唱えることができないのだ。

維新の会も賛成に回ったが、統一会派を組んだ日本を元気にする会の松田公太代表は反対票を投じた。

「大借金・大赤字の会社で、給与やボーナスを上げているところなど、聞いたことがありません」

松田氏は自身のブログでこう批判した。

確かに、国は1,000兆円を超える借金(国債及び借入金、政府短期証券の合算)を抱えている。財務省は繰り返し、このままでは国債が暴落しかねない、と危機感を煽って来た。税収が増えたと言っても、一般会計歳入は60兆円に届かず、一方で歳出は100兆円に迫る。

国債費を除いた政策的な経費をどれだけ税収で賄えているかを示す「基礎的財政収支(プライマリー・バランス)」も大赤字が続いている。にもかかわらず、自分たちの給与はドンドン増やしているのだ。

第2次安倍内閣になって公務員給与は大幅に増え続けている。実は、この2年間での引き上げは10%を超えている。最も大きかったのは、東日本大震災による減額措置を白紙に戻したことだ。

民主党政権の時に起きた東日本大震災では、復興財源を確保するために所得税などに上乗せする復興特別税を創設した。その際、国家公務員も「身を切る」として、給与を平均7.8%、賞与も約10%減額したのである。2012年度と2013年度の事だ。それを安倍内閣は2014年4月にすっかり元に戻したのだ。

7.8%減を元の水準に戻せば、8.4%の増加になる。ボーナスも10%減が元に戻ったので11%以上増えた。

それに加えて、2014年度は月給の0.27%アップと、賞与の0.15ヵ月分引き上げも実施したため、人によっては2割近くも年収が増えた。

減額措置を元に戻したことで年間3,000億円の人件費が増えた。ちなみに復興特別税での所得税上乗せ分も約3,000億円。国民が負担する復興税の方は白紙に戻されるどころか2037年まで永遠と続く。

大赤字続きの組織で「給与増」って…

加えて今回の給与法改正では国の人件費は約756億円膨らむことになった。税収の増加は景気が良くなったためばかりではない。消費税率の引き上げなど国民の負担増の上で出てきた数字だ。それをさっそく身内に大盤振る舞いではたまらない。いつになっても財政再建などできるはずはない。

なぜ、こうも厚顔無恥な給与引き上げが続くのか。

「いやいや、公務員の給与はもともと安いのだから目くじらを立てなくても」という声も聞こえてきそうだ。現場の公務員の給与は確かに高いとは言えないが、役所は係長や課長補佐、課長などポストが上がるごとに給与が大きく増える。

民間ではそんな中間管理職ポストなど廃止されて久しい。しかも、官僚の場合、同期入省横並びでポストが上がっていく。一度そのポストに就けば、降格されることはまずない。

公務員給与は人事院の勧告に従って内閣が実施することになっている。その際、基準となるのが「民間の給与」だ。今回引き上げられたのも、民間給与に合わせるというのが大義名分である。

だが、人事院が比較に持ち出す「民間企業の平均」というのがくせ者なのだ。今回完全実施された人事院勧告によると、民間の月給の平均は41万465円。これに対して公務員は40万8,996円だから差額の1,469円を引き上げるべきだとした。

ところが、人事院が参考にする「民間」は圧倒的に優良大企業に偏っているのだ。このあたりの事情は霞が関の事情に詳しいドクターZが本欄に書いている。(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37624

そもそも赤字を垂れ流し続けている組織が、普通の民間企業と同じ給与水準を保つこと自体、問題だろう。

いっそボーナスなしにせよ

前述の松田氏もこう書いている。

「(国は)深刻な赤字の状態が続いています。にもかかわらず、実際に調査される企業においては、経営状態が全く考慮されておりません。もし、民間企業との比較をするのならば、大借金を抱えていて、大赤字の会社と比較するべきです」

正論だろう。

本気で財政を再建したいなら、幹部公務員の給与を業績連動にすることだ。国の借金を増やした主計局長は減俸3割とか、少なくともボーナスはなしとすれば少しは本気で借金返済を考えるだろう。大臣にしても同様である。

それよりも何よりも、財政状態が危機的だというのなら、プライマリー・バランスが黒字になるまで、一切の昇給はストップすべきではないか。民間企業で言えば、プライマリーバランスの赤字は、本業である営業赤字と一緒。営業赤字が続く会社でベースアップやボーナスが望めるはずはない

人事院もどうせ「民間並み」を勧告基準にするのなら、きちんと民間の常識を制度に反映させるべきだろう。