市川 裕康市川裕康「デジタル・キュレーション」

2014年12月27日(土) 市川 裕康

『デジタル・キュレーション2020』メディア業界「100年に1度の変革期・黄金期」をどう生かすのがよいか」
市川裕康 (ソーシャルメディア・コンサルタント)

海外のデジタルニュースメディアトレンドに関する専門サイト・専門家のウェブサイト

新しいメディア業界の黄金期

2014年の国内外のメディアトレンドを振り返る際、強く感じられることがあります。モバイル化、ソーシャルメディア経由での情報流入が増えたことで、私たちの日々のニュース・情報収集のスタイルが大きく変わりました。

電車などに乗った際、あまりに多くの人がスマートフォンの画面に見入っている風景も次第に当たり前になっていくのかもしれません。

国内での大きな出来事としては、SmartNews、Gunosy、NewsPicksなどのニュースキュレーションアプリが大きな話題になりました。多額の資金調達、優秀な人材の参画も進み何十万、何百万ものユーザーを獲得、スマートフォン経由で多様な情報源から選別されたニュースを消費することが既に生活の一部になっている方も多いのではないでしょうか?

海外に目を転じると、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどの老舗大手新聞社がデジタル化に必死に取り組む一方で、新興メディアが次々と誕生し、資金調達から著名記者・編集者の移籍、新しいビジネスモデルの提示など、「100年に1度の変革期」「新しいメディア業界の黄金期」などの言葉が飛び交い、国内外でメディアの変革・イノベーションに関してのカンファレンスやセミナーなども数多く開催されました。

ネコの写真や注目を惹くリスト形式のタイトルなどで注目を集め、特にモバイルデバイス、Facebookなどのソーシャルメディア経由で若い世代からのアクセスを急速に伸ばしている「バズフィード(BuzzFeed)」というニュースサイトがあります。

2014年11月には月間訪問者数が2億人、Youtubeチャンネルの視聴数は7.5 億回を超え、2014年の年間売上額は1億ドル(約120億円)を超えたと発表されるほどの規模になりました。(ボーナスとして社員全員に来年アップルウォッチが支給されるなど、勢いのあるニュースが1年を通じて数多く報道されていました)。

バズフィード(http://www.buzzfeed.com/)も日本進出

1年前には約300人ほどだったスタッフはいまやピューリッツァー賞受賞記者含むベテラン記者含め約700名の規模に増え、シリアやウクライナなどの紛争地を含む20カ国に100人以上の記者を擁し、英国、オーストラリア、ブラジル、ドイツ、スペイン、フランス、インドなどの各国版サイトも次々と開設され、日本語版も近い将来開設が予定されているとのことです。

日本国内ではネガティブな印象を持たれているいわゆるバイラルメディアサイトの先駆けとして知られているバズフィードではありますが、同社がメディア業界に持ち込んだインパクトは今後のメディアのあり方を考える際に無視できない数多くのエッセンスが込められています。コンテンツをより多くの人に届けるためのモバイル・ソーシャルに注力した「読者開発(Audience Development)」分野におけるテクノロジー活用、スポンサード・コンテンツなどの広告手法、データ分析の徹底的な活用などです。

新しいメディアをめぐる5つの問題点

このようにメディアやソーシャルメディア全般についての数多くの議論、イベントが開催される中で、気になっていることがあります。5つ、箇条書きにしてご紹介させていただきます。

【1】業界の動き・変化が早くキャッチアップが困難であり、新しいサービスの登場、利用者の急増、社名・サービス名&内容の変更、合併・吸収・倒産なども頻繁に発生している。

【2】 「メディア」そのものが多様な捉え方があるが故、混乱をもたらしていること
例:①ニュース・報道の取材対象企業・サービスとしての話題・捉え方、②ニュース・報道のあり方に大きな変革・イノベーション・課題をもたらしつつあるメディア・テクノロジーとしての捉え方、③一人の利用者として日々の生活の中で利用することで、働き方に影響を与えるツール・道具としての捉え方。

【3】  オンライン・メディアについて語る際、相手(視聴者)があまりに多様な捉え方、理解度、習熟度(リテラシー)を持っていることによる混乱がもたらされていること。職場環境・規模・業界・職種、個人の興味・年代・性別、居住地などにより理解度、「あたりまえ」としての前提が異なることによる共通認識の欠如

【4】 モバイルデバイスの利用が急増し、体感的にオンライン・メディアに馴染んでいる層と日々接する機会がない層との乖離がますます広がり、それを埋めるための学習・啓蒙の機会も非常に限られている現状・現実 

【5】  海外で起きている・語られているメディア・イノベーションの最新の情報が日本の文脈(コンテキスト)でタイムリー報じられることが非常に少ないことで、グローバルなトレンドから遅れが生じてしまっていること

これらの課題や現実は2015年以降、それぞれのメディアに関わる多様な企業がしのぎを削りながらサービスを改善することで、解決につながっていくと期待しています。また一方、紙面やオンライン上でも議論がなされていくことを願っています。

一点、私自身が個人的にも是非取り組んでいきたいと思っていることがあります。海外で起きているトレンドや事例の中から、日本の文脈においても関係性・関連性がある情報・ニュースをタイムリーに届けることです。例えば以下の3名の方は既に定期的に海外のメディア・イノベーションを丁寧にレポートしてくださっていて、参考になる情報が満載です。ただ、もっともっと多くの人・組織がこうした議論に参加することが必要なのではないかと、感じています。

藤村厚夫氏:「メディア・ディスラプション」 (http://mediadisruption.net/
平和博氏:「新聞紙学的」(http://kaztaira.wordpress.com/
佐藤慶一氏:「メディアの輪郭」(http://media-outlines.hateblo.jp/

2020年のメディアのあり方に向けて期待したいこと

2020年、とタイトルに書かせて頂いたのは、やはりオリンピック・パラリンピックの開催に向けて日本のメディア空間の変化を期待しているからです。海外からのタイムリーな情報収集だけではなく、国内で起きているローカルな出来事・ストーリーをグローバルな言語で世界に発信することが切実に必要になってくることと思います。

一部の大手メディアが日本語の記事を翻訳して配信するというようなものではなく、既に英語を含む多言語で情報発信をしている国内外の専門家、ブロガーらによるメディア・プラットフォーム構築などの実現にむけて、何か自分もささやかながら取り組んでみたいと思っています。

全ての人がブロガーになれなくとも、地域・テーマなどに特化したトピックに関するニュース記事を見つけ、オンライン上で整理して配信する、いわゆる「キュレーション」を個人や組織単位でも実施することで、より豊かなオンライン・メディア空間が盛り上がっていくことを切に願っています。

現代ビジネスにおいて「デジタル・キュレーション」としての執筆は2013年9月以来となりますが、改めて今回再開させていただくことにいたしました。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

*冒頭の画像で紹介しているウェブサイトは海外で起きているメディア・ジャーナリズム分野の最新のトレンドをタイムリーに紹介してくれる、筆者が頼りにしている情報源の一部です。

http://www.niemanlab.org/
https://www.journalism.co.uk
http://search.gigaom.com/author/mathewi1/
http://buzzmachine.com/
http://newsonomics.com/
http://www.nytimes.com/column/the-media-equation
http://www.mediabistro.com/tvnewser
http://www.pbs.org/mediashift/

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