週刊現代経済の死角

2012年07月16日(月) 週刊現代

このスーパー異常気象には意味がある
なんかそろそろ来そう 東京湾巨大地震

 東日本大震災から、1年3ヵ月が経過したいま、私たちは大自然の猛威への恐怖を忘れかけていないだろうか。だが日本の地殻と気候は、すでに大変動期に入っている。本当の恐怖はこれからだ。

過去のデータが信用できない

 早朝、ゴウ、という異様な音で目が覚めた。外に出てみると、瞬く間に道路が川のようになり、膝の高さまで水が押し寄せた---。

「60年近く生きとって、はじめて見る『天気』があるとは、思わなかったね」

 福岡県在住の男性(59歳)はこう語ってくれた。7月3日から降り始め、大分県や福岡県を襲った豪雨は1時間の雨量が観測史上最多の91mm(大分県中津市耶馬渓町)を記録した。こたつ板ほどの広さ(1m2)に2リットルサイズのペットボトルが約45本ぶちまけられたことに相当する水量だ。

 近頃、日本の気候はどうもおかしい。今年に入ってからだけでも、

●1月 記録的寒波。各地で大雪。1月下旬の北日本の平均気温は今世紀最低の平年比マイナス1・4度。

●4月 爆弾低気圧が日本縦断。各地で台風並みの突風、豪雨に襲われた。5人死亡、350人負傷。

●5月 茨城県つくば市で竜巻とみられる突風発生。12kmにわたって民家や工場をなぎ倒し、男子中学生1人が犠牲に。

 など、「スーパー異常気象」ともいえる記録的な気候の異変が止まらない。

 7月も早々から全国で真夏日が続出し、「この夏一番の暑さ」というフレーズが飛び交うなどイヤな気配が立ち込めている。

 気象庁が発表した7月~9月の「3ヵ月予報」では今夏は全国的に暑さ、降水量ともに平年並みとされている。だが予報をよく読むと、不可解な文言が目に入る。「今回の予測には不確定性が大きい」。これは一体、どういう意味なのか。

「天候を左右する海水温や偏西風などの数値予測は、過去30年のデータから約50通りの異なる予想をはじき出し、平均を取って作ります。今回はほとんどのパターンで赤道付近の海水温が高くなるエルニーニョ現象が現れていました。

 ところが、我々は冬の終わり頃から『エルニーニョになる』と予想しているのに、現実には一向に起きてこない。それで『不確定性が大きい』としたのです。

 実は昨年も予想に反してエルニーニョが起きず、逆に海水温が低くなるラニーニャ現象が起きてしまった。原因はまだよくわかっていません」(気象庁予報課)

 気象庁も首をかしげる、奇妙な気候の変化。これから一体、何が起ころうとしているのか。

「残念ながら、激甚災害が日常的に起きてしまうかもしれません。すでに風の吹き方ひとつ取っても、以前とは違う、極端なものに変わってしまったのです」

 と話すのは極地や砂漠など辺境の調査を行ってきた長沼毅広島大学准教授だ。

「最近、温暖化が危惧される一方、地球の寒冷化を主張する意見もあります。ふたつは正反対ですが、大きな気候変動である点では同じです。気候変動期の特徴は『激甚化』。これまでも起きていた現象が極端になってしまうということです。

 たとえば、竜巻に襲われたつくば市は昔から雷で有名です。つまりもともと、雷を発生させる積乱雲が発達しやすい地域だった。それが現在では、極端に発達してスーパーセル(巨大積乱雲)にまでなってしまうようになったのです」

 雨、風、雷、熱波・・・・・・。これらが発生する頻度や規模、変化の速さが極限化し、記録的なスーパー異常気象を引き起こすのだ。

 あらためて気象庁予報課に聞くと、最近になって、ようやく少しずつエルニーニョ現象が発生し始めたという。こうなると基本的に日本は多雨・冷夏の傾向となり、残暑が厳しい。一方で、西日本と沖縄・奄美地方では太平洋高気圧が張り出し、晴れて暑い日が多くなるという予想もある。

「氷河期」が近づいている?

 仮にこの気候が極端なものになったとすると、単純に言えば、東日本は日照不足で農作物が不作に、西日本は酷暑で水不足となる地域が増えると考えられる。

 天候の急変が起こりやすいかを判断する、ひとつの目安は偏西風の蛇行だ。

「偏西風が北に離れていれば日本は晴れて暑くなり、南下してくれば竜巻や急な大雨に見舞われたりしやすいでしょう。気象庁HPで公開している『高層天気図』では、偏西風の通るおよその位置に矢印をつけてあるので、参照してみてください」(気象庁予報課)

 前出の長沼准教授は、この激甚化の先に、さらに恐るべき未来が待っているかもしれないという。

「長期的にみて、地球が温暖化と寒冷化のどちらに向かうかといえば、私は寒冷化だと思います。ひとつの根拠として、過去の気候変動を見ると、10万年間の氷期(氷河期)と1万年間の間氷期(温暖な時期)が交互に繰り返していて、いまの間氷期はそろそろ終わるという考え方があります。もしそうだとしたら、今は10万年続く氷期の入り口かもしれないのです」

 かつての氷河期には海さえも凍りつき、大陸と地続きになった日本列島に日本人の祖先が移住してきた。気候の大変動を経た数百年後には「海開き」など不可能になるかもしれない。

 今夏、日本を襲うかもしれないのは「天」の異変ばかりではない。足元の「地」でも変動が起こっている。「天災地変」という言葉もあるように、古来、賢者たちは天と地の変異をワンセットでとらえてきた。

 国土地理院地理地殻活動研究センター地殻変動研究室で日本各地に設置されたGPS(全地球測位システム)データの分析に携わっている西村卓也主任研究官はこう話す。

「東日本大震災では、それまで長い期間、太平洋側から東日本を押していた大地の力が一気に解放されました。今まで北西向きに押し潰されていた東日本は、圧力が抜けたことで、逆に太平洋側に向かって東に伸びているのです」

 震災直後、宮城県の牡鹿半島は約5・3m東に移動。震源付近の海底に至っては24mも移動したとされる。

「この動きは現在も続き、1ヵ月に1cm程度は東に動いています」(同前)

首都直下型のイヤな感じ

 つまりM9に達した超巨大地震のエネルギーは、いまだにこの日本列島に強い影響を及ぼしているのだ。そしてその力が、次なる大地震や火山の噴火を引き起こす可能性が高まっている。気象庁地震火山部火山課は日本のシンボル、富士山に注視しているという。

「東日本大震災後の3月15日に富士山の直下を震源とするM6・4の地震が発生して以来、富士山で地震活動が高まっています。

 今年2月には3合目付近で湯気が出ているのが観測されています。地下で熱せられた水蒸気が地上に出てきた。富士山はまさに『活きている火山』なのです」

 さらに、鹿児島県の桜島では7月1日に年明けからの噴火回数が600回を超えた。観測史上2番目のスピードだ。

 東北地方では福島の吾妻山で震災以前には見られなかった場所に火山性ガスの噴気孔が出現。秋田駒ヶ岳では山頂付近の地熱が上昇し、木々が枯れ始めた。

 一方、6月30日夜、北海道・大雪山系の十勝岳で異変が起こった。札幌管区気象台の設置した高感度カメラで、夜間、火口が真っ赤に燃え上がるような発光現象が撮影されたのだ。

「噴気孔の温度が上がって付着していた硫黄が燃えたと考えられます」

 と話すのは、北海道大学地震火山研究観測センターの村上亮教授だ。

「発光現象や硫黄の噴出、噴気の増加など、火山活動の高まりが表に出てくることを『表面現象』と呼びます。十勝岳で直近に起きた過去3回の大きな噴火では、いずれも表面現象が増加した後、マグマが関係する噴火が起きました」

 十勝岳では大正時代以来、ほぼ30年おきに大規模な噴火が起きている。1926(大正15)年の大正噴火では大規模な水蒸気爆発で中央火口丘の半分が崩壊。山頂周辺の残雪が融けて泥流となり、噴火後25分で約25km離れた上富良野市街に到達した。この噴火による死傷者・行方不明者は344名、倒壊した家屋は372棟にのぼっている。

「今回の現象がすぐに噴火に結びつくかはわかりませんが、過去の履歴を考えると中長期的には今後、噴火が起こるのは確実だと思います。

 地震はいつ起こるかわからないが、噴火は火山性地震の増加などで前兆がわかるから、まだましだ、という人もいるようです。確かにそういう側面はありますが、過信してはいけません。火山でも、地震などが起き始めてすぐに噴火に至る場合もある。専門家が警告し、行政が避難などの対処を取るのも必ず間に合うとは言い切れない。今後も常に油断をしないで見ていく必要があると思います」(同前)

 活発化しているのは火山活動ばかりではない。首都を襲う大地震の可能性もまた、高まっている。

 7月3日、昼前の関東地方を最大震度4、M5・4の地震が襲った。震源は房総半島南端、館山市付近の東京湾だ。

 地震学が専門の武蔵野学院大学・島村英紀特任教授は、「この場所は、元禄型関東地震の震源と極めて近い」と指摘している。

 右の図を見てほしい。これは6月4日から7月4日の1ヵ月間に、東京湾周辺から房総半島南端付近で発生した地震の震源をプロットしたものだ。

 7月3日のM5・4地震は、政府の地震調査委員会が発表している、元禄型関東地震、大正型関東地震の双方の想定震源域に含まれていることがわかる。

 元禄の関東地震は、1703(元禄16)年に発生し江戸城の門などが倒壊。小田原城下は大火となり死者約2300名。関東全域の12ヵ所で火災が発生し、被災者は3万7000人にのぼった。この4年後に紀伊半島沖を震源とする宝永地震が発生し、富士山の宝永噴火につながっている。

スカイツリーは大丈夫か

 一方の大正関東地震は、1923(大正12)年に発生した、いわゆる「関東大震災」だ。東京は壊滅し、被災者190万人、死者・行方不明者10万5000人以上。日本災害史上、最大級の被害を出している。

「関東地震のような、いわゆる首都直下地震は、江戸時代から17年に1回ずつ起こっていた。ところが関東大震災以来、パッタリなくなっています。東日本大震災の影響もあるはずですから、もういつ起こってもおかしくないと思います。

 震源が近い場合、マグニチュードは小さくても海底でM8~M9級の地震が起きたときと同等か、もっと強い揺れが感じられると思います」(前出・島村氏)

 関東大震災では8年前から周辺で地震が相次ぎ、東京湾の入り口である浦賀水道でも前震が起きている。今回の地震も、東京湾での大地震の前兆である可能性は否定できない。

 さらに、気になる点もある。もう一度、上の図をよく見てほしい。フィリピン海プレートが陸側のプレートに沈み込む相模トラフの北縁に、地震が頻発しているエリアがあるのだ。いま、東京の喉元である房総半島南端周辺で、確実に何かが起きようとしている。

 今年4月に東京都が発表した被害想定では、M8・2の元禄型関東地震が発生した場合、広い範囲が震度6以上、大田区や品川区、町田市の一部では震度7の揺れに襲われ、死者約5900人、負傷者は約10万8300人に達するとしている(冬18時発生の場合)。

 さらにこのタイプの地震で都は唯一、津波の発生を想定している。高さは最大2・61mだが大田区の埋め立て地や江東区の海抜ゼロメートル地帯などが襲われ、約2500棟の建物が全半壊する予想だ。

 しかもこの被害想定には、海抜ゼロメートル地帯にある地下鉄の駅や換気口から浸水が起こることは含まれていない。対策が急がれているとはいえ、東京メトロ東西線東陽町駅や門前仲町駅、半蔵門線清澄白河駅、そして東京スカイツリーの足元、押上駅などはいまだに浸水の可能性があり、最悪の場合、地下鉄のトンネル内で溺れる人が続出する恐れもあるのだ。

 この夏、天と地から迫り来る大異変。あなた自身と家族を守れるかは、日本が直面する危険を認識し、覚悟と備えができるかにかかっている。

「週刊現代」2012年7月21・28日号より