フライデー経済の死角

2012年06月17日(日) フライデー

緊急レポート 油断していませんか19万棟が炎上し、高さ100m、秒速50mの火災旋風が東京を焼き尽くす
警告!首都直下地震が必ず起きる恐怖

昨年の3月11日、東京・新宿区にある抜弁天の坂道が崩壊した時の様子。この付近は震度5を記録している
東日本大震災発生当日、帰宅難民のために設けられた都内の受け入れ所。サラリーマンや学生が押し寄せた

 ドドッと突き上げるような揺れに(ついに来たか)と身が縮まるが、(すぐに収まるだろう)という楽観もある---。

 地震が起きる度、こんな感情に揺れている人は多いだろう。3・11から1年以上が過ぎても日々地震が頻発し、特に東京では「いつ起きてもおかしくない」と首都直下地震のリスクが叫ばれている。しかし、その警鐘を切迫感を持って受け止めている人はどれだけいるだろうか。

 首都圏の直下を震源とするM(マグニチユード)7級の地震が起きる確率について、昨年9月に「30年以内に98%」と計算した東京大学地震研究所などの研究チームが、その確率が「30年以内に70%」に修正されたと発表したのは5月24日のことだ。最初の計算は昨年3月11日を起点とし、昨年9月までの地震を分析していたが、修正データでは昨年12月31日まで期間を延ばして分析。その結果、首都直下地震発生のリスクが減じたという。

 このニュースに触れて胸を撫で下ろした人も多いのではないか。そうでなくても東日本大震災から1年以上が経ち、少しずつ危機感が薄れていくのは仕方ないのかもしれない。しかし、その油断は命取りになりかねないのだ。

 武蔵野学院大学特任教授(地震学)の島村英紀氏は、「そもそも予測不能な直下地震の予測数値に一喜一憂するのはナンセンス」と断わった上で、「首都直下地震発生の確率は高まっている」と警告する。

「日本で起きる地震には『海溝型地震』と『直下地震』の2通りがあります。日本列島の下では北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレートの4つのプレート(岩盤)が押し合っており、その衝突のエネルギーによって起きるのが海溝型地震です。

天井が落下して2人が死亡した九段会館(東京都千代田区)。地震発生時は専門学校の卒業式の最中だった

 その4つのプレートが地下で交差していることから、地震学上、東京は〝最も危険な都市〟と言えます。海溝型地震のMは8クラスで、発生する場所が分かっており、比較的予想が立てやすいとされていますが、直下地震を予測することは不可能です。プレートの衝突で直接引き起こされるのではなく、それによって生じる〝ねじれ〟や〝ゆがみ〟のエネルギーが大陸の下で発散するのが直下地震であり、それがどこで起きるかは分からない。ただし、関東近郊では地殻の力バランスが狂って東日本大震災の余震ではない地震が頻発し、震源地も海から陸地に移っていることには要注意です」

 東日本大震災の影響で首都園の直下には相当のゆがみやひずみのエネルギーが生じており、首都直下地震のリスクは非常に高いと言うのだ。

炎の竜巻に飲みこまれる!

 首都直下地震の発生について、京都大学都市社会工学専攻の藤井聡教授も次のように警告する。

「歴史的に見れば、首都圏ではM6.5~8クラスの地震が30~50年毎に起きています。1923年の関東大震災(M7.9)まではかなり定期的に揺れていたのに、首都圏では大きな地震が来ないまま約90年が過ぎているのは不気味です。そして、特に危惧されるのが、東日本大震災のように三陸沖で発生した海溝型地震との連動性です。三陸沖では過去2000年間に巨大地震が4回発生していますが、その前後10年に首都直下型と見られる大地震が必ず起きている事実があります」

 藤井氏の指摘をまとめると、下記のようになる(○は三陸沖で起きた地震。●は首都圏で起きた地震)。

○869年、貞観地震(M8.3~8.6)
●878年、相模・武蔵地震(M7.4)

○1611年、慶長三陸地震(M8.1)
●1615年、慶長江戸地震(M6.5)

○1896年、明治三陸地震(M8.2~8.5)
●1894年、明治東京地震(M7)

○1933年、昭和三陸地震(M8.2~8.5)
●1923年、関東大震災(M7.9)

 藤井氏が解説する。

「少なくとも過去2000年間の記録を見ると、三陸沖の巨大地震と首都圏の大地震は連動している。『だから今回も起こる』と早計には言えないが、この歴史的事実は強い説得力を持っています」

 今この瞬間、あなたの〝真下〟を震源とした大地震が起きる---そんなシナリオにも現実味があるということを肝に銘ずるべきだろう。

23区の逃げ場を網羅

 東京都防災会議の地震部会が今年4月に作成した「首都直下地震等による東京の被害想定」報告書によると、東京湾北部を震源とするM7.3の地震が起きた場合、死者は9700人に達し、火災被害は実に18万8000棟に上る見込みだ。

〝今日〟起きるかも知れない大地震を、どうすれば生き残ることができるのか。その大きなヒントとなるのが死者・行方不明者10万人超の被害を出した関東大震災に他ならない。最も被害が甚大だった東京では収容遺体6万198体のうち、焼死者は実に5万2178体に上り、建物倒壊による圧死者を凌駕していた。関東大震災が「大正大震火災」と呼ばれた所以だが、東京が再び強震した時、逃げ惑う人々が見るのはあの時のような火焔地獄かも知れない。山形大学工学部・物質化学工学科の桑名一徳准教授が語る。

「関東大震災では〝火災旋風〟と呼ばれる現象が大きな被害を引き起こしました。火災旋風とは、燃えている建物の形状で生じたり、火焔が空気を取り込もうとする上昇気流と、横風の組み合わせで生じたりする巨大な炎の竜巻です。竜巻部分の火柱は数十mから100mに上り、周りを延焼させながら秒速10m程度で移動する。関東大震災の時は、本所(現在の墨田区)にあった旧陸軍被服廠跡の空き地で巨大な火災旋風が発生し、そこに避難してきた約4万人が命を落としています。この火災旋風の大きさは半径約1㎞にも及んでいた可能性がある」

 巨大な火焔の竜巻が、人々を巻き上げながら縦横無尽に荒れ狂う---。関東大震災の時は、秒速50mの猛スピードで移動する火災旋風も発生したと考えられている。阿鼻叫喚の地獄絵図だが、老朽化した木造住宅が密集する山手線の外周部や環七沿いには、一度火の手が回れば90年前の悪夢が蘇る可能性は否定できない。そんな時、生死を分かつのが、「どこに逃げるべきか」という判断だ。

 本誌は直下地震のリスクの高まりから、『首都直下地震 東京23区震災避難マップ』を緊急出版した。東京23区の主要な避難所を詳細に説明するとともに、各区毎に火災危険度、建物倒壊危険度、津波危険度、液状化危険度、崖などの崩落危険度の高い地域をマップと写真で示した内容だ。職場や学校、自宅で被災した時、安全な場所に最短距離で向かうための情報をオールカラーで紹介している。

 明日でも明後日でもなく、〝今この時〟に起きるかも知れない首都直下地震。東京に住む誰もが、その揺れに備える必要がある。

「フライデー」2012年6月22日号より