週刊現代経済の死角

2012年05月31日(木) 週刊現代

週現スペシャル「生活保護大国」ニッポンの真実
働くより、もらったほうがラクで、トク!?おかしくない?そのカネは国民の血税です

 この国は年金よりもっと矛盾だらけの福祉制度を抱えている。200万人以上の受給者に血税3・7兆円が費やされる生活保護だ。若年層まで生活保護を申請し始め、もうパンクするのは時間の問題だ。

(1)こんなことが許されるの!?
母親が受給 年収5000万円のお笑い芸人「次長課長」河本準一の場合

やむなく出すものなのに

 生活保護とは、「人間として最低限度の生活」ができない国民を国が救済するシステムである。

 言い方を変えれば、「保護してもらわなければ最低限度の暮らしも送れない、下手をしたら死んでしまう」人にだけ適用される、国家としての「最後のセーフティネット」だ。

 戦後間もなく、'50年に制度がスタートした時の受給者は205万人だった(統計は'51年から)。日本の経済成長にともない受給者は減り続け、'95年には88万人となったが、そこから増加に反転。リーマンショック後の急増で昨年7月には'51年を超える過去最高を記録し、その後も増え続けている。

 最新の数字('12年2月)では受給者数は209万7401人で、生活保護費に3兆7000億円以上もの税金が費やされている。

 では、この約210万人は、全員が「生活保護がなければ死んでしまう」人々なのか。答えはノーだ。

「こんなケースがありました。大阪の西成区で生活保護費を受給していた女占い師は、実は神戸市に豪邸を構え、数千万円の預金を持っていたのです。占い師がテレビに出演していたのを市の職員がたまたま見て、おかしいと気付いた。他にも暴力団員の身分を隠して受給するケースなど、不正受給の例は枚挙にいとまがありません」(大阪市職員)

 全国一の「生活保護天国」と呼ばれる大阪市では、実に市民の18人に1人が生活保護を受けている。そのなかには、前述のような不正受給者も相当数含まれているのが実情だ。

 いま、ある人気お笑い芸人にも疑惑の目が向けられている。その芸人とは、週に約10本のレギュラー番組を持つ、次長課長の河本準一(37歳)である。

 発端は女性セブン4月26日号の、『年収5000万円超人気芸人「母に生活保護」仰天の言い分』というレポートだった。

 記事では伏せられていたが、その後ネットメディアで河本の実名が明かされ、さらに5月2日、自民党の片山さつき参院議員が〈河本準一氏の「年収5千万円、母親生活保護不正受給疑惑」について、厚労省の担当課長に調査を依頼しました〉と題するブログをアップしたことで、騒動は政治レベルに発展した。

 この問題に積極的に関わろうとした経緯を、片山議員はこう説明する。

「理由は簡単で、許しがたい行為だからです。誤解のないように言っておくと、河本さんや河本さんの母親を個人攻撃する意図はありません。ただ、公人である河本さんが、週刊誌に報じられ、ネット上でも話題になっているのにお咎めなしでは、国民に対する示しがつかないでしょう。生活保護費がいかに国の財政を圧迫しているか、かねてから問題提起してきた私としては看過できなかった」

 なぜ河本母子の行為が許しがたいのか。その論理は明確だ。

「生活保護は『もらえるならもらっておく』ものではない。もらわないと生きていけない人に、やむなく出すものです。なぜなら生活保護費の原資は100%血税だからです。一般国民が納得できるケース以外に出すべきではない。

 河本さんの場合、年収5000万円はそう外れてはいない数字だと聞いていますが、それが3000万円でも2000万円でも問題は同じです。2000万円の年収のある息子がいて、親子関係も良好なのに、母親が生活保護費をもらっていたら周囲の人は誰も納得しないでしょう」

 生活保護法には「民法に定める扶養義務者の扶養は生活保護に優先する」旨明記されている。生活保護は家族の援助が期待できる場合は受けられない、と法律でも決まっているのだ。

 親子関係が断絶している場合、扶養義務が免除されることもある。だが、河本母子がそうでないことは、他でもない河本自身が公表している。テレビで「パンチパーマのオカン」ネタを得々と語り、『一人二役』という自著では母との思い出を綴った上で、表紙に母親とのツーショット写真まで掲載しているのだ。

「出した市役所が悪い」と反論

 親子仲が良く、息子は数千万円の収入がある。これだけで生活保護を受けられる理由は皆無だろう。さらに河本は『一人二役』でこう書いている。

〈ある大病を克服してからは、(母親は=編集部註)この十年近く通院している。むろん、オカンの大好きな酒とタバコにはドクターストップがかかった。

 俺たち家族、親戚中もこぞって、酒とタバコを止めてくれと、なんべんもなんべんも懇願し続けてきたが(中略)しまいに俺たちは根負けした。「それやったら好きにしい」と諦めるしかなかった。そんなわけで、オカンはいまだ現役でザルといってもいいほどの酒豪を貫いている〉

 河本としては、オカンの「無頼」をウリにしたかったのだろう。だが、生活保護を受給していたとなるとこの部分の読み方はまったく変わってくる。タバコと酒は言うまでもなく嗜好品であり、生命維持に必要不可欠なものではない。

 血税が河本のオカンの酒とタバコに消えているという事実、それを息子が著書でウリにしているという事実を知れば、多くの国民が憤りを覚えるに違いない。

 本誌は今回、河本の岡山市内の実家も取材した。それによって、生活保護問題の「根深さ」を思い知らされることになる。

 取材に応じた河本の姉はこう語ったのだ。

「不正受給と言われるのは家族として心外です。じゃあ、なんで市役所が(受給を)認めたんですか! 不正だったら認められないでしょ!」

---だが、いまの河本さんには母親を扶養できる稼ぎがあるのでは?

「準一は母親を東京に呼ぼうとしたこともあったんです。でも母がイヤだと言うのだから仕方ないでしょ」

---市の福祉事務所から、弟さんの稼ぎについて訊かれたことは?

「私が知る限り、ないと思います。詳しいことは知りませんけど」

---片山議員は徹底的に調査すると言っている。

「いいんじゃないですか、徹底的にやれば。でも、後で謝ることになるんじゃないですか」

---どういう意味?

「言われているような不正はないということです」

 河本の姉いわく、母親が身体を壊した約10年前に生活保護を申請して認められた。その頃は河本も売れない芸人で、母親を扶養する能力がないと市役所に認定された。

 一度認定されたものを継続していただけで、不正ではない、それが河本家の言い分なのである。

 彼らは生活保護を「獲得した権利」だと主張する。自治体から認められた権利をなぜ他人に批判されなければならないのかと怒る。

 このように、生活保護費の受給が「国民の権利」、もっと言えば「オイシイ権利」だと考える人間が増えていることが、現在、日本が直面している「生活保護危機」の根底にある。

 女性セブンの報道によれば、河本は飲み会でよくこう言っていたという。

「(オカンに)役所から『息子さんが力を貸してくれませんか』って連絡があるんだけど、そんなん絶対聞いたらアカン! タダでもらえるんなら、もろうとけばいいんや!」

 片山議員が「個人攻撃ではない」と言った要諦がここにある。この発言が事実なら、こうした発想の蔓延こそがこの国の財政を底なしに蝕んでいくと、片山議員は指摘しているのだ。

 姉だけでなく、河本が所属する吉本興業の認識もきわめて甘く、こんなコメントを発表している。

〈河本の親族が生活保護費の受給を受けているという重大なプライバシー情報が報道されていること自体、重大な人権侵害であると考えており、河本の親族の生活状況や河本の収入の状況、親族への扶養の内容等の詳細な事情についての説明は、ご容赦いただきたい〉

 公人であるにもかかわらず、税金で母親を養ってもらったことに感謝の言葉一つなく、プライバシーを盾に情報開示を拒む。

 感謝より自己主張、義務より権利。河本のこうした振る舞いがさらに反感を呼んでいる。

(2)家賃も医療費も住民税もNHK受信料もみんなタダ 不正受給する輩も続出!
全国に209万人!生活レベルは「年収400万円」

生活保護目当てに偽装離婚

 生活保護の問題は不正受給だけではない。「そもそも支給額が高すぎる」という根強い批判がある。

「東京在住の65歳夫婦の支給月額は19万4102円。20歳から60歳まで保険料を払い続けた国民年金の支給額が6万6000円ですから、不公平感はかなり大きい。さらに、18歳の単身者の場合は約14万円ですが、東京都の最低賃金837円×1日8時間×22日、つまり最低賃金でフルに働いた1ヵ月の収入が14万7312円と、ほぼ同水準です。

 生活保護受給者には他にも特典がある一方、給与所得者は賃金から交通費などの必要経費が引かれるわけだから、実質は逆転していると言えるでしょう」(関西国際大学の道中隆教授)

 27歳と7歳の母子家庭になると、2万3260円の母子加算や児童養育加算などもつき、月額24万1950円になる。

 母子家庭にこれだけ手厚いと何が起きるか。都内のケースワーカーが語る。

「生活保護目当ての偽装離婚が急増しています。7人家族の夫婦が離婚して、5人の子供を引き取った妻が月30万円以上の生活保護費を受け取っていたケースもありました」

 道中教授の言った「他の特典」も気になる。一体、どんなものがあるのか。以下に列挙する。

・医療費がタダ
・介護費がタダ
・住民税がタダ
・出産費用がタダ
・葬祭費用がタダ
・NHK受信料がタダ
・JR定期が割引(自治体により割引率は異なる)

 先ほど挙げた支給額は家賃補助分が含まれたものだが(東京の単身者で5万3700円)、それより安い賃貸物件に住めば差額が懐に入る。こうして何もかもがタダになることで、全国209万人の生活保護受給者の可処分所得がどんどん膨れあがっていく。

 片山さつき議員の試算では、月額16万円の生活保護費を受け取る世帯は、年収400万円クラスのサラリーマンの生活レベルを謳歌できるという。年収400万円といえば、まさに日本のサラリーマンの平均年収に匹敵する。

 本来、生活保護はクルマや不動産などの資産があれば認められないし、贅沢などもってのほかだ。しかし実態は、「生活保護受給者なのに毎晩外食し、海外旅行にも行き、クルマも隠し持っている人がいる」(前出のケースワーカー)という、コツコツ働いている人から見ると許しがたい光景が繰り広げられている。

 社会保障審議会生活保護基準部会の臨時委員でもある、長崎大学経済学部の林徹教授が言う。

「生活保護には『自立を助長する』という趣旨もありますが、それならなぜ支出に関する資料を提出させないのか、という強い疑問があります。

 日々の消費生活の管理なしに自立はありえない。実態として、受給者がもらってすぐパチンコに使ってしまうなど、無計画な浪費を防ぐ手立てが講じられていない。少なくとも領収書や家計簿を提出させない限り、小遣いあげて『はい、サヨナラ』と同じです」

 受給者が生活保護費をパチンコに注ぎ込めるのも、それが可処分所得だからに他ならない。そして、そうした矛盾を抱える生活保護費に費やされる税金が、確実に日本の財政を圧迫しているのだ。

「私が大蔵省主計局の主査だった'90年代前半、生活保護に費やされる税金は1・3兆円で、大蔵省にも『日本で生活保護はそれほど増えない』という共通認識がありました。ところが社会情勢が悪化し、主計官になった'04年が2・5兆円で、現在は3・7兆円。'25年には5・2兆円に増大するという試算もあります。

 このままでは『生活保護のために消費税を上げる』という未来も現実味を帯びてくるのです」(片山議員)

病院もグルの「貧困ビジネス」

 そして手厚い上に、いや手厚いからこそ、不正受給を目論む不逞の輩が後を絶たない。厚労省の発表では'10年度の不正受給は2万5355件で、金額にして約129億円。もちろんすべての不正が摘発されているわけではなく、これは氷山の一角であることは言うまでもない。

 さらに、生活保護の周辺には、怪しげな勢力が手がける「貧困ビジネス」の問題がある。

「ホームレスの人たちに居住場所を与えて生活保護を受給させ、最低限の生活費だけ与えて残りは全部搾取する犯罪行為はいまも横行しています。

 最近は向精神薬の違法売買が増えてきました。医療費が無料になることを利用し、受給者に複数の精神科に通わせ向精神薬を処方してもらい、それをわずかな金額で買い取って転売するのです」(『日本の地下経済』著者の門倉貴史氏)

 生活保護費の国庫支出における、医療扶助費の割合は実に50%。明らかに「不正の温床」となっている。悪質なのは医療機関がグルのケースだ。

「いま話題になっているのが『初診渡り鳥』。生活保護受給者に初診でMRIなど保険点数の高い医療行為を受けさせ、通院せず、別の病院でも次々と同じ検査を繰り返す。そして、各医療機関から貧困ビジネス側に『キックバック』が行われるのです。そのなかから協力した受給者にも『報酬』が渡される。

 生活保護受給者の医療費は国と自治体が払うので取りっぱぐれがなく、医療機関から見ればこれほど『オイシイ客』はないし、受給者も貧困ビジネスに加担することで小遣い稼ぎができる。こうして生活保護行政が食い物にされているのです」(大阪市政の担当記者)

 生活保護受給者に与えられる特典が、社会にさまざまな歪みを生む。正直者がバカを見る世の中は、すでに現実のものとなっているのである。

(3)年間20兆円に!片山さつき議員は「これまでの分、河本にぜんぶ返してもらう!」と もらえるものはもらう!河本母子みたいなケースをどう考えますか

性善説では対処できない

 生活保護費が'25年に5・2兆円になるという試算より、もっと恐ろしい数字が、総合研究開発機構(NIRA)の「就職氷河期世代のきわどさ」というレポートの中に登場する。

〈仮に就職氷河期に増加した、非正規雇用者及び無業者が、高齢期に生活保護を受給すると、追加的に必要な費用は累計で20兆円程度必要となる〉

 これが大げさな懸念でないことは、ここまでの特集をお読みいただけば、もうおわかりだろう。

 事態は切迫しているからこそ、片山さつき議員は、

「厚労省の調査で不正が明らかになれば、河本さんには過去の受給分の全額返還を求める。それが果たされない場合、国会質問も考えなければならない」

 と宣言する。自民党の「生活保護に関するプロジェクトチーム」座長の世耕弘成参院議員は、自身のブログで「不正受給が刑事事件に発展する可能性」まで示唆。河本母子の「もらえるものはもらう」という発想は、生活保護行政を踏みにじるもの、というコンセンサスが自民党内にはある。

 では、自民党に一歩先を行かれた感のある民主党はどうか。党の厚生労働部門会議副座長を務める梅村聡参院議員が言う。

「河本さんのケースは単なる芸能スキャンダルではなく、この国に数十年間横たわってきた非常に重い問題だと認識しています。

 かつては生活保護を受けるのは『恥ずかしい』ことでした。でもいまは『もらわないと損』という意識に変わってきています。このように意識が変わってきた以上、運用のルールも変えなければならない。具体的に言うと、『恥ずかしい』時代は性善説でよかったんですが、『もらわな損』だと性悪説を前提に考えなければならなくなります。そのためには、資産、収入を調査する権限を、自治体に与えなければならない」

 さらに、扶養義務を負う親族が逃げた場合の対策も必要だと言う。

「『親子の縁を切れば扶養義務はない』という言い逃れは、性善説の世界では想定していませんでした。そんなことを言うと、昔は村八分だったわけで、社会的に許されなかった。それが許される時代になってしまったのは事実です。そうした頭の切り替えが厚労省はなかなかできていないんですよね」

 吉本興業は河本が母に生活保護を受けさせ続けた理由を、〈浮き沈みの激しい業界に身を置きつつ、親族全員に対して将来にわたっても安定的な援助を行えるかどうか、見通しが非常に難しかった〉と釈明する。

 これについての違和感を表明するのは、他ならぬ生活保護行政を司る、厚生労働省社会・援護局保護課の担当係長だ。

「(浮き沈みの激しい)芸能界だから何か特別扱いされる、ということはまったくございません。一般論として申し上げれば、世間から見て高額な収入を得られているのであれば、きちんと責任を果たしていただきたいと考えています。

 件数までは調べていませんが、『(河本は)どうなんだ、おかしいのではないか』という電話はいただいています。我々もネットや記事を見ますので、一般のご意見は認識しております」

 河本母子のケースは日本人から「美醜」の価値観が失われた象徴だと、数学者で『国家の品格』の著者、藤原正彦氏が言う。

「昔は『さもしい』という言葉がありました。法律的に権利があっても、やたら権利を主張するのは『さもしい』とされたのです。

 ところが、その『さもしい』という言葉が死語になってしまいました。人間というのは言葉で生きていますから、言葉が死語になるということは、その思想が死んでしまうのと同じことです。だから、まずは『さもしい』という言葉を復活するところから始めなくてはなりません。『権利を主張する』ことを欧米では当たり前のように言いますが、日本ではそういう行為のなかに『さもしさ』を見る感覚があった。

 法律によってしか人間の行動を規制できないのは恥ずべき国家です。高貴な国というのは、みずからの言動を『美醜』によって規制します。『汚いことはするな』『醜いことはするな』と。日本はかつて高貴な国でしたが、いまは普通の法治国家になってしまった」

 たしかに河本の姉も吉本興業も「違法性がない」としきりに主張する。彼らは、ことの本質が法律ではなくモラルにあることを理解していない。たとえば生活保護目当ての偽装離婚にも違法性はないが、それが「さもしい」行為であることに議論の余地はないだろう。

自分さえよければいい人たち

 教育問題に詳しい作家の石川結貴氏は、家庭教育の問題を挙げる。

「いま給食費の未払いが全国で20億円以上あるのですが、根っこは同じだと思います。払わないからといって給食を食べさせてもらえないわけじゃない。払わないまま卒業してそれっきり、という精神性と共通する部分がある。

 私が実際に取材したケースで、小学校の運動会である母親がラージピザの出前を10枚取って、『ピザ食べたい子はおいで!』って声をかけたんです。その時に『早くいかないとなくなっちゃうよ』と子供をけしかけた親と、『自分のお弁当を食べなさい』と制止した親がいる。『もらえるものをもらわない』という躾が必要なのだと思います」

 政治評論家の屋山太郎氏は、こんな時こそ「あの政治家」の出番だと言う。

「河本さんが『もらえるものはもらう』と周囲に公言していたのなら、彼のモラルは崩壊していると言わざるをえない。最近は『働くよりナマポ(生活保護を意味するネット用語)をもらったほうがラクでトク』なんて思っている若者も増えている。彼らは年金保険料も払わず、『年金がなくても生活保護をもらえばいい』と考えているのです。

 モラルの低下をどこかで食い止めないといけない。そのためには法改正より先に、まずは窓口となる自治体が適切な対応を取ることが必要です。大阪市の橋下市長は、府警OBも入れて不正受給を調査するGメンを結成した。他の自治体でも、首長が本気で『実態を調査するぞ』という気概を持ってあたるべきです。一部有権者から『鬼のような首長だ』と批判の声が上がってもやり通す。そういう強さが首長にはほしい」

 最後に、作家の佐藤愛子氏が締める。

「そうした母子には意見をする気も起きない。生活保護については、国はよくやってるな、と感心はしますけれど。自分の人生はたとえ野垂れ死にしようが自分で背負う。私はそういう覚悟で生きてきました」

 なくても生きていける自分たちが生活保護費を受給することで、本来受け取るべき、本当に困っている人に届かないのではないか。そんな想像力を持てなかったのは、「自分さえよければいい」と彼らが思っていたからだろう。

「週刊現代」2012年6月2日号より